悪役令嬢ポジションが俺で、回復魔法がキスな件!?

ろいず

文字の大きさ
16 / 73
一章 悪役令嬢フェルミナ・ドロッセル

ベンガル・ロッシュとセイン・バード

しおりを挟む
 『野ギス』の攻略対象は、戦闘スキルというものがあり、それぞれ特徴がある。
 騎士団長になる予定のヒルクスは、両手剣のパワー型。
 天才魔術師予定のセインは、魔法攻撃のマジック型。
 第二王子ディオンは、盾と剣のバランス型。
 歩く王立図書館の蔵書と言われているベンガルは、魔道具使いという戦闘スタイルが一人異なるのだ。
 しかもどのランクのカードもレベルを上げるごとに多彩な魔道具を使うため、ベンガルのカードに外れなし! と、言われているのである。
 
『ベンガルのエピソードは、子供の頃に資金繰りさえ良ければ、もっと魔道具を色々作れたのにっていうところね! 魔道具研究に夢中な父親に母親が愛想を尽かして、財産を持ち逃げしているからベンガルは、人を信じてないの。好感度は上がりにくいのを落とすのが、萌えポイントじゃない?』

 姉がルカリオンの次に推していたのが、ベンガル・ロッシュだったのと、ベンガルの便利さに俺もデッキによく入れていたキャラクターだ。
 つまり、子供の頃から魔道具作りをさせて、資金繰りを確保させておけば使えるキャラになる。
 何より、ベンガルは好感度が上がりにくいから、二回会っただけで爆上がりする王族や他のキャラより安全性が高い。
 
「坊ちゃん、楽しそうですね」

 一人含み笑いをしていたところをルカリオンに指摘され、咳払いをしてから図書館へと入った。
 王都の図書館は、王立図書館の利用は十五歳以上からなので、この時点では図書館がベンガルの居る率が一番高い場所である。
 図書館はゲームの中でも何回か使ったから、どこにベンガルが居るかも、お見通しだ。
 
「坊ちゃん、児童図書は一階ですよ?」
「俺の目的は、それじゃないから」

 首を傾げるルカリオンの首元からチャリッと音がして、俺があげた回復魔石の首飾りが見える。
 魔石の白色は回復魔術だと直ぐに分かるから、喉から手が出るほど欲しがる人間が多い。
 本当ならば、隠しておいた方が良いのだろうけど、ドロッセル公爵家という後ろ盾がある為に襲われたり、奪われる事も無い。
 公爵の貴族位を持っているのは、この国では王弟とバード家の三貴族だけ。

 バード家は魔術師を多く輩出しているセインの家である。バード家はセインの両親が馬車の事故で亡くなってしまうから、幼いセインでは維持出来ず、親戚の手に渡ってしまい乗っ取られる。
 フェルミナのバッドエンドと同じだ。
 違うのは、セインはヒロインの協力の元、親戚の不正を暴く事で公爵の座に返り咲く事が出来る。
 元々、セインが二十歳になれば公爵の座はセインの物なのだが、不正案件もそのまま引き継がれるため、ヒロインがセインに関わらずにいると、フェルミナが関わった不正も暴露されて仲良く投獄エンド。
 冗談ではない! それだけは阻止したい! 不正にかかわる予定は無いつもりだけど、危険な芽は摘んでおきたい。だからこその、ベンガルが必要なのである!

「利用客が居ませんね」
「それはそうだろ。ここは主に空論の書物が多い場所だからな」
「空論、ですか?」
「まぁ……半分は、ってとこだな。人に想像できるものは、大抵いつかは完成させることが出来ると、どこかの偉い人が言ってた」

 この世界には、ドワーフという機械作りに特化した種族に魔法があるから、合わせ技の物を『魔道具』と呼ぶ。でも、スマートフォンのような便利な道具はまだ無いし、中世ヨーロッパに童話のようなものが混在した感じだ。
 むしろ簡単な物ほど後回しで、武器のような危ない物ほど出回りやすい。
 ベンガルは後者にあたるわけだけど、ベンガルとの好感度を上げて行けば、彼は本当は人の役に立つ道具を作りたかったという話が聞ける。
 武器を作った経緯としては、利益が一番よく出るのが武器だったから……というものだ。
 そして、そんな夢を見ている少年時代が、目の前に居る。
 
「ベンガル・ロッシュだよね? こんにちは」

 分厚い本から少しだけ顔を上げ、メガネを指で上げて再び視線は本へ移る。
 日記での好感度も五パーセントと、誰よりも低い。やはり安心安全のベンガルだ。

「君に作って欲しい物があって声を掛けたのだけど、聞いてもらえる?」
「玩具なら、金で買いなよ」
 
 子供なのにドスの利いた低い声、これは手強そうだ。
 ついでに言えば、後ろの従者ルカリオンが殺気立っているので、前後共に気を抜いたらゲームオーバーしそう。
 
「玩具ではなく、馬車が事故に遭った時に周りが森や平地だとして、緊急連絡を空に打ち上げる魔道具……そういう物を作りたいんだよね」
「それは……無理。打ち上げたところで、見ている人が居なきゃ一瞬で終わる」

 少しだけ興味を持ってくれたかな?
 俺としては、バード家を救うために発煙筒が欲しいだけなのだが、この世界に発煙筒はまだ無いし、作る必要性が無い世界でもあるんだよな。

「一瞬で終わらない物で、煙が色を持っていて、一時間ぐらい空にあがるような物が良いんだよね」
「……煙、色付き……でも、それだと魔物が寄ってくる危険性もある」
「そうだね。だから、魔物除けの出来る臭い煙とかが良いかなーって」

 本から顔を出して、ベンガルがメガネに指を掛けたまま小さく唸る。
 ボロボロのメモ用紙の束をベンガルが出し、パラパラとめくると探していたものがあったのか、静かに歩き出した。俺とルカリオンもその後に続き歩き出す。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...