悪役令嬢ポジションが俺で、回復魔法がキスな件!?

ろいず

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二章 学園生活

竜人 クローム・ハドスン

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 知らない間に、出会いイベントの場所に入り込んでしまったのだろう。
 手に持ってしまったのは、手の平サイズの小さな黒いタマゴ。
 やばいやばいやばい!! 手の中でピシピシと亀裂の入る音がしている。
 卵が割れたら、クローム・ハドスンとの出会いと付きまとわれる未来が確定する。そうなったら、うちの従者が般若のような顔になるからぁぁぁ!
 ぶん投げる……いや、ココはその場に戻して、ダッシュで逃げる!……が、正しいか。
 そっと床に置こうとして、思い出す。
 クローム・ハドスンの落とした卵は未成熟で、回復魔法の手助けがなければ、死んでしまう……なんで思い出したかなぁ!
 しかも、こいつが生きていなければ、クロームは王座に就けなくなる。

「っ、ああ、もうっ。仕方がない!」

 俺の回復魔術は、安く無いんだからな。
 卵に唇をチュッと音を立てて回復魔法を吹き込む。
 そういえば、ヒロインはチュートリアルだと、学園内を歩き回ってレベルは三ぐらいだったはず。
 俺はレベル上げのおかげで、今現在レベル五十二。
 回復魔術は、回復大で全体が中だから、投げキッスでも良かったような……と、思い出しているうちに卵は割れてしまった。

『ぴぃぃ』
「しまった……」

 卵の中身と目があったら、お終いだ。
 ハンカチで卵の中身を包み、絶対に目は合わせないでいようと決意して、ハンカチごと床に置く。
 これでクロームが見付けて拾ってくれるだろう。
 さて、何も見なかったことにして帰ろう! クロームに見付かる前にダッシュで廊下を走り、ちゃんと拾うかを廊下の端から顔を覗かせる。
 そこに褐色の肌に、黒髪で赤い目、そして赤黒い角を頭の両側から覗かせている公式で見たままのクロームが、ハンカチを拾い上げた。
 よし、ここからは全力で逃げよう。
 走り回って、汗が額に滲みハンカチで拭おうとして、さっき置いてきた事に溜め息を吐く。
 シャツの袖で額をふいて、歩きつつ息を整える。

「はぁー……やらかすところだった」

 他にも危険な出会いはないよな? 記憶を遡ってゲームを思い出す。
 クロームは、チュートリアル用に用意されたような攻略対象なので、これから気をつければいい訳だが、チュートリアルのキャラは何かと好感度が上がりやすい為に、こちらが頑張って無視をしなくてはいけない。
 なんせ、誰も最後まで選ばなかった場合は、王になれたのはヒロインのおかげだと、王様になってから迎えに来る救済措置のような攻略対象なのだ。

「みーつけた!」
「ひゃっ!」

 後ろからいきなり腰を持たれて足が宙に浮くと、そのまま半回転して後ろを向かされた。
 クロームに捕まった……そう思ったが、目の前に居たのは、見知った顔。
 黒髪に青い目をした、自国の第一王子ラローシュ。
 そして、自分を後ろから持ち上げてラローシュの方へ向けたのは、弟のディオンだった。
 ラローシュと違い、ディオンは金髪で、でも顔と目の色はそっくりそのまま、双子のようでもある。

「フェル。久しぶりだね。元気にしているみたいで、安心した」
「ラロ……二週間前にあった気がするんだけど?」
「兄様は、常に時間で動いているから、君と合ったことは遠い昔ぐらいの記憶なの。分かった?」
「ディオン……それは、分かったから、下ろしてくれ」

 ディオンに手を放してもらって、少しだけホッとしたような、ムッとしたような複雑な感じだ。
 クロームには関わりたくはなかったが、ディオンに持ち上げられた事で自分の身長差をここでも思い知らされた。
 攻略者たちが背が高すぎて、俺が小さく見えるのは気のせいなどではない。

「フェルは急ぎの用事でもあったの? 廊下を駆けまわっていたようだけど」
「見てたのか。別に用事は無いけど……」
「ほら、兄様。フェルは放っておいて大丈夫だって、言ったでしょ」
「ディオン。別に私がフェルにただ会いたかっただけだから、良いのですよ」

 ふわりと笑う王子様スマイルで、俺としては「ヒィッ! 勘弁してください!」状態なのだが、ディオンからはペシペシと頭を上から叩かれて、このブラザーコンプレックスめ! と、心の中で悪態をつくしかない。
 一応、まだ公爵家の人間ではあるけれど、平民確定の俺が気安く関わっていいとは思えない。でも、そこは幼馴染特権と、回復術師特権とだけ、思っておこう。
 
「ああ、そうだ。後でフェルの部屋に飾り紐を贈っておくね」
「に、兄様が贈るなら、誤解されるといけないから、ボクのも贈っておいてあげる!」
「はあ……、飾り紐、ですか?」

 なんだか、聞き覚えがあるような気がするんだけど、なんだっただろう? 
 ラローシュが口元に指をあてて、フフッと笑いディオンの頭を撫でてじゃれ合っていて、俺は首を傾げるばかりだった。
 飾り紐を思い出したのは、部屋についてからで……机の上には、ラローシュから贈られた箱を筆頭に攻略者たちから、自分の髪の色をした紐に目の色をした宝石細工の飾り玉が通してある物が贈り届けられていた。

「これ……最終ルートを決める時のヤツじゃん……」

 この学園では制服の上にハーフケープを羽織るようになっていて、肩に飾り紐を付けるのだけど……恋人とか仲の良い信頼のおける人物同士で交換して、お互いにお揃いの物を付ける事がある。
 好きな人に告白するのに『これを良かったら付けて下さい!』と渡し、付けられなかったら玉砕。付けてくれたらカップル成立という、生徒内での新種のラブレターのようなものだ。
 ゲーム内では、最終ルートの相手を選ぶときに使い、自分の飾り紐を相手に渡すことでエンディング……なのだが、入学式がまだ始まっていない時点でエンディングだよ!
 むしろバッドエンディング後なんだけど、俺!?

「坊ちゃんのハーフケープには、わたしの飾り紐をもう付けておきましたから」

 俺の従者は、どの攻略対象より行動的でいらっしゃる。
 ルカリオンの飾り紐は黒。そして金の牙に白いバラが描かれた飾り玉がしてあった。
 これは、俺も渡さないといけないやつだろうか……ちなみに、俺の飾り紐はハーフコートに元々付いていたから、気付くのが遅れた。
 薄いラベンダー色の飾り紐に雫の形をしたエメラルドが使われている。腐っても公爵家、意外とお金をかけていたようだ……
 仕方なく、全員に自分の飾り紐を送った。うん、友情は大切にしないと、ね……他意はない。とだけ、全員に言っておいた。
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