悪役令嬢ポジションが俺で、回復魔法がキスな件!?

ろいず

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二章 学園生活

入学式

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 大庭園と呼ばれている中央広場で中等部から大学までの合同式典が催された。
 入学の祝辞を第一王子であるラローシュが行い、入学生代表の挨拶を第二王子のディオンがしている間、周りはソワソワとした雰囲気で浮足立っている感じだ。
 原因は……俺の飾り紐―ッ!! 
 ラローシュの飾り紐は黒に青いサファイアの飾り玉。その飾り紐に異色の薄いラベンダー色が混じれば目立つよね! ああ、もう。これは、絶対わざとだ。
 ディオンも金色の飾り紐にサファイアの飾り玉。そこでも、俺の飾り紐がある物だから、二人が同じものを? と、周りは『どなたの飾り紐かしら?』という声がささやかれるたびに、ぎこちなく体が強張こわばる。
 そしてトドメは、うちの従者ルカリオンが、生徒会としての注意事項で壇上に立つと、よりいっそう女生徒を中心に黄色い声の囁きがあがる。

「ううっ、俺、帰りたい……」

 帰る場所は無いけど。両隣に並んでいる悪友たちの肩にも俺の飾り紐が付けられているし、他の人間に気付かれる前に逃げたい。
 ただ、ヒルクスとセインはお互いに飾り紐を交換しているので、少しはマシだろうか? 仲の良い証拠で何よりだよ。

『ー……以上。生徒会実行委員会からは、これだけです』

 ルカリオンの声が締めくくりを告げ、俺が顔を上げると俺の飾り紐のエメラルドに、指を唇で触った後、エメラルドを触り、目を細めてこちらを見た。
 前に俺がした間接キスの指バージョンをそのまま真似している……
 キャーッと、女生徒の声に俺も混じって、ギャァァァ! と、声をあげたい。
 あとで部屋に帰ったら説教してやる! 覚えてろー!
 
「フェル。お前の従者は、独占欲が強いよねぇ」
「フェル。真っ赤になりすぎ。耳まで赤いよ」
「うるさいっ! 皆して俺を揶揄からかうんだから、酷すぎる!」
「フェル。僕は揶揄ってないし、こうしてお揃いの飾り紐が嬉しいよ」
「ベンガル~っ。お前だけだよ、俺を揶揄わないのは~」

 左に居たベンガルに抱き着く。友達は大事、本当に。
 
「それで、フェル。お願いがあるんだけど、魔石また作って」
「この間、大量に渡したよね?」
「実験をしていたら、爆発しちゃって、連鎖反応で魔石も吹き出ちゃった」
「ベンガル~っ!! だから、あれほど、魔石の保管場所はしっかりしろって言ったのにぃー!」

 前言撤回である。ベンガルの両腕を持ってガクガク揺さぶり、説教をしていると白い物が顔に飛び掛かってきた。

「うわぁっ! 何!?」

 顔から引きはがそうとすると、柔らかいような、ザラつくような妙な感触がした。
 なんか生暖かいし、ブニブニしている。

『ぴぃぴぃ』
「げっ、まさか……この声……」

 ゲーム内で聞いたことがとてもある声……ガチャを回す時に出ると、レア確定だが……こいつは、クロームのキーアイテム。

「やっぱり、チビドラゴン……」

 顔から引きはがして、そいつを見ると体の色は白く光沢のある鱗と、虹色の目をしている。
 このチビドラゴンの鱗の色でガチャでは、攻略対象のカードが分かるのだ。
 金ならディオン。
 赤ならヒルクス。
 青ならセイン。
 銀ならベンガル。
 白ならルカリオン。
 黒ならクローム。
 チビドラゴンが居るという事は……

「ファム・ファタール!」

 やっぱりかー!! 褐色の肌の竜人クロームが両手を広げて俺に抱き着いてきた。
 誰が運命の女ファム・ファタールだ! と、言いたいところだが……本来は、ヒロインに言うセリフなので、間違いでは無いのだろう。

「は、離せ! やめっ、んっ!!」

 引きはがそうと暴れたら、お尻の下から腕で抱きかかえられて、持ち上げられたと思ったらそのまま、クロームに唇を奪われていた。
 はい? これ、クロームと結ばれた時のエンディングシーンだよな? はっ? なんなんだこの状況は。
 ぬるりとした冷たい舌が口の中に入ってきた事で、俺の固まった思考回路は、羞恥と怒りで動き出す。
 
「ッ!」

 舌に噛み付き、クロームが唇を放した瞬間、頬を思いっきり平手打ちする。
 指先までジンジンと痺れるが、こいつには一言いわなければと口を開こうとして、声が出なくて閉じた。
 悔しさなのか嫌だったのか、自分の気持ちも整頓出来ないまま、涙が溢れる。
 奪うようにベンガルが俺をクロームの腕から引き離し、ヒルクスとセインが庇うように前に出てくれた。

「貴様! オレたちの友人に!」
「いきなりこんな事するなんて、最低だね!」
「フェル、もう大丈夫だ」
「っ、ふ……っ、うぅ、っ」

 大勢の前で泣きたくはないし、キスで回復魔術を使っている癖にこんな事で泣くなと、自分に言い聞かせても嗚咽が出てしまう。
 ザワッと背筋が凍るような殺気に、反射的に顔を上げる。
 壇上から距離があったはずなのに、ルカリオンが跳躍してそのままクロームに飛び掛かり、オオカミの姿に変わるとクロームの喉元に噛み付いていた。
 ざわつく大庭園に、小さな『ぴぃー』という声が耳に入り、俺は泣いている場合では無いとルカリオンに駆け寄る。

「ルカ、リオンッ! もう、いいから!」

 まだ興奮中なのか唸り声をあげて、口からクロームを放さないルカリオンに、「俺に、そいつを治療させる気なのか?」と言うと、ようやく口を放した。

「……坊ちゃん、すみません」

 首を振って、教師陣と警護の人間が動き出し、ルカリオンはその場に残り、ベンガルたちに俺を部屋に帰らせるように言うと、蜘蛛の子を散らすように、三人はバラバラに駆け出し、俺はセインの魔術師科の長いローブに隠してもらいながら一緒に逃げた。
 流石に、貴族なので入学初日に教師から文句を言われるのは、自分たちの家に迷惑が掛かるからだ。
 ルカリオンは、生徒会で顔も知られているため、逃げても無駄な足掻きになると解っていて残ったのだろう。  
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