悪役令嬢ポジションが俺で、回復魔法がキスな件!?

ろいず

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二章 学園生活

停学

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 セインに連れられて自分の部屋に着いて、しばらくしたらヒルクスとベンガルも部屋に来た。
 二時間ぐらい三人が気を紛らわすように取り留めのない話をして、ルカリオンが部屋に帰ってくると四人で「どうなった!?」と詰め寄った。

「相手が留学生で王族だったのが、少し不味かったようで……他国に反省の意味で、『停学』を一ヵ月に宿題の山を頂きました」

 眉を下げて笑って、なんという事は無いというように、俺の頭を撫でる。

「相手が悪いのにか!?」
「ヒルクス、どうせルカリオンの事だから、フェルの名前を出さなかったんだよ。それで被害者不明のまま加害者が被害者にすり替わっちゃったんでしょ? って、痛いよ。ベンガル」

 ヒルクスをセインがいさめて、ベンガルに横腹を無言で肘鉄を入れていた。俺をセインが見て、気まずそうに謝る。
 ルカリオンの事だから、俺の名前は出さなかっただろうし、教師陣も気付いても、公爵家の人間を巻き込むと面倒くさそうだと、公爵家の客人ではあっても留学生という立場のルカリオンに罰を与えることで丸く収めたのだろう。
 三人は「僕たちは一旦、部屋に戻るよ」と、俺をルカリオンに任せると言って出ていった。

「ごめん……ルカリオン」
「いえ。坊ちゃんの方こそ、野蛮なトカゲに酷い目に遭いましたね」

 抱きついて頭を振る。
 髪を手でかれ、「ハーブティーでも淹れましょうか」と自分の部屋に戻るとお湯を沸かし始める。
 小さなキッチンは、貴族の多い一等級室ではメイドや執事を連れてくるために重宝されている。
 ルカリオンもお茶を淹れる事でよく使用していて、俺としてはそのうち小さなフライパンでも買って、何か作ってみようかとも思っている。
 今のところ、転生してからは数回お菓子を作った……と、言えるか怪しい子供のお手伝い程度の事をしたぐらいだ。

「お風呂も入れましょうか?」
「そこまでは……」
「リラックス効果のあるハーブをお湯に浮かべても良いと、わたしは推奨します」
「……わかった」

 あー、笑顔で言ってるけど、入れって事ね。
 まだ昼前なのに、こんな時間に入るとかどこのお貴族様だ……って、俺、まだ公爵家の人間だったよ。
 学校が休みの時も帰ってくるなとか父親に言われているから、実質、もう平民のような気がするんだよね。
 両親の態度の変わりよう……俺は、いや、フェルミナは、生まれてから『公爵家の淑女』という立場で厳しく育てられていたのに、生まれた弟のシグマには、中の人間が変わった? というぐらい甘い。
 まぁ、シグマは可愛かったけどね。ただ、ルカリオンは近寄りたくないようで距離を取っていた。首の後ろがざわつくような変な感じがするのだとか。

「お茶が用意出来ましたよ」
「ありがとう」

 ティーカップの中には薄い黄色がかったハーブティー。
 口の中に広がるのは程よい甘さのカモミールと、クロモジのスーッとする清涼感がある。
 
「大分落ち着いていますね」
「ヒルクスたちが居てくれたからね。一人だったら、布団に丸まって泣き喚いてたよ」
「手は、大丈夫ですか?」
「手……ああ、叩かれるより叩いた方が痛いって、耳にしたことはあるけど、まだ痺れてるし痛いから、次に叩く時は拳にしとく」

 前世を合わせても、人の頬を叩く事が無かったために、加減もよく分からなかったが、渾身こんしんの平手打ちだったと思う。
 俺の手を取って、ルカリオンは手の平を指で撫でる。

「わたしに、回復魔術が使えたら、良かったのですけど……」
「俺の役割がなくなるって」

 辛そうな顔をされるのが嫌で口元に笑みを浮かべようとして、自分でもぎこちない笑顔になってしまったと気持ちが沈み込んでしまう。
 お互いに言葉を探して静寂の中で、バスタブにお湯が入る音だけがしていた。

「お風呂に浮かべるハーブを用意しますね」
「ん……」

 女のフェルミナでは無いのだから、キスの一つや二つでガタガタ言うなんて……とは思う。
 それでも、悔しくて恥ずかしいのは、ルカリオンや皆の前でいきなりキスされた事。
 ゲーム内でいきなりキスされたりして、ヒロインが頬を赤くするシーン……現実でやられたら、頬を染めるどころか、知らない奴にいきなりキスされるとか、鳥肌しか立たない案件だった。
 これで惚れるとか、ヒロインはどれだけ頭の中がハッピーなのか……

「あいつ、絶対に……許さない」

 卵を回復魔術で助けてやったのに、恩を仇で返すとか、信じられない。
 服を脱いで浴槽に浸かって、そのままバスタブの中に頭まで潜り込む。
 水面にルカリオンの影が見える。
 顔を出すと、乾燥したハーブの束が湯船に浮かぶ。

「大丈夫ですか」
「ん。大丈夫……なんかムカついてきたけど」
「わたしも、あのトカゲには業腹ですよ」

 笑顔で怒りを口にするルカリオンの首からぶら下がっている魔石に、色が無い事に気付く。
 俺が回復魔術を入れ込んだ物で、白い色だったはずなのに、透明だ。

「それ、使ったの?」
「あ、ええ。坊ちゃんの情報を寄越さないとケガで訴えて、国際問題にすると言われたので、勿体なかったですが……使いました」
「いやいや、俺が訴えて、勝つよ?」
「そう言うと思いました。でも、あのトカゲにこれ以上、坊ちゃんの姿を見せる事も、近寄らせる事も我慢ならなかったので」
「相変わらず、お前は独占欲が強いんだから」

 そういうところが好きな俺も、どうかとは思うけどね。
 魔石を指で触って、顔を近付けて魔石に唇を這わせて回復魔術を吹き込む。
 白い色を取り戻した魔石から指を放し、ルカリオンに笑顔を向ける。
 
「わたしは昔から、あなた一筋ですから」

 ルカリオンの顔が近付いて、指が唇の上をなぞる。
 
「あなたの唇に、他の誰かが触れた事が許せない。わたしだけのものにしたいぐらい、独占欲まみれです」

 苦笑して、ルカリオンが唇から指を放す。
 顔も遠ざかりそうになって、思うより先に手が伸びて首に腕を回し、ルカリオンにキスをしていた。
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