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二章 学園生活
魔眼
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目を覚ますと甘くていい香りがして、でも頭はぼぅとしている。
かすかに聞こえる声は、メイドのポーチェとルカリオンのものだった。
「作り方を覚えておけば、いつでも坊ちゃんに作って差し上げられるでしょう?」
「ポーチェ、簡単に言いますが、これはポーチェだから作れる味なのだと、わたしは思うのです」
「なら、坊ちゃんもあなたも、私のパイを食べに来るしか無いわねぇ。うふふふ」
楽し気な二人の声になんとか起き上がると、何もない部屋にベッドと机、そして本の入っていない本棚がある、学園に行く前の自分の部屋だった。
ベッドから降りると、頭はまだぼんやりするものの、話声のする方へ向かう。
廊下では忙しなくメイド達が掃除をしていて、俺に気付くと「坊ちゃんお目覚めになられましたか」と声を掛けてくる。
久しぶりに公爵家の使用人が元気な声をあげている気がする。
使用人がこんな風に明るい声を出す時は、両親が夜会や視察で留守にしている時ぐらいだ。
「うちの両親は?」
欠伸をしながら使用人に聞くと、使用人たちは顔を見合わせて眉を下げる。
なんだか、忘れてはいけない事を……と、はたと気付き、弟のシグマを思い出した。
「シグマ、シグマはどうなったの!?」
「坊ちゃん、とりあえずは、服を着替えましょうか」
「うわっ」
後ろからヒョイと抱き上げられて声をあげると、ルカリオンがいつの間にポーチェの所から廊下に出たのか、俺の背後に居たようだ。
ルカリオンに連れられて再び自分の部屋に戻ると、昔のように服をルカリオンが着せてくれる。
服を着替えさせ終われば、ご褒美と言わんばかりに頬や首筋、唇にまでキスをして、ルカリオンの機嫌が良さそうだ。
「ルカリオン。あれからどうなったんだ?」
「簡単に説明しますと、シグマ様は魔封じの装具をされ、ラローシュ殿下に連れて行かれました。悪いようにはしないとの事です。旦那様と奥様は事情聴取のために、やはりラローシュ殿下に連れて行かれました」
「シグマ、大丈夫かな……」
両親はともかく、一歳にもならない乳飲み子のシグマは環境が変わってしまった事に泣いているかもしれない。
あとでラローシュの所に顔を出した方がいいだろう。
「あと、俺はどのくらい寝ていた?」
「三日ですね。ミナさんがこちらにいらっしゃいまして、使用人たちの回復をして元気に去っていきましたよ」
「二葉ちゃん来てくれたんだ」
「ええ、セインを懐柔して、移動魔法で来て帰りましたよ」
これは二葉ちゃんに貸しになってしまっただろうから、少し覚悟しておくべきだろう。
おでこにコツンとおでこを当てられ、ルカリオンが目を細める。
「それと、しばらくは学園には戻れないようです」
「え? なんで?」
「旦那様たちは当分の間は戻れませんし、公爵としての仕事が溜まっていますから、居ない間は当主代理で坊ちゃんの仕事になります」
「俺、廃嫡の決まった嫡男なんですけどー……」
「ふふっ、久々に坊ちゃんの手腕の見せどころですよ」
嬉しそうな顔をしているけど、俺は全然、嬉しくないのだが?
食堂室に行けば、他の使用人たちもソワソワしているし、皆なんで俺が公爵家に居ると嬉しいのかが分からない。
ポーチェの作るカスタードとチェリーのパイを昼食代わりに食べて、あとはひたすら父の仕事を俺がやっつける感じだった。
その間、使用人たちは引きり無しに謝罪とお礼を言いに来て、「気にしなくてもいいよ」と書類の山に囲まれて言うだけだ。
「皆さん、シグマ様の『魔眼』で魅了状態でしたから、廃嫡や坊ちゃんをおざなりにしてしまった事に、心を痛めているようなのですよ」
「別に、本当に気にしなくても良いんだけどね」
それにしても、驚いたのはシグマの能力が『魔眼』だったという事だ。
魅了の魔法とも言われているもので、ほぼ禁忌に近い。
幼いシグマだから、今までは自分の周りに人を置いたり、世話をしてくれるように無意識に操っていただけだけど、これが大人になってからの発現だったら、公爵家の取り潰しにまで発展するヤバい案件になっただろう。
それぐらい、人を意のままに操ってしまうという能力は危険視されているのだ。
「ハァー……ちゃんと両親は戻ってこれるのかな?」
「なんとも言えませんね。このまま坊ちゃんが、公爵代理で継いでしまうかもしれません」
「それは勘弁して欲しい」
「何故です? 幼い時から跡取りとして育ってきたというのに」
「うーん。俺はさ、自由に生きていきたいし、公爵になったら、ルカリオンの故郷に遊びに行くことも出来なくなるじゃん」
そう俺が言うと、ルカリオンは目を細めて微笑んで、俺を故郷へ連れて行くと約束した。
ルカリオンだってずっと故郷に帰っていないのだから、いい加減帰らなければ、あの綺麗なお母さんに怒られそうな気がするんだよね。
かすかに聞こえる声は、メイドのポーチェとルカリオンのものだった。
「作り方を覚えておけば、いつでも坊ちゃんに作って差し上げられるでしょう?」
「ポーチェ、簡単に言いますが、これはポーチェだから作れる味なのだと、わたしは思うのです」
「なら、坊ちゃんもあなたも、私のパイを食べに来るしか無いわねぇ。うふふふ」
楽し気な二人の声になんとか起き上がると、何もない部屋にベッドと机、そして本の入っていない本棚がある、学園に行く前の自分の部屋だった。
ベッドから降りると、頭はまだぼんやりするものの、話声のする方へ向かう。
廊下では忙しなくメイド達が掃除をしていて、俺に気付くと「坊ちゃんお目覚めになられましたか」と声を掛けてくる。
久しぶりに公爵家の使用人が元気な声をあげている気がする。
使用人がこんな風に明るい声を出す時は、両親が夜会や視察で留守にしている時ぐらいだ。
「うちの両親は?」
欠伸をしながら使用人に聞くと、使用人たちは顔を見合わせて眉を下げる。
なんだか、忘れてはいけない事を……と、はたと気付き、弟のシグマを思い出した。
「シグマ、シグマはどうなったの!?」
「坊ちゃん、とりあえずは、服を着替えましょうか」
「うわっ」
後ろからヒョイと抱き上げられて声をあげると、ルカリオンがいつの間にポーチェの所から廊下に出たのか、俺の背後に居たようだ。
ルカリオンに連れられて再び自分の部屋に戻ると、昔のように服をルカリオンが着せてくれる。
服を着替えさせ終われば、ご褒美と言わんばかりに頬や首筋、唇にまでキスをして、ルカリオンの機嫌が良さそうだ。
「ルカリオン。あれからどうなったんだ?」
「簡単に説明しますと、シグマ様は魔封じの装具をされ、ラローシュ殿下に連れて行かれました。悪いようにはしないとの事です。旦那様と奥様は事情聴取のために、やはりラローシュ殿下に連れて行かれました」
「シグマ、大丈夫かな……」
両親はともかく、一歳にもならない乳飲み子のシグマは環境が変わってしまった事に泣いているかもしれない。
あとでラローシュの所に顔を出した方がいいだろう。
「あと、俺はどのくらい寝ていた?」
「三日ですね。ミナさんがこちらにいらっしゃいまして、使用人たちの回復をして元気に去っていきましたよ」
「二葉ちゃん来てくれたんだ」
「ええ、セインを懐柔して、移動魔法で来て帰りましたよ」
これは二葉ちゃんに貸しになってしまっただろうから、少し覚悟しておくべきだろう。
おでこにコツンとおでこを当てられ、ルカリオンが目を細める。
「それと、しばらくは学園には戻れないようです」
「え? なんで?」
「旦那様たちは当分の間は戻れませんし、公爵としての仕事が溜まっていますから、居ない間は当主代理で坊ちゃんの仕事になります」
「俺、廃嫡の決まった嫡男なんですけどー……」
「ふふっ、久々に坊ちゃんの手腕の見せどころですよ」
嬉しそうな顔をしているけど、俺は全然、嬉しくないのだが?
食堂室に行けば、他の使用人たちもソワソワしているし、皆なんで俺が公爵家に居ると嬉しいのかが分からない。
ポーチェの作るカスタードとチェリーのパイを昼食代わりに食べて、あとはひたすら父の仕事を俺がやっつける感じだった。
その間、使用人たちは引きり無しに謝罪とお礼を言いに来て、「気にしなくてもいいよ」と書類の山に囲まれて言うだけだ。
「皆さん、シグマ様の『魔眼』で魅了状態でしたから、廃嫡や坊ちゃんをおざなりにしてしまった事に、心を痛めているようなのですよ」
「別に、本当に気にしなくても良いんだけどね」
それにしても、驚いたのはシグマの能力が『魔眼』だったという事だ。
魅了の魔法とも言われているもので、ほぼ禁忌に近い。
幼いシグマだから、今までは自分の周りに人を置いたり、世話をしてくれるように無意識に操っていただけだけど、これが大人になってからの発現だったら、公爵家の取り潰しにまで発展するヤバい案件になっただろう。
それぐらい、人を意のままに操ってしまうという能力は危険視されているのだ。
「ハァー……ちゃんと両親は戻ってこれるのかな?」
「なんとも言えませんね。このまま坊ちゃんが、公爵代理で継いでしまうかもしれません」
「それは勘弁して欲しい」
「何故です? 幼い時から跡取りとして育ってきたというのに」
「うーん。俺はさ、自由に生きていきたいし、公爵になったら、ルカリオンの故郷に遊びに行くことも出来なくなるじゃん」
そう俺が言うと、ルカリオンは目を細めて微笑んで、俺を故郷へ連れて行くと約束した。
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