悪役令嬢ポジションが俺で、回復魔法がキスな件!?

ろいず

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三章 悪の華

夜会

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 広いダンスフロアに生演奏、綺麗に着飾った人々……そして、俺はそんな煌びやかな場所から離れた人気のない王宮の石橋を走っている。
 俺とルカリオンが走る後ろでは、ヒルクスが剣撃で王宮騎士と戦っていた。
 どうしてこんな事になったのか……それは、時を少しさかのぼる。


 夜会の準備が終わり、ルカリオンと一緒に馬車に乗り当主代理としての初社交界だったのだが、馬車が王宮に着くなり、待ち構えていたのは王宮の主催者側だった。
 ラローシュに笑顔で肘に捕まるように差し出され、手を伸ばさないわけにもいかなかった。
 会場へ入ると、ラローシュに注目は集まり、挨拶に来る人々が多く、俺はすぐにルカリオンに連れ出されたけれど、薄いラベンダー色の髪は目立ち、すぐにドロッセル家の者だと囁かれる。
 その度に、ルカリオンが目で射貫かんばかりの視線をぶつけて歩くの繰り返しで、俺としては壁の花になりたいと、心の底から思った。

「フェル~」
「あっ、セインに二葉ちゃん」

 二葉ちゃんは義兄となったセインにエスコートをされ、オレンジ色のドレスに身を包んでこちらに飛び込んでくる。
 淑女には程遠い二葉ちゃんの行動に、セインも苦笑いでルカリオンは半目で引き剥がす。

「マナーを少しは覚えさせて連れてくるべきです」
「酷い! ルカリオン様、私を犬や猫扱いしていませんか!?」
「犬や猫の方がまだお利口ですよ」
「酷いですよぅ! ミカぁ~ルカリオン様がお姉ちゃんを苛めるー!」
「あっ、坊ちゃんに泣きつくのは卑怯です!」

 この二人は仲良くなったのか悪いままなのか、イマイチ分かりづらい。
 それでも、軽口を叩けているという事は、悪いばかりではないのだろう。
 
「フェル。久しぶり」
「フェル、三日も寝ていたんだって? 赤ん坊はすぐに目を覚ましたのに、フェルは一度体を診てもらった方が良いのではないか?」
「ヒルクス、ベンガル。久しぶり。ベンガル、三日も寝たのは、弟に全部飲ませたらヤバいかも? って思ったから、半分以上俺が飲んだからだよ。いっぱい寝て元気に執務に追われているよ」

 ヒルクスとベンガルも夜会に顔を出していたようで、珍しい事もあるものだとしばし考えて、もしかして俺を心配して参加してくれたのだろうかとも思う。
 学生のうちは夜会は親たちの世代に任せたり、婚約者を探すか婚約者の付き合いで来るか……ぐらいなものなのだ。
 この世界は、舞台は西洋風ではあるけれど、学生は勉学中心で卒業してからが本番という感じなのである。
 乙女ゲームといえど、十八禁がある以上は大人の都合で舞台は作られているからね。
 俺たちも学園編が始まったのは十八歳からだからだ。
 まぁ、ルカリオンとそういう関係になってからは、十八禁の方のゲームだとは思っていたし、十八禁でしか出ないキャラクターのルカリオンが始めからいる事が物語っていたというもの。

「弟君はどうなったんだい?」
「シグマは、まだ王家直轄ちょっかつの魔導士たちのところだよ。魔封じをされているから、返して欲しいんだけど、両親が領地に引っ込んだもんだから、俺じゃ相手にされないんだよね」
「お義兄様、バード家の力でどうにかなりませんか?」
「うちも公爵家だけど、フェルも公爵家だよ? 公爵家クラスで話が通じないなら、ボクたちも無理だよ」

 セインの言う通り、公爵家がどうこうできる問題ではない。
 あとはラローシュ頼みになってしまうが、王家が一番恐れている能力こそが魅了なのだ。
 王家を支えている貴族に国民、その全てがシグマの思いのままに操られてしまえば、終わってしまうだろう。
 出来る事なら、シグマには温かい環境で人を操らなくても、ちゃんと人に向き合って生きて欲しい。
 もし、王家の魔導士がシグマの心に恨みを根付かせてしまえば、それこそ目も当てられない。

「フェル、うちの会社に魔封じの依頼が入ったんだけど、関係あるだろうか?」
「ベンガル……関係ないとは、言えないかも」

 人だかりになっているラローシュの方を見れば、小さく手を挙げて指を動かしている。
 指の動きからして、こちらの話は筒抜けなのだろう。
 警備の居ない扉を指は指し示し、俺は手の平の上で踊らされているような気もするが、小さく頷く。

「俺、シグマに会いに行ってこようかと思う」

 意を決して皆に言えば、最初からそうなるように示し合わせたように、音楽の切り替わりと共に二葉ちゃんがセインを伴ってダンスフロアの真ん中を陣取り、ふわりとヒロインスマイルで周りの注目を集めた。
 二葉ちゃんがステップを踏むたびにオレンジ色のドレスはキラキラと輝き、花の模様とバード家の家紋が交互に見えるという魔法が掛かる。
 これは一緒に踊っているセインだからこそ出来る芸当だろう。

「坊ちゃん、人目がミナさんに向かっている間に」
「うん」

 ルカリオンに手を引かれて、ヒルクスとベンガルに隠してもらうように人気のない扉をくぐった。
 しかし、やはり王宮は人が居ないという事は無く、ベンガルが誤魔化しに離脱し、急いで魔導士の居る魔塔と呼ばれる場所を目指す。
 そして、初めて従兄弟のアシュレイに出会ってしまった。
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