黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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4章

後処理

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世界に蔓延した【病魔】騒ぎが終焉を迎えると、復興作業がいたるところで始まりを見せていた。

温泉大陸の被害は【病魔】での死者は出なかったものの、治療薬を巡って暴徒と化した者を【病魔】での死者として処理したくらいで人への被害はそれ程ない。

物的被害があるのは大陸と温泉大陸を繋ぐ大橋を叩き落したくらいの物だった。
あとは暴徒により壊された家屋が多少あるもののそちらは既に復興済み。

大陸と温泉大陸を繋ぐ大橋を叩き落した事で大陸への行き来は飛行能力のある種族が『運搬屋』として物資の運搬として活動して今は動き回っている。

相変わらず、大陸側の難民の多さとキャンプが小さな町と化し始めて頭が痛い所ではある。
温泉大陸側は外へ人は出すものの、相変わらず外からの人間の受け入れは拒否している状態が続いている。
元々、温泉街に暮らし、【病魔】の間に帰れなかった者ぐらいしか入国を許されていない。


「若、大橋の修復作業どうしますか?」

シュテンが算盤そろばんを片手に大橋の完成図を持って執務室で書類に囲まれるルーファスに声を掛ける。

「大陸側の通行所の検問を厳しくしてから直していくしかないな。難民に温泉街に入られたら治安の問題が出てくるからな」

「すでにあの場所に難民キャンプ町を作られた時点で治安は最悪ですよ」

シュテンの言葉にルーファスが書類の束から顔を上げて眉間にしわを寄せる。
温泉大陸は流れ者が多く集まる土地ではあるが、一応の審査と許可を出して住民登録をしている為に、ルーファスの机の上に山のように積まれているのは、その審査の為の書類の束だ。
今回の一件で移住を希望する他国の者や難民がこぞって資料と書類を送りつけてきた。


「確かに【病魔】の終息宣言と資料を提供をしたが、ここまで面倒な事になるとは思わなかったな」

ルーファスが書類を握りしめながら机に突っ伏すと、事務作業をしていたテンが二頭身の小さな小鬼を指さす。

「だから小鬼の口を先に塞げと言っておいたんですよ?」
「テンさんだって僕らに『非常時の朗報は早めに出した方がいいですねー』って言ったじゃないですか?」

小鬼がテンの指を持ち上げながら頬をふくらますと、テンが頬を突きまわす。

「まぁ、小鬼には『従業員と温泉街の住民の個人情報』以外の情報は好きに使えとは言ってあるからな。灰色ラインだが禁止事項に触れる様で触れない情報だからな」

ルーファスが少し顔を上げて小鬼を見ると小鬼は指で「お金次第」と輪っかを作る。

「情報操作は今更だとは思いますけどね!僕らのネットワーク使いますか?旦那さん!」

情報を好物とし、お金を愛する小鬼は得意そうな顔で小さな体で胸を張って見せる。

「小鬼のそういう所嫌いじゃないですよ?でも反省しなさい」

むにーっと小鬼の小さな尖った耳を両手で伸ばしながらテンが笑顔で小鬼を叱る。
小鬼が少し机から足を浮かせて、ワタワタと手足をバタつかせる。


執務室のドアがバーンッと勢いよく開くと、ルーファスの叔父ギルが室内を見回す。

「ギル叔父上、何をしているんだ?」

ルーファスがギルに不審な目を向けると、ギルは涼しい顔で「居ないなー」と言ってドアを開け放ったまま出ていく。

執務室の3人と小鬼が開け放たれたままのドアを見つめながら小さく溜め息を吐く。
ギルの行動は大抵何かを追いかけまわしている時の行動なので、今日の犠牲者は誰なのか想像するだけで数人は頭に浮かぶ。

執務室の小窓がカラッと小さく音を立てて開くと山吹色の子狐がポーンっと飛び込んでくる。

「ギルは居ない?」

子狐がキョロキョロと辺りを見回しながら床にへたり込む。
子狐をシュテンが拾い上げて胸に抱きかかえると、子狐の尻尾は勢いよくグルグルと回る。

「ギルなら今さっきここを出て行ったぞ。」
「良かったの!ギルしつこいの!」
「今日はタマホメが追われているのか」
「そうなの!ギルの強化訓練はしつこいの!」
タマホメがシュテンに抱き着きながら小さい手足をバタバタ動かし抗議する。

ルーファスに朱里に関してはダメ出しを食らったギルは【刻狼亭】の従業員の強化をランダムで行うせいで最近はこの様に逃げ回る従業員がそれなりに居る。
たまに嬉々としてやり合う従業員もいるが大抵は盛大なかくれんぼと化している。


「仕方がないな。まだ復興作業で客が居ないのもあって暇だからな・・・」
「少しのお休みは好きだけど、追い回されるのはごめんなの!」
タマホメが尻尾を膨らませながら声を上げる。

「やれやれ」と、ルーファス達が言っていると、遠くで「うわーっ!」と叫ぶ従業員の声に犠牲者がまた1人増えた事に頭を抱えることになる。

結局、ネルフィームがいつもギルを回収するまでが一連作業。

しかし、この日は少し変わった事が起こった。


ギルを回収しにきたネルフィームと、ギルに文句を言いにきたルーファスが見たものは、床で倒れて寝るギルに、親指を立てて笑う製薬部署のテッチと朱里だった。

「やったな!若女将!」

「やりましたー!テッチ頑張った甲斐があったね!」

ピョコピョコと飛び跳ねて喜ぶ朱里がネルフィームとルーファスに気付くと、朱里がルーファスにガッツポーズをする。

「ギル叔父上を退治出来たのか?」

「主・・・いい加減に遊んでもらうのは懲りろと言っておいたのだが」

「テッチと毎朝作ってた薬草で作った『睡眠薬』で反撃出来たよ!」

「無臭で揮発性の高いの作るの苦労した甲斐がありましたね。若女将」



喜ぶ2人を尻目にルーファスとネルフィームが片手で頭を押さえながら、首を振る。

「ギル叔父上が大人げない反応しなければいいが・・・」

「主は大人げないからな・・・」

2人は少し不吉な事を言いながらギルが寝て忘れてくれることを心の中で祈った。
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