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5章
家出と子供達
しおりを挟む子供の頃の記憶。
何人もの女の子が泣いて脅えていた。
”子供を産む為の存在”
成長促進の薬で成長を促され12歳を過ぎると嫁がされていく。
魔族は強い者だけが生き残ればいいという勝者だけの世界。
弱者は死に絶えるだけ、幼い子供は生き残る事すら難しい。
子供は数多くいても増える事は無く減る事も無い。
可哀想な女性達が補充するように子供を産まされているから。
魔族の女性の地位の低さは他種族より酷いかもしれない。
そんな女性を守りたくて騎士になった。
誰よりも強くあろうと思った。
子供達を守れるそんな女性になりたい。
女性を守れる騎士でありたい。
誰よりも強くありたかった。
男の隊員に負けない様に常に感情を動かさず、冷静に対処する事を心掛けていた。
魔族の騎士隊長マデリーヌ。
感情が欠如した女騎士。
冷徹仮面の騎士団長。
それがマデリーヌが言われ、聞きなれている言葉。
国が運営する孤児院の女の子は総じてマデリーヌの子供の頃の記憶そのままに未だに成長促進の薬で子供を産むためだけの存在として扱われている。
マデリーヌはそんな国を信用はしていない為に、自分で孤児達の為の施設を建て、自分の給金全てをつぎ込んで運営している。
【魔王】継承が次の【魔王】に受け継がれるまでに魔王自身の子供は7人死んでいった。
魔王の子供に返り討ちにあい死んでいく子供も沢山いた。
勿論、大人も死んではいたけれど、【魔王】の子供を1人倒す為に死んだ子供達の死体の山を埋葬したのは、一般兵を含め騎士団の仕事だった。
人々を守るはずの騎士や兵士が一番相手にするのは死体の山だ。
勿論、騎士団も【魔王】候補の子供達へ奇襲攻撃を掛けるのが訓練の一環で、死んでいく部下を埋葬したこともある。
守りたい子供達はどんどん死んでいき、守りたい女性達の涙は止められない。
狂った魔族の生き方にマデリーヌは疲れていた。
ようやく、新しい【魔王】が決まった。
新しい【魔王】は何だかとても頼りになりそうにない軟弱な優男。
けれど、女性の影は無く、この分ならば【魔王】継承を次の世代へ継承させるまでの時間があり、その間に魔族の国を内側から改革して、子供達がむやみに亡くならず、女性が犠牲にならず泣かない世界の基礎を作る時間があると思っていた。
しかし、【魔王】の前に異世界から来た奇抜な恰好の少女が現れた。
態度も言動も奇妙としか言えない少女。
一目で【魔王】が異世界の少女を意識している事が分かった。
周りは相応しくない少女だと口々に王に進言し、少女にも冷遇していた。
マデリーヌも【魔王】に子供を作らせるわけにはいかなかったので少女には悪いが態度は常に厳しく接していた。
しかし、【病魔】が蔓延し、少女が【聖女】としての力を発揮したために周りも少女を認め、終いには【魔王】との間に子供を産ませて少女の能力を次の【魔王】継承者へ引き継がせれば国が安泰するから少女に山の様に子供を産めと騒ぎ立てる。
見た目と違い病弱な【聖女】の体を治すために【魔王】が色々な所から薬を取り寄せたりと、忙しそうにしていたが、このまま【聖女】が亡くなれば良いともマデリーヌは思った。
ある日、数日国を留守にすると言って【魔王】と【聖女】が出掛けて行き、帰って来た時には2人は『番』同士になっていた。
病弱な【聖女】を癒す薬を手に入れて・・・。
【病魔】が終息して暫くすると、【魔王】の周りは子供を産めと騒ぐ者達で溢れていた。
何度も【聖女】が逃げ出し、マデリーヌは【聖女】は少し魔族との考え方が違う、マデリーヌ寄りの考えをしている人物かもしれないと思い始めた。
そんな時だった。
【魔王】の子供を産めば、魔族の女性にとっての名誉と一生の暮らしが保証される。何としてでも手に入れたいチャンスではある。邪魔な【聖女】を排除しようと考える女性も出てくる。
それを避けるために、【魔王】が【聖女】以外の女性に子供を産ませて【魔王】継承の捨て駒になる子供を作ろうとしているという話が出たのは・・・。
子供の母親になる女性候補の話で城の噂は持ちきりだった。
マデリーヌにも【魔王】の側近達から候補になる様に話が出た。
許せなかった。
子供と女性を軽視するこの国の考えも【魔王】も。
【聖女】がその話を聞き怒って国を出ていき、【聖女】は自分の考えと同じ考えの持ち主だと認識した。
すぐに【魔王】が追いかけて国を出ていくのを見て、混乱の種は摘み取るべきだと、マデリーヌも追う事にした。
温泉大陸とエグザドルの定期便に乗り込んだことから行き先は温泉大陸なのは判っていた。
泊っている場所の特定が出来たが、強力な結界が張られ中々チャンスが無かった。
偶然なのか、マデリーヌの祈りが通じたのか、結界が解けた。
屋敷内に侵入すると、大柄な男と小さな少女と【聖女】の3人だけだった。
気になったのは小さな少女の事だった。
12歳程の子供の顔立ちなのに、肉体は成熟間近の女性のもの。
不釣り合いな肉体にマデリーヌは見覚えがあった。
成長促進の薬を使われた少女達のそれだった。
【魔王】はこんな年端のいかない子供に子供を産ませる為に【聖女】と共謀してこの大陸に訪れ、魔族の目を欺き子供をどんどん増やし、【魔族】継承権を持つ子供を増やしていくのでは・・・?
この少女を助けなくてはいけないとマデリーヌは思った。
屋敷に居た大柄な男に【幻惑】を使われたが、まだ大丈夫だと隙を伺っていたら、別の男に【恐怖】を掛けられた。
しくじった!そう思ったが、救わなければならない者が居るのならば、自分はやるしかない。
注意深く、隙を伺い、むしろ隙を見せて【恐怖】使いを蹴り上げて、助けるべき少女の所まで走る。
少女を連れて逃げるはずが、【幻惑】を使われ逃げられなかった。
しかし、少女を安心させる為に言葉を残す。
「私が助ける。安心しろ」
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