黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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7章

夜の小人

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 月明かりが差し込み、冬の冷たさがキンと広がる庭園をアシュレイを見送って門まで行くと、門の外の襲撃者達が朱里から夕飯に渡されたおでんの鍋を囲みながら、酒を片手に笑い合っている。
 
 緊張感のない彼らにルーファスが「今回の従業員確保はなさそうだな」と、思いながらも、朱里にとってはこのぐらいのんびりした襲撃者の方が安心は出来て良いかとも思う。

 たまに本気で襲撃者として命を狙ってくる奴もいるのだ。
本気でこの温泉大陸を手に入れられると考えている親戚がたまに出てくる。

 祖母の姉の旦那という親戚と呼ぶには遠すぎて、他人すぎる親戚に刺客を送られた事も合った。
老い先短い爺が何を狂った事をしているのやら?という感じだった。

 その当時はまだギルが【刻狼亭】で代理当主をしていたのもあって、その遠い親戚は刺客ごとギルに消されてしまい、それ以降は親戚と名乗る人間の息のかかった女が口説きに来たりもした。

 アシュレイの様に子供だけでも良いから跡取りを作れと親戚と名乗る人間に言われ、女性を連れてこられた時は本気で叩き出した。
 
 アシュレイもアシュレイで自分が跡取りを作ったものだから、ルーファスにも跡取りを作れと言いい、子供の良さなどを話てきたりもした。妻は要らないが子供は大事だと子供を可愛がるアシュレイに、だったら子供の母親である恋人を妻にすればいいものを・・・とも、思う。

 身勝手なものだと思う。
こちらが幸せを掴んだ時にこうして、人の家庭をかき回していってくれるのだから。
迷惑な幼馴染だ。

「早くアカリの所に戻るか・・・」

独り言ちれば吐く息は白く、耳先は冷たくなっていた。


 屋敷に戻り、1階にある朱里の部屋をそっと開けてみる。
薄暗い部屋には小さなオレンジ色のあかりが1つともっているだけ。
相変わらず沈み込みやすいフワフワとしたベッドで朱里とクロは仲良く寝ている。
 
 朱里の寝顔を覗き込み、幸せそうに寝ている朱里の頬にキスをすると朱里がくすぐったかったのか、手でぺしぺしと払う。

「アカリ、すまないな」

「んー・・・なに・・・?」

うにうにと朱里が目を擦りながら眠そうな目を開ける。

「アシュレイがアカリに色々言っていたが、傷付けたんじゃないかと思ってな」

「それは、気にしてないよ」
「ナウー…」

ふぁー・・・と、朱里が欠伸をしながら体を起こして、クロがずり落ちて不満の声を上げる。
少しボサっとなった朱里の髪を撫でつけながらルーファスが朱里の顔を見る。

「あー、あと、オレの女の趣味だなんだとアシュレイが言っていたが・・・」

「それも気にしてないよー・・・ふぁぁ~」

朱里が欠伸をしてコテンと、また布団の上に横になる。
眠気には勝てないらしい朱里が寝落ちし掛かり、ルーファスもこれ以上は起こすのは可哀想だと朱里に布団を掛けると、直ぐさま朱里の寝息が聞こえ始める。

「おやすみ。アカリ」

朱里の横に潜り込み、朱里を抱き寄せてルーファスも目を閉じると、布団の中でクロに朱里との間に割り込まれる。
ゴロゴロと喉を鳴らしながら朱里の服を口に咥えてもにもにと朱里のお腹を手で揉んでいる。

「んー・・・ルーファス、止めて下さい・・・」

「オレじゃないぞ」

「んー・・・」

 眉間にしわを寄せる朱里にルーファスがクロの首根っこを掴んで自分の後ろに持って行くと、クロが「ナー」と不満の声を上げてソファの上に行ってしまう。

 静かになった部屋で温泉を通している屋敷中に張り巡らせてあるパイプ管からたまに聞こえるコンという小さな音を聞きながらルーファスが寝ようとすると、廊下で「アパー」というササマキの声が響き、「ササマキ夜は静かにしろ」と、ハガネの声がする。

 しばらくするとキッチンから包丁のトントントンという音が静かにしていく。
包丁が握れない朱里にハガネがたまに料理のカットをしてストックしているのは知っていたが、寝静まった頃にしているとは思ってはいなかった。

 ルーファスがハガネには今度、ボーナスでも出すかと、思いながら眠りにつき、朝起きた時には腕の中に居たのは朱里ではなくクロだった。

「ナウーン」

「朝一番にみる顔がお前とはな・・・」

ルーファスが起きて自分の部屋にシャワーを浴びに行き、服を着替えてキッチンに行くと、水撒きを終えて朝食を作り始めている朱里が居た。

「アカリ、おはよう」

「おはようございます。ルーファス」

笑顔で振り返る朱里を見てルーファスが微笑み返すと、朱里が野菜のストックされたガラス容器を手にしてルーファスに見せる。

「ハガネがいつの間にか野菜とかお肉をストック作ってくれてたの!」

「それは良かったな」

朱里の頭を撫でると朱里が嬉しそうにしている。

「ハガネはいつやってくれてるんだろ?不思議だよね」

朱里がストックされた野菜を見ながら真剣に首をひねるのを見て、ハガネが夜遅くに小人の様に色々と動き回っている事に朱里が気付くのはいつだろうか?と、ルーファスが小さく笑う。
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