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14章
狂った果実11
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『兄さん!兄さん!助けて!!』
最後に交わしたケイトの声が今も耳に残っている。
ケルチャのたった一人の妹。助けてと呼んでいたのに、助ける事も出来ず、封印した。
後悔をしても時は戻せず、強力な力を得てしまった【魔果】にもう近付く事さえできなくなってしまった。
狂ってしまえたら良かっただろうけれど、自分が狂ってしまったら世界への影響は【魔果】以上に危ういのを重々承知している。
カシュッと音を立てて果実を食べるドリアード族の青年の傍らでケイトが泣いている。
助けてと言いながら・・・、その後ろにはドリアード族の枯れ果てた死体が積みあがっている。
仲間のドラゴンも死体の中で骨になっていた。
関わってしまったばかりにこんな事になったのか?それとも自分達が関わらなくてもいずれ関わってしまったのだろうか?
ああ・・・分からない。
でも、助けたいのはたった一人の大事な妹だけ。
手を伸ばしても、白い枝が邪魔をしてケイトの場所までたどり着く事も出来ない。
ケルチャはたった一人、枯れていくケイトの花を見ていた。
「ああー・・・嫌な夢」
ケルチャが目を覚ますと、そこはここ数年寝床にしている『女将亭』のケルチャに与えられた部屋だった。
くぅー・・・とお腹が鳴り、冬眠明けに何を食べさせてもらうかを考えながらリビングへ行くと、『女将亭』の女主である朱里と【刻狼亭】の当主の叔父であるギルが追いかけっこをしていた。
「いやぁああ!!ルーファス助けてぇえええ!!!」
「アカリ!ルーファスに助けを求めるなんて卑怯ですよ!」
「ギルさんに巻き込まれるー!助けてぇええ!!」
腕輪で魔法通信をしながら朱里が悲鳴を上げて逃げまどいキャーキャー騒いでいた。
ドラゴンも一緒に住んでいる為に広いリビングではあるけれど、走り回るには狭すぎる上に、赤ん坊のベビーベッドやベビーサークルなどがある為に狭くなっている。
赤ん坊達は何処に居るかと思えば、黒竜ネルフィームが隣りの応接間で結界を張って音を遮断して守っている。
「何してるのよ?アンタ達」
「ケルチャー!!ケルチャ逃げてください!ギルさんは敵です!」
朱里がケルチャの腕を掴んで騒ぐとギルに後ろから朱里が捕まり、ケルチャもギルに【弱点突き】をされてドラゴンの小さなサイズにさせられると小脇に抱えられる。
「アカリもケルチャも私の元へようこそ」
「ようこそじゃないです!私は子供のお世話があるんですから離してください!」
「ちょっと、アタシを巻き込んでんじゃないわよ!」
ペシペシとケルチャと朱里がギルの腕を叩いて暴れるとトスッと朱里の首の後ろに手刀が入り朱里がくたりと気を失うと、ギルがケルチャに「あなたは大人しくしてくれますよね?」とニコリと微笑む。
「ちょっと!ネルフィーム!アンタんとこの男恐ろしいんだけど?!」
「むっ、主!私の同朋に手を出すな!」
ネルフィームが結界を解いて人型を取ると腰に手を当ててギルを見下ろす。
ギルは「怒ったネルフィームも素敵ですよ?」とネルフィームの怒りは何のそのという感じである。
「アカリに迷惑を掛ければまたルーファスとアルビーに嫌われるぞ?」
「でも、私達の知り合いで慈善事業をしているのなんてアカリくらいじゃないですか?」
「だから慈善事業はやっておけと主に私は言っていたのに!」
「ですから、こうしてアカリで間に合わせるんですよ」
ネルフィームが海よりも深そうなため息を吐いて首を左右に振る。
ギルは思い立つと直ぐに行動してしまう為に後先を考えない所がある。一匹狼のギルは自分をリーダーとして考えてしまうので本能と言えど、身勝手な部分は痛手でしかない。
「主、次は氷に何年漬けられるかわからん。止めておけ。そしてケルチャを離せ」
「そうよ!アタシは関係ないでしょ!」
「いえいえ、ケルチャ。あなたには関係ありますよ?」
「主!ケルチャを巻き込もうとするんじゃない!」
「ケルチャ、【魔果】が今、世間を騒がせているんですよ」
ギルの言葉にケルチャの目が大きく見開かれる。
ネルフィームがパンッとギルの頬を打ち、ケルチャを回収すると申し訳なそうな顔でネルフィームが小さく「すまない」と謝った。
「どういう事?【魔果】は封印されているはずでしょ?!」
「誰かが慈善活動をしている様な人々を相手に【魔果】を使って悪さしている様ですよ?封印はグリムレインがやり直したようですけどね」
「犯人はどこのどいつなのよ!あんな危険な物の封印を解くなんて!」
「その犯人をおびき寄せるのに、格好の餌が【刻狼亭】の女将で慈善事業をしているアカリが必要なんですよ」
くたりと気絶したままギルに俵抱きにされている朱里をケルチャが見ながら眉間にしわを寄せる。
「わかったわ。アタシも手伝うわ」
「そうそう。それで良いんですよ」
「主!ケルチャ!関係のないアカリを巻き込むのは止めろ!どうしてもと言うなら私は本気で止めに掛かる!」
ネルフィームとギルが対峙する様に向かい合うと冷たい風がリビングの中を駆け巡る。
「ギル叔父上!アカリに何をした!」
「貴様!我の嫁に手を出したな!」
窓からルーファスとグリムレインがリビングに入ってくると、ギルが「少し時間を掛け過ぎましたね」と、ため息を吐いた。
最後に交わしたケイトの声が今も耳に残っている。
ケルチャのたった一人の妹。助けてと呼んでいたのに、助ける事も出来ず、封印した。
後悔をしても時は戻せず、強力な力を得てしまった【魔果】にもう近付く事さえできなくなってしまった。
狂ってしまえたら良かっただろうけれど、自分が狂ってしまったら世界への影響は【魔果】以上に危ういのを重々承知している。
カシュッと音を立てて果実を食べるドリアード族の青年の傍らでケイトが泣いている。
助けてと言いながら・・・、その後ろにはドリアード族の枯れ果てた死体が積みあがっている。
仲間のドラゴンも死体の中で骨になっていた。
関わってしまったばかりにこんな事になったのか?それとも自分達が関わらなくてもいずれ関わってしまったのだろうか?
ああ・・・分からない。
でも、助けたいのはたった一人の大事な妹だけ。
手を伸ばしても、白い枝が邪魔をしてケイトの場所までたどり着く事も出来ない。
ケルチャはたった一人、枯れていくケイトの花を見ていた。
「ああー・・・嫌な夢」
ケルチャが目を覚ますと、そこはここ数年寝床にしている『女将亭』のケルチャに与えられた部屋だった。
くぅー・・・とお腹が鳴り、冬眠明けに何を食べさせてもらうかを考えながらリビングへ行くと、『女将亭』の女主である朱里と【刻狼亭】の当主の叔父であるギルが追いかけっこをしていた。
「いやぁああ!!ルーファス助けてぇえええ!!!」
「アカリ!ルーファスに助けを求めるなんて卑怯ですよ!」
「ギルさんに巻き込まれるー!助けてぇええ!!」
腕輪で魔法通信をしながら朱里が悲鳴を上げて逃げまどいキャーキャー騒いでいた。
ドラゴンも一緒に住んでいる為に広いリビングではあるけれど、走り回るには狭すぎる上に、赤ん坊のベビーベッドやベビーサークルなどがある為に狭くなっている。
赤ん坊達は何処に居るかと思えば、黒竜ネルフィームが隣りの応接間で結界を張って音を遮断して守っている。
「何してるのよ?アンタ達」
「ケルチャー!!ケルチャ逃げてください!ギルさんは敵です!」
朱里がケルチャの腕を掴んで騒ぐとギルに後ろから朱里が捕まり、ケルチャもギルに【弱点突き】をされてドラゴンの小さなサイズにさせられると小脇に抱えられる。
「アカリもケルチャも私の元へようこそ」
「ようこそじゃないです!私は子供のお世話があるんですから離してください!」
「ちょっと、アタシを巻き込んでんじゃないわよ!」
ペシペシとケルチャと朱里がギルの腕を叩いて暴れるとトスッと朱里の首の後ろに手刀が入り朱里がくたりと気を失うと、ギルがケルチャに「あなたは大人しくしてくれますよね?」とニコリと微笑む。
「ちょっと!ネルフィーム!アンタんとこの男恐ろしいんだけど?!」
「むっ、主!私の同朋に手を出すな!」
ネルフィームが結界を解いて人型を取ると腰に手を当ててギルを見下ろす。
ギルは「怒ったネルフィームも素敵ですよ?」とネルフィームの怒りは何のそのという感じである。
「アカリに迷惑を掛ければまたルーファスとアルビーに嫌われるぞ?」
「でも、私達の知り合いで慈善事業をしているのなんてアカリくらいじゃないですか?」
「だから慈善事業はやっておけと主に私は言っていたのに!」
「ですから、こうしてアカリで間に合わせるんですよ」
ネルフィームが海よりも深そうなため息を吐いて首を左右に振る。
ギルは思い立つと直ぐに行動してしまう為に後先を考えない所がある。一匹狼のギルは自分をリーダーとして考えてしまうので本能と言えど、身勝手な部分は痛手でしかない。
「主、次は氷に何年漬けられるかわからん。止めておけ。そしてケルチャを離せ」
「そうよ!アタシは関係ないでしょ!」
「いえいえ、ケルチャ。あなたには関係ありますよ?」
「主!ケルチャを巻き込もうとするんじゃない!」
「ケルチャ、【魔果】が今、世間を騒がせているんですよ」
ギルの言葉にケルチャの目が大きく見開かれる。
ネルフィームがパンッとギルの頬を打ち、ケルチャを回収すると申し訳なそうな顔でネルフィームが小さく「すまない」と謝った。
「どういう事?【魔果】は封印されているはずでしょ?!」
「誰かが慈善活動をしている様な人々を相手に【魔果】を使って悪さしている様ですよ?封印はグリムレインがやり直したようですけどね」
「犯人はどこのどいつなのよ!あんな危険な物の封印を解くなんて!」
「その犯人をおびき寄せるのに、格好の餌が【刻狼亭】の女将で慈善事業をしているアカリが必要なんですよ」
くたりと気絶したままギルに俵抱きにされている朱里をケルチャが見ながら眉間にしわを寄せる。
「わかったわ。アタシも手伝うわ」
「そうそう。それで良いんですよ」
「主!ケルチャ!関係のないアカリを巻き込むのは止めろ!どうしてもと言うなら私は本気で止めに掛かる!」
ネルフィームとギルが対峙する様に向かい合うと冷たい風がリビングの中を駆け巡る。
「ギル叔父上!アカリに何をした!」
「貴様!我の嫁に手を出したな!」
窓からルーファスとグリムレインがリビングに入ってくると、ギルが「少し時間を掛け過ぎましたね」と、ため息を吐いた。
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