黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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18章

三つ子とリンゴなほっぺ

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 母親の朱里の様子が元に戻り、トリニア家の小さな三つ子達もホッと安心した所でポンッと三つ子の頬っぺたがふっくらと腫れあがり、ひんひんと泣く羽目になった。

「あらら、おたふく風邪ね」
「リンゴ風邪だろ?」
「この世界だとリンゴ風邪なのかな?まぁ、これは子供の頃にやっておくといい病気だから我慢しようね」
「アカリやアリスが居るのになる時はなるもんだな」

 ダブルベッドの大きさのベッドに3人で頬を冷やしながら、ひんひん泣いてリンゴの様に赤くて丸いほっぺが並んでいるのは何とも痛ましいものである。
朱里とハガネがひんひん泣く三人の世話をし、ルーファスはミルアとナルアを連れて旅館の方へ撤収している。
実はルーファスは済ませているのだが、ミルアとナルアはまだリンゴ風邪を罹患しておらず、料亭のお手伝いもある為にお客さんに移してはいけないと屋敷を離れたのである。

 妊婦のキリンやフィリアにも感染させるわけにはいかないので当分は外出禁止である。
万が一の時は特殊ポーションで対応するしかないとは思っている。

 しかし三つ子はこのまま製薬部隊の作ったリンゴ風邪の治療薬でのんびり治していくつもりである。
朱里が手を出せば少しずつ聖域の効果で治りはするとは思うが、将来困らない為にも三つ子には頑張ってリンゴ風邪を克服してもらいたい。

「ははえー・・・うーっ」
「いちゃいー」
「あー・・・うー・・・」
「よしよし、寝て治そうね。何か冷たい物でも作ってあげようか?」

 ふるふると横に首を振る三人に、アイスを作っておいた方が良いかな?と考えると、察しのいい従者のハガネはサッサと台所に行って作り始めている。
ちなみにグリムレインは新年会の後、また冬を撒きに行ってしまっているので少しの間、温泉大陸を不在にしている。

 冷たい水玉を作り、中で布巾を冷たくして3人の頬とおでこに乗せてを繰り返しながら、たまに砂糖と塩と水とミッカの果汁で作ったドリンクを飲ませて様子をみている。
朱里の聖域が発動しない様にハガネが口に入れる物は作っている為に、少し3人には不評である。
朱里が作る物は体の不調を浄化するので、それがされない物は本能的に判るらしい。

「アカリ、交替だ。飯作っといたから食っとけ」
「ありがとう。ハガネは食べた?」
「ああ。作りながら食ったから心配すんな」
「ゆっくり食べて良いのに」
「気にすんな。夜も見ねぇといけねぇし、お互い体力温存でいこうぜ」
「はい。頼りにしてます!」

 ハガネに看病を任せて朱里がキッチンへ行くと保温魔法をしてあるお皿の上には煮込みハンバーグとオニオンスープが置いてあった。

「い・・・いつの間に?!ハガネって実は分身の術でも使えちゃったりする?」

 ニ、三人居て同時に料理をこなしているんじゃないだろうかとさえ思ってしまう。
煮込みハンバーグにはブロッコリーと人参が添えてある。ちょっとしたレストラン気分にフンフン鼻歌を歌いながらご飯をよそって「いただきまーす」と手を合わせてから食べて、朱里はハガネの実力をまたもや再確認した。

「チーズが入ってるぅぅ~うちのハガネは最高ね!」

 私の従者有能過ぎる!!に尽きる。
デミグラスソースもコクがあるし、何でも卒なくこなすハガネを絶賛したい。
キッチンに漂うバニラエッセンスの様な匂いはアイスの匂い・・・ティルナール達に作った物だと判るが・・・やはり、煮込みハンバーグを作りつつアイスも作るハガネは分身の術が使えるのかもしれない。
ハガネは東国出身の人間だから、忍者が居るに違いない!昔の日本の江戸みたいな感じらしいので、忍者はいる!ハガネとかハガネとか!と、頭の中で騒ぎつつ朱里は食事を進める。

「はふぅー。オニオンスープも美味しい」

 満足ーと、声に出していたら腕輪がふるふると振動して腕輪に出るとルーファスがティルナール達を心配して連絡をしてきたようだった。
番同士は番を第一として子供は二の次と聞くこともあるが、ルーファスは子供も大事にしているので良いお父さんだと朱里は思う。

『ティル達はどんな様子だ?』
「リンゴほっぺがプックリしてて泣いてますね」
『オレも看てやれたら良いんだがな、流石にリューもシューもキリン達に病気を移せないと出てこないから代わりが居なくてな』
「それは仕方がないよねぇ。まぁ、私とハガネがお世話をしますから安心してくださいな」
『アカリもハガネも無理はするなよ?』
「大丈夫。私もハガネも子供の頃に掛かってるから移らないからね」
『そういう意味では無いが、まぁ2人に任せる』
「はい。任されました!ルーファスもお仕事頑張って」
『ああ、アカリに1週間も会えないのは辛いが何とか耐える』

 リンゴ風邪は人への感染が強い時期が5日間とされている為ルーファスには少し多めに1週間は屋敷へ寄らない様に言ってある。それでも完治するのには2週間はかかると言われているのであとは三つ子の頑張り次第というところだろう。

 ルーファスと通信を終えて三つ子の所へ戻ると熱が上がり始めたらしく、声も無く泣いて可哀想にもなってくる。しかし、ここで手を出すのは良くない事も分かっているので、ぐっと堪えて新しい寝間着を用意して部屋を暖かくしてから布団を薄掛けにして濡れ布巾で体を拭いて着替えさせてと、看病を繰り返していく。  

 そんなこんなで3日程した頃、気を付けてはいたが、やはり朱里の聖域が何処かで発動して口に入ったらしく、三つ子は元気に復活していた。

「あらら、可愛いリンゴちゃんほっぺが治っちゃいましたね」
「まぁ、一応免疫はついただろ。これで将来困る事はねぇんだから、3日間でも頑張ったんだ褒めとこうぜ?」
「はい。そこは頑張ったと思います。良い子達ですよ!流石私の子供達です!」
「・・・よーしお前等、アカリはほっといて飯食うぞー」
「ハガネひどい!」

 ハガネの背中をポカポカ叩きながら朱里が付いて歩き、その後ろをティルナール達がちょこちょこついて歩く。
リビングでリゾットを口に運んでいた時だった、玄関がバタンと慌ただしく開き、ハガネが見に行くとルーファスが両脇に頬を膨らませたミルアとナルアを連れて帰って来た。

「ミルアとナルアもリンゴ風邪だ・・・」
「母上~、頬っぺたが痛いのですぅー」
「母上~、頬っぺたが不細工なのですぅー」

 ひんひん泣き言を言うミルアとナルアにハガネと朱里が目を合わせて「次はお前達かー」と看病はまだ終わらない事を悟る。
 結局、リンゴ風邪はどこから発症したのかと辿ってみると、出入りの商人達に聞いたところによると他の大陸で流行っているらしく、商人の誰かしらが持ち込んでまったのでは?という話で落ち着いた。
子供の時に掛かっておくのが良いという事もあって、まだ掛かっていない子供が親に連れられてきたりもしたが、ミルアとナルアが「見世物じゃありませんの!!」とキィキィ言いながら真っ赤に膨らんだリンゴほっぺをますます膨らませていた。
三つ子は喉元過ぎれば何とやらで「ねーね、リンゴちゃん」とキャッキャッとミルアとナルアを指さして笑って、ミルアとナルアにムギュッと頬っぺたを人力リンゴほっぺにされたのだった。
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