黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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18章

大旦那と大女将

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「若の所に子供が出来たなら、旦那様は『大旦那』呼びになりますね」

 【刻狼亭】の製薬室で製薬部隊室長のマグノリアと話をしていた時にそう言われてルーファスが自分の名称が変わる事に少し思考を止める。

「この【刻狼亭】で元気なうちに大旦那まで行ったのはオレが初めてじゃないか?」
「そうですね。言われてみれば【刻狼亭】の歴代当主は番同士の方しか継いでいませんでしたからね。独り身が長く子供が出来た頃には結構な年だったりで孫が出来ても数年で亡くなってる方ばかりですからね」

 『番』は出会う事自体が稀なので出会った時にはそれなりの年を取っていたり双方が同年代で出会う事も少なく、ルーファスの両親は近い年ではあったが母親が病弱な為に出産と同時に亡くなった様な物で、番の伴侶が亡くなれば残された方も後を追う様に弱って死んでしまう為、【刻狼亭】では番同士故の弊害で子供は1人か2人のままで生涯を閉じる当主が多かったのである。
親子3代揃う事は滅多にない事でもある。
リュエールの子供が無事に生まれればルーファスは『大旦那』になる。
そしてリュエールは『旦那』呼びになり、孫は『若』か『お嬢』になる。
 
「大旦那か・・・自分に孫が出来た事にビックリだ」
「ある意味よく今までトリニア一族は途切れませんでしたよね」
「【刻狼亭】の七不思議の1つだな」

 朱里の虚弱さで初めは子供は諦めていたのが、気付けば大家族である。
ある意味【刻狼亭】の当主の中で一番家族が多いともいえる。

「アカリも『大女将』か・・・」
「最初の頃は若女将って言うのも頼りないくらいの少女でしたからね」
「子供も直ぐに生まれたしな。アカリには驚かされてばかりだ」
「異世界召喚なんて少し呆れてはいましたけど、こうしてみると釣り合いをとる為にも必要な人間が選ばれて召喚されている気もしますよね」
「そうだな・・・オレ達の様に幸せに暮らせるなら良いが、そうもいかん場合もあるからオレは召喚には否定的ではあるがな」
「まぁ、【刻狼亭】はアカリさんで良かったですよね」
「ああ。アカリのおかげでこの先も【刻狼亭】は安泰だな」

 製薬室でそんな話をして何となく花屋に寄って花を買い久々に自分の両親が眠る温泉大陸の墓地へ行くと、白い着物に黒髪の小柄な姿が墓地に立っている。

「アカリ、こんな場所でどうしたんだ?」
「あっ、ルーファス。寒くなる前にお墓を掃除に来てたの。あとリューちゃんとシューちゃんの所の赤ちゃんが無事に生まれる様にお義父さんとお義母さんにお願いにきたの」
「もしかして、アカリは子供達が生まれる前にいつも来てたのか?」
「えへへ。普通に近状報告をしに毎月来てるだけだよ?」

 息子の自分ですらほとんど来ない様な場所に来ていたのだろうか?そう思うと自分達が子沢山な理由は朱里がこうして両親に願掛けにきていたおかげでは無いかとすら思ってしまうから不思議だ。
もし先祖代々の魂があるとしたら【刻狼亭】の『大女将』に相応しいのは朱里なのだとしっくりくる。

「アカリ、いつもオレの両親にまで気を掛けてくれてありがとう」
「私の両親で子供達のお祖父ちゃんお祖母ちゃんなんだから当たり前じゃない。でももう直ぐ私達もお祖父ちゃんとお祖母ちゃんですね」
「くすぐったい気もするがな。オレ達だってまだ子供は作れるしな」
「もう、ルーファスったら!」

 眉を下げて笑う朱里に抱きつき、少し冷えた体の朱里に自分のマフラーを巻き付けると、マフラーから顔を出した朱里がマフラーに擦り付く。

「温かいね。それにルーファスの匂いがしてる」
「そんな恰好で来たら駄目だろ?」
「あ、一応ケープとか持ってきてるんだよ?お墓のお掃除する間は汚すといけないから脱いでただけ」

 朱里が少し離れた場所から自分の荷物を持って「大丈夫!」と笑ってケープを羽織り、ルーファスの横に立つ。
手に持った花を墓に供えて、息子達夫婦の子供の事と自分達夫婦が『大旦那』と『大女将』になる事を報告して、朱里を抱き上げる。

「ふふっ、あと半年もしたら私のこのポジションも孫に取られちゃうね」
「オレの腕はいつでもアカリ専用だが?」
「そんな事言いながらルーファスは孫にメロメロのお祖父ちゃんになっちゃうんですよ?」
「オレより朱里の方がメロメロになりそうだがな?」
「そりゃあ、孫は可愛いでしょうからね!キリンちゃんもフィリアちゃんも可愛いから赤ちゃんもきっと可愛いですよ!これは断言できる!」
「孫が生まれたら、オレ達は『大旦那』と『大女将』だ」
「なんだか自分が凄い人になったみたいな呼び名に?!」

 おでこをくっつけて目を合わせて朱里とルーファスが笑い、少し冷たい唇を温める様に何度も啄むようなキスを交わす。
白い吐息が漏れて唇がジンジンと熱くなると、目も眩むような濃厚なキスをされて朱里がくったりとルーファスの首に顔を埋めると、満足したのかルーファスが朱里を連れて墓地を後にした。
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