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21章
魔力の満ちた大地
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魔獣の【王】が倒され、一時期はダークエルフは【怨嗟】騒ぎで迫害されていたものの、魔石を砕いた事で数百年ぶりの魔石が空から降ってくるという事態に世界中が沸き上がり、ダークエルフのサザンは【勇者】として世界に名を知られ渡る事となった。
少しずつ魔力が大地から薄れていた事もあり、魔石が世界中に降り注いだことは、世界にとって良い事であった。
恩恵は魔石の大きさにもよるが、魔力がほぼないとされていた人族の国にも少しは恩恵があった様で、活気づいていた。
各国で魔力が満ち溢れた大地になり、豊かな実りと、人々の魔力の向上は喜ばしく、『星降り祭り』は5月の頭に行われていた物は、『旧・星降り祭り』となり、今回の『星降り祭り』は1月に開催されることになるそうだ。
「温泉大陸の『星降り祭り』は変わらず5月に執り行う」
【刻狼亭】の大旦那であるルーファスの鶴の一声で、温泉大陸の『星降り祭り』は前と変わらない。
既に隠居したルーファスではあるが、発言権は未だに持っているので16代目のリュエールは逆らうことなく了承した。
「ルーファス、もう気にしなくてもいいと思うよ? 今回の魔石も、私は関わってるんだし、ね?」
「しかし、初代からの教えをここで途切れさせるわけにもいかんだろ?」
「うーん……そうなの、かなぁ?」
朱里が指を口に添えながら、首をかしげて少し眉間にしわを寄せる。
それに、初代からルーファスの代まで毎年行われた『星降り祭り』の利益は全て朱里が【刻狼亭】の初代ルーディクスから貰った財貨の袋に流れ込んでいる為に、時間移動を繰り返しても十分な金額になっている為、もう『星降り祭り』をしなくても大丈夫なのである。
この財貨の袋は時間移動の際、中身がループしてしまっているのか、一向に減らないのである……。
ある意味、危険な代物なので、存在はルーファスとアカリと財貨の番人である宝玉竜のファルヒュームのみが知っているだけである。
「それより、アカリ、体調はどうだ?」
「ふふっ、いつも通り元気ですよ」
お腹をポンポンと叩いて、朱里が笑うとルーファスが朱里のお腹に手を当てる。
朱里が時間移動の冒険から戻って5ヶ月、日に日に少しずつ大きくなるお腹に手を当てては、毎日のようにこの質問を繰り返している。
隠居生活を始めたものの、まだ隠居するには若いので一緒に旅行を計画していた為に、色々と予定を断っていて、さぁ行くぞ! と言う時に、妊娠で旅行は中止、そしてルーファスは暇を持て余しているというところなのである。
「そういえば、温泉大陸の使っていない土地を畑にして、魔力が豊富な野菜を売り出して欲しいって、商人さんが話を持ち掛けてきているって、リューちゃんが言ってたよ」
「リューに話を持って行く時点で、その商人はハズレだな」
「だよねぇ……。リューちゃんは【刻狼亭】の当主ではあるけど、温泉大陸の権利はルーファスだから、土地に関してはルーファスの許可が必要だもんねぇ」
「商人は正確な情報も物を言う世界だ。それが分かっていないようでは三流だからな」
少し半目になったルーファスは、欲の張った商人は商人らしくはあるが、温泉大陸という物を解ってはいないなとも思う。
この温泉大陸は別に金儲けがしたいという訳ではなく、一時の安らぎの場として提供している場だという事を理解していなければ、温泉大陸の人間は首を縦に振る者は少ない。
魔力が大地に満ち溢れている為に、他の大陸より恵まれた土地になってはいるが、それは全て、温泉大陸を訪れた人や住民たちの為のものであって、他の大陸に分け与える必要が無い限りは利益目的においそれとばら撒くつもりもない。
まぁ、今は世界中が魔石の恩恵に歓喜しているので当分は静かだろうが、そのうち欲を張った人間が土地を狙いに来る事も想定して、今のうちに魔力の多い野菜などは温泉大陸の住民に食べさせ、魔力を向上させて、いつ襲撃があってもいい様に備えさせておく方が得策だと、ルーファスは思っている。
それに、新しい家族が増える以上、護りは固めておくべきだ。
「アカリ、そろそろ眠いんじゃないか?」
「うん。少し眠いかな?」
カウチソファに獣化してルーファスが横になり、朱里がルーファスのお腹部分に頭を乗せて横になる。
最近の二人の昼寝スタイルで、二人はのんびりと夏の日差しの中でまどろみを楽しんでいる。
魔石のおかげで今年は猛暑にもならずに過ごしやすく、『出張・女将亭』のアイスとジュースの移動露店も今年は出しておらず、グリムレインが「アイスが食えぬ!」と、嘆いていた。
朱里が寝息を立て始めて、しばらくすると玄関を元気に開ける音がし、三つ子達が廊下を駆ける音がする。
「やれやれ、賑やかなのが帰ってきたな……」
ルーファスが獣化を解いて元に戻ると、朱里の体の上に薄掛けを掛けてから、三人の子供達の元へ行く。
「おかえり。三人共、今日の学校はどうだった?」
少し小麦色に日焼けした三人は尻尾を振りながら、ルーファスに今日の学校の出来事を聞いてくれと我先に喋り出す。
少しずつ魔力が大地から薄れていた事もあり、魔石が世界中に降り注いだことは、世界にとって良い事であった。
恩恵は魔石の大きさにもよるが、魔力がほぼないとされていた人族の国にも少しは恩恵があった様で、活気づいていた。
各国で魔力が満ち溢れた大地になり、豊かな実りと、人々の魔力の向上は喜ばしく、『星降り祭り』は5月の頭に行われていた物は、『旧・星降り祭り』となり、今回の『星降り祭り』は1月に開催されることになるそうだ。
「温泉大陸の『星降り祭り』は変わらず5月に執り行う」
【刻狼亭】の大旦那であるルーファスの鶴の一声で、温泉大陸の『星降り祭り』は前と変わらない。
既に隠居したルーファスではあるが、発言権は未だに持っているので16代目のリュエールは逆らうことなく了承した。
「ルーファス、もう気にしなくてもいいと思うよ? 今回の魔石も、私は関わってるんだし、ね?」
「しかし、初代からの教えをここで途切れさせるわけにもいかんだろ?」
「うーん……そうなの、かなぁ?」
朱里が指を口に添えながら、首をかしげて少し眉間にしわを寄せる。
それに、初代からルーファスの代まで毎年行われた『星降り祭り』の利益は全て朱里が【刻狼亭】の初代ルーディクスから貰った財貨の袋に流れ込んでいる為に、時間移動を繰り返しても十分な金額になっている為、もう『星降り祭り』をしなくても大丈夫なのである。
この財貨の袋は時間移動の際、中身がループしてしまっているのか、一向に減らないのである……。
ある意味、危険な代物なので、存在はルーファスとアカリと財貨の番人である宝玉竜のファルヒュームのみが知っているだけである。
「それより、アカリ、体調はどうだ?」
「ふふっ、いつも通り元気ですよ」
お腹をポンポンと叩いて、朱里が笑うとルーファスが朱里のお腹に手を当てる。
朱里が時間移動の冒険から戻って5ヶ月、日に日に少しずつ大きくなるお腹に手を当てては、毎日のようにこの質問を繰り返している。
隠居生活を始めたものの、まだ隠居するには若いので一緒に旅行を計画していた為に、色々と予定を断っていて、さぁ行くぞ! と言う時に、妊娠で旅行は中止、そしてルーファスは暇を持て余しているというところなのである。
「そういえば、温泉大陸の使っていない土地を畑にして、魔力が豊富な野菜を売り出して欲しいって、商人さんが話を持ち掛けてきているって、リューちゃんが言ってたよ」
「リューに話を持って行く時点で、その商人はハズレだな」
「だよねぇ……。リューちゃんは【刻狼亭】の当主ではあるけど、温泉大陸の権利はルーファスだから、土地に関してはルーファスの許可が必要だもんねぇ」
「商人は正確な情報も物を言う世界だ。それが分かっていないようでは三流だからな」
少し半目になったルーファスは、欲の張った商人は商人らしくはあるが、温泉大陸という物を解ってはいないなとも思う。
この温泉大陸は別に金儲けがしたいという訳ではなく、一時の安らぎの場として提供している場だという事を理解していなければ、温泉大陸の人間は首を縦に振る者は少ない。
魔力が大地に満ち溢れている為に、他の大陸より恵まれた土地になってはいるが、それは全て、温泉大陸を訪れた人や住民たちの為のものであって、他の大陸に分け与える必要が無い限りは利益目的においそれとばら撒くつもりもない。
まぁ、今は世界中が魔石の恩恵に歓喜しているので当分は静かだろうが、そのうち欲を張った人間が土地を狙いに来る事も想定して、今のうちに魔力の多い野菜などは温泉大陸の住民に食べさせ、魔力を向上させて、いつ襲撃があってもいい様に備えさせておく方が得策だと、ルーファスは思っている。
それに、新しい家族が増える以上、護りは固めておくべきだ。
「アカリ、そろそろ眠いんじゃないか?」
「うん。少し眠いかな?」
カウチソファに獣化してルーファスが横になり、朱里がルーファスのお腹部分に頭を乗せて横になる。
最近の二人の昼寝スタイルで、二人はのんびりと夏の日差しの中でまどろみを楽しんでいる。
魔石のおかげで今年は猛暑にもならずに過ごしやすく、『出張・女将亭』のアイスとジュースの移動露店も今年は出しておらず、グリムレインが「アイスが食えぬ!」と、嘆いていた。
朱里が寝息を立て始めて、しばらくすると玄関を元気に開ける音がし、三つ子達が廊下を駆ける音がする。
「やれやれ、賑やかなのが帰ってきたな……」
ルーファスが獣化を解いて元に戻ると、朱里の体の上に薄掛けを掛けてから、三人の子供達の元へ行く。
「おかえり。三人共、今日の学校はどうだった?」
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