黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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22章

魔国の学園祭12

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 屋敷の中でお醤油とみりんの煮しめる匂いが漂い、背中におぶったスクルードが鼻をヒクヒクさせながら足をばたつかせてご機嫌よくお喋りをしている。

「まんうー! にゃぱぱ、なんう!」
「うん。そうだねー。ご飯の良い香りだねー」

 まだ言葉はパ行とかが多く、意味があるのかないのか分からないものが多いけれど「まんう」が「ご飯」なのは確かなようだ。

 私が今作っているのはルーファスに頼まれた焼きおこわの具で、甘く煮しめ中のお肉。
他の具はニンジンとタケノコとシイタケと栗なんだけど、先にお肉だけは煮しめておいて、他の具材は温泉大陸にある森に採りに行くつもり。
ニンジンはハガネの畑でシイタケは干しシイタケがあるから、後はタケノコと栗。タケノコは二月ほど前にいっぱい採って保存してあるから、これも心配ない。

「そろそろ……うん。美味しい」

 お肉をひと摘まみして、お肉がほろほろに崩れるくらいで、味見もバッチリしておく。
我ながらよく煮込めて美味しい。ただ、美味しいから食いしん坊なドラゴン達にお酒のおつまみにされない様にしっかり四角い蒸籠の中に隠しておく。
そして蒸籠の上に『食べるべからず』と紙に書いて張り付けておく。

 ルーファスが魔国で頑張っている間に私はしっかりお家を守っておかなきゃいけない。
料理もその中に含まれる。つまみ食いは阻止しなければいけない重要事項である。

「さて、スーちゃん。栗を拾いに行こうねー」

 竹で作られた籠に少し大きめの竹で出来たトングを装備して、靴は皮のブーツ。
スクルードの頭に綿の入った帽子をかぶせる。これで木の上から栗が落ちてきても大丈夫なはず。
フンフンと鼻歌交じりに屋敷を出て、いざ森へと歩き出そうとしたら門扉のところでドラゴン達が大きな竹かごを持って騒いでいた。

「アカリ! 栗拾い行ってきたわよ!」
「えー! 今から行こうと思ってたの! 助かるー!」
「我も行ったのだぞ!」
「ケルチャもグリムレインもエデンもケイトもアルビーもありがとー!」

 どうりで屋敷の中が静かだったわけだ。
ドラゴン達は竹かごを地面に下ろして、尻尾をパタパタ振りながら頭を撫でてと言わんばかりに、頭を私の前まで持ってくるので、いい子いい子と一人ずつ頭を撫でていく。

「ってかよー。アカリは一人で行こうとすんなよな。俺等に声かけろっていつも言ってんだろ?」

 ハガネがいつの間にやら後ろに居て、私の頭をグリグリと左右からげんこつを入れてくる。

「痛いって、痛い~っ! ハガネひどい!」
「アカリが俺の言う事聞かねぇのが悪い。ったく、スーまで連れて。スーに何かあったらどーすんだよ」
「でもスーちゃん一人には出来ないし、森に栗拾い行くだけのつもりだったし」

 ペチンとハガネにデコピンされて、「アカリは反省しねぇな」と溜め息交じりに言って屋敷の中へ皆で入っていく。
屋敷の中に入ると皆で庭に出て栗の殻を剥いていく。
 私は小さなナイフで剥くけど、ハガネは風魔法を使って、栗の周りに風を小さく起こしてリンゴの皮を剥く様に殻が剥けていく。
ハガネのオリジナルの魔法なので説明も、「風でグルッと剥いてるだけだ」というから、これはネリリスさんの魔法にも無いので、私にはお手上げである。

 ドラゴン達は小さな爪でカリカリしながらペリッと殻を剥いてくれる。これも私にはまねのできないので参考にはならない。

 塩水を入れた桶に皆が剥いてくれた栗の実が集まり、ハガネに台所に運んでもらって料理の続きを始める。
ニンジンとかはハガネが畑から持ってくると言うし、干しシイタケを水にさらしている間に材料を切り、鼻歌交じりに台所で動いていると、ハガネが戻って来て台所で一緒に料理を手伝ってくれる。
まぁ、ハガネが台所に立つと、手伝いというより、私が手伝いに回っている感じもするけど。

「大旦那は戻るのどれくらいになりそうなんだ?」
「んーっ、まだわかんないけど、リュエールに任せちゃってるから、あの子に任せたら直ぐに終わって、ルーファスも直ぐに帰ってくると思うの」
「まぁ、リューに任せたら大抵の事は万事うまくいくから、心配はねぇよなぁ」

 うんうんと頷いて、洗ったもち米に干しシイタケの戻した水を入れて切った材料を入れていく。調味料も付け加え、さっき煮しめたお肉を蒸籠から出して、切り分けて入れていく。
お肉は遠慮なくいっぱい入れちゃう! これ、我が家の鉄則。狼さんにはお肉がつきものだからね。

「さてと、おこわに使わない栗は甘露煮にしちゃおうか」
「そうだな。冬用に保存させとくか」

 少し、ドラゴン達が頑張りすぎたのか、大量なので……ご近所さんにも後で配ろう。
もしかすると、温泉大陸の森の栗を全部かき集めてきたのかもしれないと疑ってしまうくらい、ちょっと量が多い。

「おこわの他に何か作んのか?」
「んーっ、茶わん蒸しと肉じゃがかなぁ?」
「なんつーか、茶色い食卓だな」
「秋らしい色じゃない? でも茶色いね。ブロッコリーのベーコン炒めでもする?」
「茹でて食わせりゃそれでいいんじゃねぇ?」

 私とハガネが台所でそんな話をしている頃、魔国の方ではルーファスが困った事になっていたなんて私は思いもしていなかった。
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