黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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25章

おヨメさまと水竜

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 うねうねと青い紐が揺れて、ルーファスが眉間にしわを寄せる。
私としては紐? 青いミミズ!? と、喋るミミズ紐に驚きである。これも獣人? あれ? ミミズって動物? 虫? どっちだろう??

「なんだコレは……?」
『コレとはなんじゃ! 失礼な!』

 あっ、ルーファスもソレわからないんだ?
周りに居た塔の人達も、私達が喋る青いミミズ紐と騒いでいるのを、驚いた顔で見ている。

 ルーファスが顔を近づけたところ、ブシャーッと水がルーファスの顔に掛かり、青いミミズ紐は水に溶けて姿を消してしまう。

「あわわ、ルーファス大丈夫!?」

 鼻をヒクつかせて、ルーファスがチッと舌打ちして周りを見渡す。

「【乾燥ドライ】、大丈夫だ。クソッ、匂いも無い」

『匂いなど、無粋なものあるはずが無かろう?』

 声は何処からともなくするのに、姿は見えない。かなり近くから聞こえている気がするんだけど……、それにこの口調少しだけグリムレインっぽい。
でも、グリムレインならルーファスにこういう態度もしないし……私に姿を見せないことは無い。
だとしたら……

「……アクエレイン?」

『流石、君主はわかっておる!』

「やっぱり! このお屋敷のドラゴン贔屓なところと口調が、グリムレインの身内な感じがする!」
『うむうむ。そなたは見所がある。兄者が気に入るわけだ』

 当たったけど、あの青いミミズのような紐はドラゴン? 知っているドラゴン達と姿が随分違うような?
ルーファスが私を凝視して、コートの胸元にいつの間にか出来ていた青いドラゴンの刺繍を見つめる。

「アカリから離れろ」
『我が名は水竜アクエレイン。兄者の君主として恥じぬ心を持つ者に契約を授ける』

 ルーファスが刺繍を掴む前に、アクエレインがスルッとコートから抜け出すと私の左サイドの髪の一房に蝶々結びになって飾り紐のようになる。

「えーと、まさか君主契約してないよね? ね?」
『したぞ。昨日のそなたは兄者の名に恥じぬように火属性に負けぬ戦いであった。兄者の君主がどんなものかと思ったが、天晴れであった』

 あー、うん。水玉でレベンさんと戦っていた時は確かに、グリムレインの君主に恥じないように自分でも頑張ったけど、君主契約の契約内容がそれなんて……アクエレインはブラコン??
ルーファスが小さく溜め息を吐いて、「リュエールめ……」と、何故ここでリュエールの名前が出てくるのやら?

「あの、その青い紐は水竜様なので、すか?」

 恐る恐るという感じで水の塔の塔長さんが聞いてきて、「多分?」と私は首を傾げる。
こんなドラゴンっぽくないミミズ紐なので、私にも自信はない。

『そなた……あんまりではないか?』
「だって、ドラゴンっぽく無い姿なんだもの……エレンだって、もう少しドラゴンっぽかったし」
『仕方が無かろう? 卵を食われてドラゴンハーフの中に閉じ込められて混ざっておったのだからな』
「食べられたのに……戻れたの?」
『十八年程前だったかの? いきなりドラゴンハーフの中におったはずが、分離させられての。なんとかココまで姿を戻したが、まだ時間が掛かりそうでこの宿屋で体を休めておったのだ』

 そんなことがあるんだ? 不思議なこともあるものだけど、少し引っ掛かった。
十八年前……青い髪の男、ドラゴンをも呪い殺す呪詛から解き放たれたドラゴンハーフ。
イルマールくんの従者のダリドアが、エデンの呪いから解放されて、ドラゴンハーフでは無くなり、ただの人間になった時期もそのぐらいでは無かっただろうか?

 もしかして、ダリドアの先祖が食べた卵は、アクエレインだった?
グリムレインは、ドラゴンハーフを見ても他のドラゴン達のように怒りはしなかった。
ただ、卵に孵るのに周りを注意深く見ていなかった同朋が悪いのだとか何とか言っていたような?
自分の弟竜のことを言っていたのだろうか……まぁ、グリムレインらしいといえばグリムレインらしいのだけどね。

「私達、水の塔は、アクエレイン様を歓迎します! 加護を頂くことは出来ないのでしょうか!?」
「わぁ!」

 ガバッと抱きつこうとしてきた水の塔の塔長から、ルーファスが私を抱いたまま空中へ舞い上がり、テーブルに足をつけてトンッと軽く水の塔の塔長の背中を足で押した。
派手に私達が今まで座って居た椅子に塔長が突っ込んでコケたけど、いきなり抱きついてこようとする方が悪い。

『そなた等では無理だの。兄者の君主にのみ、加護を与えておるからの』

 君主契約をしない限りは加護は貰えないからコレは仕方がないけど、水の塔の人達、私を見るんじゃありません!

『それに、この者に加護を与えただけで、もう力尽きた。暫く眠る』

 ふぁぁ~っと欠伸をしてアクエレインは普通の無機質なリボンのように私の髪に巻きついて動かなくなった。
なんという、無責任!? 

「水の塔は奥方を歓迎いたします!」
「いえ! 結構です! 遠慮します!!」
「オレの番に近付いたら、噛み殺すッ! グルルルル」

 私を抱きかかえてルーファスが水の塔に唸り声を上げていると、水の塔から警備兵がやってきて、橋から落ちた人が意識を取り戻し、話が出来るようになったと報告が入った。
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