黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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26章

コハルと花②

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 コハルが無意識化に人族だろうと、獣人だろうとお構いなしに狼に変化させてしまう能力が発現し、家族会議で『コハルに狼にされた場合は、家族の誰かに連絡してコハルが一人にならないように少し離れて様子を見ること』というアバウトな案を採用した。
だってね、他にどうしようもないのよ。
コハルを一人放置するわけにもいかないし……グリムレイン達ドラゴンなら大丈夫かと思ったら、氷の狼が耳を下げて『クゥーン』と情けない声を出していた。

 まぁ、今のところ十分くらいで元に戻る事が判明はしている。
コハルが笑っていると狼にされやすく、泣くと元に戻るので、コハルの感情に左右されている感じかな?
赤ちゃんの頃から魔法を使う子は感情に左右されて、魔法が出てしまうのと同じなので、コハルがコントロールできるようになるまではどうしようもない。

 リュエールが「ベネティクタ都市の教会で女神と話をつけた方が、早そうだけどね」と、言うが……あのイントネーションのおかしな女神オードリーは中々捕まらず、移動魔法を使ってはちょくちょく出向いて行っている。

「今日はルーファスとシュトラールが狼にされちゃったのね」

 二人は目を閉じて、小さく肩を落とす。
私がスクルードを連れて買い物に行っている間に起きたことの様で、会話カードでは『五分前』と時間を出している。あと五分は元に戻れないだろう。
コハルはスヤスヤとベビーベッドで寝ていて、無意識でやられてしまったようだ。

「ちちうー、しゅー、かあいいねー、かあいいねー」

 スクルードが二人を撫でながらはしゃいだ声を出していて、しばらくはスクルードの玩具にされる事だろう。

「それにしても、困ったわねぇ……日に日に狼にされる回数が、増えている気がするのよね」

 コハルに笑うなとも言えないし、泣かせておくわけにもいかないし、これがコハルの『特殊能力』だとしたら、なんだか、無感情な子に育てていくしかないとすれば、凄く可哀想になってしまう。
女神のせいだとは思っているけど、もし、女神のサービスがこれならとんだ悪魔である。
女神の名を返上してこいと言いたい。

「まぁ、コハルも寝ているから、スーちゃんをお願いね。私は台所に居ますから~」
「ははうー、ないなーい」
「はーい。行ってきますよー」

 笑顔のスクルードに笑顔を返して台所に行くと、買い物籠を漁っている不届き者が二人居る様だ。

「こーらー、ティル! エル! なにしてるの!」

 ビクッと肩を揺らして二人が顔を上げると、口にはお総菜屋で買ってきたコロッケを咥えている。
二人はモグモグと口を動かして、飲み込むと「母上お腹すいたー」と、言ってくる始末である。

「今、食べたでしょ! もう、冒険者カードの称号に『食いしん坊』って付いても知りませんよ!」
「大丈夫。『大喰らい』って称号からしか無いから、僕らはまだそこまで食べれない」
「第一、僕らは育ち盛りなんだから、食いしん坊のカテゴリーには入らないよ。普通だよ」

 体は大きくなっても、言う事とやる事は子供のままなのだから、困ったものである。
二人共、無事に冒険者試験を合格して冒険者になったものの、冬の間はどこも雪に閉ざされて立ち入れない為に、屋敷の中でゴロゴロしていたりする。

「ご飯はもう少し先だから、スーちゃんの相手でもしてなさい。お茶菓子はあげるから」
「やった! お茶菓子だ」
「スーの相手ねぇ……スー最近動きがいいから捕まえづらいんだよね」
「そりゃ、コハルにハイハイで追いかけ回されてるから、スーちゃんだって逃げ足が速くなるわよ。と、いうか、弟を追い回して苛めるんじゃありません!」
「わかってるよー」

 ティルナールとエルシオンがお茶菓子のお皿を持って台所から出て行き、これでようやくお邪魔虫が居なくなった。
ふっふっふっ……買い物のお楽しみの買い食いで揚げ菓子オマケに貰ったのを、こっそり食べちゃお。
買い物籠を漁ると、あったのは揚げ菓子の入った袋だけ……

「あの二人……私の揚げ菓子を~っ」

 食べ物の恨み、どうしてくれようッ!
ぐぬぬっと怒りながら、諦め半分でショボンと夕飯の準備を始めて、ニ十分くらいして可愛い小さな狼が足元に走り込んできた。

「あら、スーちゃんどうしたの?」
「アンッ! アンッ!」
「……もしかして、普通に狼にされちゃってる?」

 スクルードはまだ獣化しても小さいままだから判別がつきにくい。
スクルードを連れて大広間に行くと、ルーファスもシュトラールも狼のままで、ティルナールとエルシオンも狼にされていた。

「ウォン!」
「あ、はい。退避します」

 ルーファスに大広間から頭で押されて追い出され、台所に戻るとグリムレインとアクエレインが台所に屈みこんでいた。
またつまみ食いの不届き者かしら? と、近付くと二人は手に蝶を捕まえていた。

「あっ、女神の所の蝶!?」
「むっ、嫁よ。こやつをどうする?」
「嫁御寮、この精霊から『祝福の粉』を抜き取るか?」
「祝福の粉? そんな物はいいから、女神オードリーに、うちのコハルに変な能力を付けたのを消しなさいと、伝えて貰って」
「嫁が女神の所に会いに来いと騒いでおるが……羽根をもぐか?」
「無礼な精霊だの。やはり、祝福の粉を抜き取って、飛べなくさせよう」
「あー、こらこら。残酷な事言わないの。会いに行っても出てこないから、伝言を頼んでるのよ」

 私も蝶を少し睨みつけて文句を言ってみる。
白い物がヒラヒラと待ったと思ったら、ドサーッと上から白い花が降ってきて、台所は花に埋もれた。
火をつけたままのお鍋の火が花を燃やすわ、消そうとしてコンロは水浸しになるわ、花粉で他の料理も駄目になるわ……今日は、食べ物の恨みを溜めこさえる日なのかな? 
これも含めて女神には物を申したい! 我が家に変な事を持ち込まないで欲しいっ!!
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