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ホテル
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グラウンドディファホテルはホテルの上にプールがある高級リゾートのようなホテルで、四十高層の若者アルファ向きのデートスポットのような場所だ。
こういう時、自分の平凡な顔がとても役に立つ。
オメガ特有の綺麗さも持ち合あせてはいない為に、アルファは俺がオメガだとは思わないだろう。
宅配人のような恰好をしているのもあって、これならバッチリ潜入できるだろう。
「すみません。三〇〇二号室にビニーっていう人が、部屋を取っていませんか? 荷物を届けに来たんですけど、ホテルの三〇〇二号室としか聞いてなくて……」
先ずはホテルのフロントで聞き出してみる。
怪しまれないように、プレゼント箱を手に持っているのは、視覚で宅配の人間だと思わせる先入観と警戒心を解くためだ。
「少々お待ちください。確認を取らせていただきますので」
ホテルのフロント係りはパソコンを使い調べてくれる。
係りの女性は「しばらくお待ちください」と、電話をかけ始めた。
電話の相手は直ぐに出たらしく、女性は「お届け物を宅配業者の方がお持ちです」と、簡単に俺の事を説明した。
どうやら、ビニーの名前で誰かは居るらしい。
ビニーがプレゼントを渡すはずだった人物か、それとも別口か……
少しの間女性との電話のやり取りの後、「お部屋で直接、お受け取りになるそうです」と言った。
「ありがとうございます」
礼だけ言って、エレベーターに乗り込み、念のためのスタンガンとメールでシズクにホテルの部屋に入る旨を知らせておく。
俺に何かあれば、シズクがきっと動くだろう。それか、俺を切り離してシズクだけでも逃げていて欲しいという昔からの約束だ。
シズクは自分に何かあれば、俺には逃げろと言うし、俺もそれは変わらない。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」
緊張しているせいか、やけに体が熱く感じる。
こうした仕事は初めてでは無いのだし、落ち着いていこう。
帽子を目深にかぶり、唇の上を舐めて一息つく。
三〇〇二号室のドアを見上げ、ドアのチャイムを鳴らす。
こうしたチャイムがあるホテルというのは、部屋が大きい為にドアのノックでは聞こえない為の物だ。
チャイムがある事から、それなりの広さがあるのだろう。
「誰だ?」
少しすごみのある声、これは脅しを掛けるような悪意のある声だ。
俺達オメガは悪意に晒されて生きてきているのだから、このぐらいは分かる。そして、何より、俺は耳が良い方だ。
これは宅配業者を装って、逃げてしまうのが無難だろう。
「ご注文の宅配ですが、ビッキーさんでお間違えないですか?」
「……」
ボソボソと何か中で話すような声が微かにしている。
それにしても、空調の設定が高いのか妙に暑い。
「荷物の中身を、そこで開けて見せろ」
「あの、ビッキーさんでお間違えは無いですか?」
「そうだ」
似た名前で女性っぽい名前にして、こっちは宅配の間違いを装うつもりが、疑い深いやつのようだ。
仕方がない。エレベーターは幸い、まだこの階だ。逃げられる余裕はある。
やけに首の後ろもチリチリするし、ヤバいヤツかもしれない。
ゆっくりと後ろに後退りながらプレゼント箱を開け、ドアスコープ目掛けてプレゼント箱を投げつけようと振りかぶったところで、横から体当たりをくらった。
「うぁっ!」
「伏せておけ!」
一瞬の事で目を白黒させると、俺の上に誰かが覆いかぶさっていた。
銃声のような音が連発し、ドアが内側から破壊され吹き飛んだ。
「制圧しろ!」
「了解!」
俺の頭の上で渋い声が響き、数人の男の声と足音、そして小さな悲鳴が聞こえた。
何なんだ? 覆いかぶさっている人物を見上げると、日本人ではない彫りの深い顔立ちをした初老というには少し若そうだが、白髪交じりの男と目が合った。
こういう時、自分の平凡な顔がとても役に立つ。
オメガ特有の綺麗さも持ち合あせてはいない為に、アルファは俺がオメガだとは思わないだろう。
宅配人のような恰好をしているのもあって、これならバッチリ潜入できるだろう。
「すみません。三〇〇二号室にビニーっていう人が、部屋を取っていませんか? 荷物を届けに来たんですけど、ホテルの三〇〇二号室としか聞いてなくて……」
先ずはホテルのフロントで聞き出してみる。
怪しまれないように、プレゼント箱を手に持っているのは、視覚で宅配の人間だと思わせる先入観と警戒心を解くためだ。
「少々お待ちください。確認を取らせていただきますので」
ホテルのフロント係りはパソコンを使い調べてくれる。
係りの女性は「しばらくお待ちください」と、電話をかけ始めた。
電話の相手は直ぐに出たらしく、女性は「お届け物を宅配業者の方がお持ちです」と、簡単に俺の事を説明した。
どうやら、ビニーの名前で誰かは居るらしい。
ビニーがプレゼントを渡すはずだった人物か、それとも別口か……
少しの間女性との電話のやり取りの後、「お部屋で直接、お受け取りになるそうです」と言った。
「ありがとうございます」
礼だけ言って、エレベーターに乗り込み、念のためのスタンガンとメールでシズクにホテルの部屋に入る旨を知らせておく。
俺に何かあれば、シズクがきっと動くだろう。それか、俺を切り離してシズクだけでも逃げていて欲しいという昔からの約束だ。
シズクは自分に何かあれば、俺には逃げろと言うし、俺もそれは変わらない。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」
緊張しているせいか、やけに体が熱く感じる。
こうした仕事は初めてでは無いのだし、落ち着いていこう。
帽子を目深にかぶり、唇の上を舐めて一息つく。
三〇〇二号室のドアを見上げ、ドアのチャイムを鳴らす。
こうしたチャイムがあるホテルというのは、部屋が大きい為にドアのノックでは聞こえない為の物だ。
チャイムがある事から、それなりの広さがあるのだろう。
「誰だ?」
少しすごみのある声、これは脅しを掛けるような悪意のある声だ。
俺達オメガは悪意に晒されて生きてきているのだから、このぐらいは分かる。そして、何より、俺は耳が良い方だ。
これは宅配業者を装って、逃げてしまうのが無難だろう。
「ご注文の宅配ですが、ビッキーさんでお間違えないですか?」
「……」
ボソボソと何か中で話すような声が微かにしている。
それにしても、空調の設定が高いのか妙に暑い。
「荷物の中身を、そこで開けて見せろ」
「あの、ビッキーさんでお間違えは無いですか?」
「そうだ」
似た名前で女性っぽい名前にして、こっちは宅配の間違いを装うつもりが、疑い深いやつのようだ。
仕方がない。エレベーターは幸い、まだこの階だ。逃げられる余裕はある。
やけに首の後ろもチリチリするし、ヤバいヤツかもしれない。
ゆっくりと後ろに後退りながらプレゼント箱を開け、ドアスコープ目掛けてプレゼント箱を投げつけようと振りかぶったところで、横から体当たりをくらった。
「うぁっ!」
「伏せておけ!」
一瞬の事で目を白黒させると、俺の上に誰かが覆いかぶさっていた。
銃声のような音が連発し、ドアが内側から破壊され吹き飛んだ。
「制圧しろ!」
「了解!」
俺の頭の上で渋い声が響き、数人の男の声と足音、そして小さな悲鳴が聞こえた。
何なんだ? 覆いかぶさっている人物を見上げると、日本人ではない彫りの深い顔立ちをした初老というには少し若そうだが、白髪交じりの男と目が合った。
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