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KからWへ
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ぼんやりとササメの事を考えている間に、メモの解析が終わった。
メモには『KからWへ愛をこめて。プレゼントは一番高いホテルに用意したよ。部屋番号は三〇〇二号室』と書いてあった。
「一番高いホテル……ここら辺で高いホテルは、グラウンドディファホテルにセレニティホテル辺りか?」
パソコンで遺体のあった場所から、この近辺までの値段の高いホテルを割り出してみたが、結局この二つのホテルは同額といったところだ。
すでに死んでいると公式に軍人記録からは抹消済みの男ではあるが、こうして誰かに物を贈ろうとしていたのならば、その誰かに会って待ち人は亡くなったことを言って、遺体を引き取ってもらおう。
金にならない遺体に情報は、さっさと手放すに限る。
再び地下へ行き、シズクに声を掛ける。
「シズク。仏さんの身元直ぐに分かったんだけど?」
「だろうね。僕でもあのドッグタグ見ればわかるしね。ただ、仏の物か仏を殺した奴の物かは不明だよ」
シズクは遺体にエバーミングとコバーミングの最中で、まぁ要は死体を防腐処理して、生前に近い状態にしているということだけど、シズクは手先が器用なのか男はただ眠っているだけのように見える。
「この仏さん、いや、ビニー・K・カークランドさんだよ。軍の除隊記録に顔写真もあったし、間違いないよ」
「そっか。なら、ビニーはどう? お金になりそうなの?」
「どうだろうな。ビニーは既に三年前に死亡で登録されているよ」
「じゃあ、このビニーは双子かもよ?」
「あー、ちょい待って。家族資料見てみるから」
先程、プリントアウトした軍部の情報資料をめくり、家族構成を見る。
ビニー・K・カークランドの軍に残っている記録には、兄が一人居るようだが、兄はオメガ……
兄がオメガで弟がアルファでは、家族仲はどうだったのか少し考えものだ。
家族内でもオメガというだけで迫害される人は居るものだから、少しだけ兄に同情しそうだ。
「シズク、バースの方は調べた?」
「調べたよ。アルファだった」
「じゃあ、本人だ。ビニーの兄はオメガだからね」
「あー、そう。なら、ビニーって事で」
お互いに兄への同情で肩をすくませる。
オメガ同士、生きにくい世の中なのは確かだから通じるものがあるのだ。
「それでなんだけど、ビニーがホテルにWってイニシャルの人に、プレゼントを用意してたみたいなんだけどさ、情報になるかどうか俺は、探ってみようと思うんだけど、シズクはどう思う?」
「いいんじゃない? まぁ、プレゼント相手にビニーが殺されたって事じゃなきゃいいけどね」
「じゃあ、俺はグランドディファホテルとセレニティホテルの二ヵ所を回ってくるよ。留守番頼んだ」
「んー。気を付けてねー」
ヒラヒラとシズクが手を振り、こちらを見ないままビニーの肌にスプレーをしている。
相変わらず兄貴分の俺よりも、目の前の事の方が大事な奴だ。
メモには『KからWへ愛をこめて。プレゼントは一番高いホテルに用意したよ。部屋番号は三〇〇二号室』と書いてあった。
「一番高いホテル……ここら辺で高いホテルは、グラウンドディファホテルにセレニティホテル辺りか?」
パソコンで遺体のあった場所から、この近辺までの値段の高いホテルを割り出してみたが、結局この二つのホテルは同額といったところだ。
すでに死んでいると公式に軍人記録からは抹消済みの男ではあるが、こうして誰かに物を贈ろうとしていたのならば、その誰かに会って待ち人は亡くなったことを言って、遺体を引き取ってもらおう。
金にならない遺体に情報は、さっさと手放すに限る。
再び地下へ行き、シズクに声を掛ける。
「シズク。仏さんの身元直ぐに分かったんだけど?」
「だろうね。僕でもあのドッグタグ見ればわかるしね。ただ、仏の物か仏を殺した奴の物かは不明だよ」
シズクは遺体にエバーミングとコバーミングの最中で、まぁ要は死体を防腐処理して、生前に近い状態にしているということだけど、シズクは手先が器用なのか男はただ眠っているだけのように見える。
「この仏さん、いや、ビニー・K・カークランドさんだよ。軍の除隊記録に顔写真もあったし、間違いないよ」
「そっか。なら、ビニーはどう? お金になりそうなの?」
「どうだろうな。ビニーは既に三年前に死亡で登録されているよ」
「じゃあ、このビニーは双子かもよ?」
「あー、ちょい待って。家族資料見てみるから」
先程、プリントアウトした軍部の情報資料をめくり、家族構成を見る。
ビニー・K・カークランドの軍に残っている記録には、兄が一人居るようだが、兄はオメガ……
兄がオメガで弟がアルファでは、家族仲はどうだったのか少し考えものだ。
家族内でもオメガというだけで迫害される人は居るものだから、少しだけ兄に同情しそうだ。
「シズク、バースの方は調べた?」
「調べたよ。アルファだった」
「じゃあ、本人だ。ビニーの兄はオメガだからね」
「あー、そう。なら、ビニーって事で」
お互いに兄への同情で肩をすくませる。
オメガ同士、生きにくい世の中なのは確かだから通じるものがあるのだ。
「それでなんだけど、ビニーがホテルにWってイニシャルの人に、プレゼントを用意してたみたいなんだけどさ、情報になるかどうか俺は、探ってみようと思うんだけど、シズクはどう思う?」
「いいんじゃない? まぁ、プレゼント相手にビニーが殺されたって事じゃなきゃいいけどね」
「じゃあ、俺はグランドディファホテルとセレニティホテルの二ヵ所を回ってくるよ。留守番頼んだ」
「んー。気を付けてねー」
ヒラヒラとシズクが手を振り、こちらを見ないままビニーの肌にスプレーをしている。
相変わらず兄貴分の俺よりも、目の前の事の方が大事な奴だ。
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