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前金オプション
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ムスッとした俺を横に立たせ、メイデルは部下を使ってシズクを探させ始めた。
シズクを救い出すことに出し惜しみはしないとは、言った。確かに言ったけど……番にして良いなんて言っていない。
首を噛んで番にする事が前金だなんて、そんなオプションは俺は付けてない。
「将校。発信元の範囲はこの辺ですが……」
部下の一人がタブレットで地図を出し、俺もメイデルの横から地図を覗き込む。
昨日のホテルと同じ場所付近では無いだろうか?
「グラウンドディファホテル……しかし、あそこには何も無かったはずだが」
「部隊を半分突入させますか?」
「そうだな。半分は、昨日の奴等から吐かせろ! 同じ場所なら関わりも同じかもしれないからな」
「了解!」
部下の人は俺をチラッとだけ見て足早に出て行った。
ああいう、侮蔑の目には慣れている。
彼等はアルファか優秀なベータの中から選ばれたエリート達だから、オメガを救い出せという命令に反発もあるのだろう。
「サキさん。まだ怒っていますか?」
「別に、ただ……人の首に噛みつくとか、承諾を得ろよ」
「子供を作る。イコール、番にしていいという事でしょう?」
「違うだろ? 子供を産むだけ。そういうのを商売にしているオメガもいるんだから、オメガが子供を産んでやるって承諾しても、ほいほい噛みつくなよな」
地位の低いオメガが出来る商売の中で、アルファの子供が生まれたら一千万円、オメガだと百万円程で取引される商売もある。
第一、首筋の後ろを噛まれて番にされると、番のアルファが居ないと発情期の時に情緒不安定になるという、最悪さがプラスされる。
だから、首の後ろを噛んでの番というのは、一生傍にいる奴等だけのものでしかない。
それなのに__なんで、メイデルが悲痛そうな顔をするのか?
むしろ、これから先、発情期の度に精神的に落ち込みそうな俺の方が悲痛な顔をしたいぐらいだ。
「サキさん、私が軽々しく番にしたと、思っているんですか?」
「さぁ、どうだろうな。俺は、育ての親のアルファ以外、アルファを信じていない」
「……なら、私が、私自身でサキさんに信じて貰えるように、努力しましょう」
メイデルが俺の手を取って、指先を唇に当てる。
どこの騎士だ? と、ツッコミたいが……胸の奥がザワザワと騒がしい。
西洋人はこれだから、困る。
目をジッと見つめ返されて、目を逸らすとメイデルが「日本人は奥ゆかしい」と、揶揄われているのか本気なのか分からなくなる。
「それにしても、ビニーが何か残していてくれたら、もう少し楽に進められたのですが」
「あっ。そういえば、メモがあったな」
ズボンの中から財布を取り出す。
実は遺体の遺留品から出たメモを財布の中にたたんで入れていたのをスッカリ忘れていた。
メイデルにメモを手渡すと、メイデルは食い入るようにメモを見る。
胸ポケットから小型の通信機器を出すと、それをインカムのように耳に掛ける。
「私だ。作戦変更だ。奴等の探し物がわかった」
俺にはサッパリわからなかったメモをメイデルは理解したようで、部下に指示を出していく。
やはりアルファは頭の出来が違うようだ。
シズクを救い出すことに出し惜しみはしないとは、言った。確かに言ったけど……番にして良いなんて言っていない。
首を噛んで番にする事が前金だなんて、そんなオプションは俺は付けてない。
「将校。発信元の範囲はこの辺ですが……」
部下の一人がタブレットで地図を出し、俺もメイデルの横から地図を覗き込む。
昨日のホテルと同じ場所付近では無いだろうか?
「グラウンドディファホテル……しかし、あそこには何も無かったはずだが」
「部隊を半分突入させますか?」
「そうだな。半分は、昨日の奴等から吐かせろ! 同じ場所なら関わりも同じかもしれないからな」
「了解!」
部下の人は俺をチラッとだけ見て足早に出て行った。
ああいう、侮蔑の目には慣れている。
彼等はアルファか優秀なベータの中から選ばれたエリート達だから、オメガを救い出せという命令に反発もあるのだろう。
「サキさん。まだ怒っていますか?」
「別に、ただ……人の首に噛みつくとか、承諾を得ろよ」
「子供を作る。イコール、番にしていいという事でしょう?」
「違うだろ? 子供を産むだけ。そういうのを商売にしているオメガもいるんだから、オメガが子供を産んでやるって承諾しても、ほいほい噛みつくなよな」
地位の低いオメガが出来る商売の中で、アルファの子供が生まれたら一千万円、オメガだと百万円程で取引される商売もある。
第一、首筋の後ろを噛まれて番にされると、番のアルファが居ないと発情期の時に情緒不安定になるという、最悪さがプラスされる。
だから、首の後ろを噛んでの番というのは、一生傍にいる奴等だけのものでしかない。
それなのに__なんで、メイデルが悲痛そうな顔をするのか?
むしろ、これから先、発情期の度に精神的に落ち込みそうな俺の方が悲痛な顔をしたいぐらいだ。
「サキさん、私が軽々しく番にしたと、思っているんですか?」
「さぁ、どうだろうな。俺は、育ての親のアルファ以外、アルファを信じていない」
「……なら、私が、私自身でサキさんに信じて貰えるように、努力しましょう」
メイデルが俺の手を取って、指先を唇に当てる。
どこの騎士だ? と、ツッコミたいが……胸の奥がザワザワと騒がしい。
西洋人はこれだから、困る。
目をジッと見つめ返されて、目を逸らすとメイデルが「日本人は奥ゆかしい」と、揶揄われているのか本気なのか分からなくなる。
「それにしても、ビニーが何か残していてくれたら、もう少し楽に進められたのですが」
「あっ。そういえば、メモがあったな」
ズボンの中から財布を取り出す。
実は遺体の遺留品から出たメモを財布の中にたたんで入れていたのをスッカリ忘れていた。
メイデルにメモを手渡すと、メイデルは食い入るようにメモを見る。
胸ポケットから小型の通信機器を出すと、それをインカムのように耳に掛ける。
「私だ。作戦変更だ。奴等の探し物がわかった」
俺にはサッパリわからなかったメモをメイデルは理解したようで、部下に指示を出していく。
やはりアルファは頭の出来が違うようだ。
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