17 / 58
暗号
しおりを挟む
メモが気になった俺は、何が分かったのか聞くとメイデルは唇の上に指を立てる。
教えてくれないという事だろうか?
トントンと指で俺の唇を叩いて、自分の唇を突き出す。
「えーと……」
「おねだりは、キスが妥当だと思います」
「いやいや、待て。なんでそうなる?」
「サキさん。情報でお金を貰っているのなら、対価は必要でしょう?」
確かにそう言われたら、そうではあるが……でも、キスの必要性はあるのか?
ジト目でメイデルを見ると、笑顔で顔を近付けてくる。
良いように流されている気がしないでもないが、情報屋としては、情報に対価は必要だとは分かっている。
分かっているけれど……番にされた相手に、自分からとかハードルが高い。
「って、俺のメモのおかげじゃないっけ?」
「おや? そこに気付いてしまいましたか」
「お前ね……んっぐ」
だから、人の話の途中で唇を塞いでくるのを止めろと言いたい。
逃げようと頭を動かせば、後頭部を手で押さえつけられて逃げられない。
強引すぎて、翻弄されいる気がする。
まぁ、抑制剤を飲んでいるから、体が誘惑香を出したりはしないはず……なんだけど、体が熱い。
体の奥が疼いて熱をもっていく感じがする。
番にされるってこういう作用もあるんだろうか?
「これぐらいで、いいですね」
「なにが……?」
「情報の対価です」
なるほど……って、納得しちゃいけない俺。しっかりしろ。
腰から下が力が入らない。メイデルに支えられてテーブルの上に座り、そのままメイデルの肩に頭を寄りかからせてもらう。
「KからWへ愛をこめて。は、この情報端末のローマ字の配列です。KのキーからWまでの文字に、ローマ字のIを加えて言葉を作っていきます」
メイデルが長方形の小さな情報端末を出し、指でキーの配列にIを足して打ち出していく。
KITIWIという言葉になっていない文字に、首を傾げる。
「KITIーW1。最後はIではなく数字の1にすると、基地のWはwestで西。1は倉庫の番号になります」
「なんで日本語読み?」
「それはビニーが本当に知らせたかった相手は、日本人だからでしょうね」
「へぇー……って、いうか。メイデルも日本語ペラペラだよな」
「他にも色々喋れますよ。どこの国にも対応できるように、頭に叩き込んでいますから」
犯罪組織を壊滅させる組織を早期引退したら、翻訳家で生きていけそうだな。通訳とか……なんだか、南の国でアロハシャツでも着てツアーの説明でもしてそうなイメージはあるけど。
「んで、基地っていうのは何所に? っと」
また唇を奪われては堪らないと、手で口をガードする。
笑顔で固まったメイデルに、やっぱり情報料を取ろうとしていたなとこちらも笑顔で返しておく。
「仕方がないですね。チャーミングな笑顔で、対価としておきましょうか」
何も聞かなかったことにしておこう。
地味なオメガの自覚はある分、冗談なのか本気なのか……まぁ、冗談なのは分かっている。
それでも、照れてしまいそうになる自分が憎いッ! 絆されたら、足元を掬われる。
「プレゼントは隠語。これに関しては、実際に何を意味しているのかは、見て確認するしかないですね。一番高いホテルという事は、セキュリティが高い所にあるという事でしょう。三〇〇二号室というのは暗証キーだと思います」
「でも基地が何処にあるかは分から無くね?」
「それを言うには、唇だけでは対価が足りませんね」
「なんで、直ぐに人の貞操を狙おうとするんだよ!」
メイデルはアルファ用の抑制剤を使ったのに、欲望が俺に向くのはおかしくないか?
これが、本当に運命の番の効果……とかなら、メイデルは、俺に惹かれてくれていると思えるんだけどな。
確証の無いものを見極めるのは、難しい。
「サキさん、今日は抑制剤を飲みましたか?」
「一応、飲んだ」
「基地の場所、知りたいですか?」
顎を指で上に持ち上げられて、メイデルの目に何かゾックりとしたものを感じて、生唾を呑み込む。
情報料は、体……だろうか? でも、シズクの為に出し惜しみをしている場合でもない。
抑制剤が効いている間は、妊娠はしにくい。百パーセントでは無いから、無いとは言えない。
「……シズクが、そこに居る、なら……」
「彼は、居ないでしょうね」
「じゃあ、行く必要はあるのか?」
「手掛かりにはなりますよ」
どうしますか? と目で聞かれて、頷いた。
教えてくれないという事だろうか?
トントンと指で俺の唇を叩いて、自分の唇を突き出す。
「えーと……」
「おねだりは、キスが妥当だと思います」
「いやいや、待て。なんでそうなる?」
「サキさん。情報でお金を貰っているのなら、対価は必要でしょう?」
確かにそう言われたら、そうではあるが……でも、キスの必要性はあるのか?
ジト目でメイデルを見ると、笑顔で顔を近付けてくる。
良いように流されている気がしないでもないが、情報屋としては、情報に対価は必要だとは分かっている。
分かっているけれど……番にされた相手に、自分からとかハードルが高い。
「って、俺のメモのおかげじゃないっけ?」
「おや? そこに気付いてしまいましたか」
「お前ね……んっぐ」
だから、人の話の途中で唇を塞いでくるのを止めろと言いたい。
逃げようと頭を動かせば、後頭部を手で押さえつけられて逃げられない。
強引すぎて、翻弄されいる気がする。
まぁ、抑制剤を飲んでいるから、体が誘惑香を出したりはしないはず……なんだけど、体が熱い。
体の奥が疼いて熱をもっていく感じがする。
番にされるってこういう作用もあるんだろうか?
「これぐらいで、いいですね」
「なにが……?」
「情報の対価です」
なるほど……って、納得しちゃいけない俺。しっかりしろ。
腰から下が力が入らない。メイデルに支えられてテーブルの上に座り、そのままメイデルの肩に頭を寄りかからせてもらう。
「KからWへ愛をこめて。は、この情報端末のローマ字の配列です。KのキーからWまでの文字に、ローマ字のIを加えて言葉を作っていきます」
メイデルが長方形の小さな情報端末を出し、指でキーの配列にIを足して打ち出していく。
KITIWIという言葉になっていない文字に、首を傾げる。
「KITIーW1。最後はIではなく数字の1にすると、基地のWはwestで西。1は倉庫の番号になります」
「なんで日本語読み?」
「それはビニーが本当に知らせたかった相手は、日本人だからでしょうね」
「へぇー……って、いうか。メイデルも日本語ペラペラだよな」
「他にも色々喋れますよ。どこの国にも対応できるように、頭に叩き込んでいますから」
犯罪組織を壊滅させる組織を早期引退したら、翻訳家で生きていけそうだな。通訳とか……なんだか、南の国でアロハシャツでも着てツアーの説明でもしてそうなイメージはあるけど。
「んで、基地っていうのは何所に? っと」
また唇を奪われては堪らないと、手で口をガードする。
笑顔で固まったメイデルに、やっぱり情報料を取ろうとしていたなとこちらも笑顔で返しておく。
「仕方がないですね。チャーミングな笑顔で、対価としておきましょうか」
何も聞かなかったことにしておこう。
地味なオメガの自覚はある分、冗談なのか本気なのか……まぁ、冗談なのは分かっている。
それでも、照れてしまいそうになる自分が憎いッ! 絆されたら、足元を掬われる。
「プレゼントは隠語。これに関しては、実際に何を意味しているのかは、見て確認するしかないですね。一番高いホテルという事は、セキュリティが高い所にあるという事でしょう。三〇〇二号室というのは暗証キーだと思います」
「でも基地が何処にあるかは分から無くね?」
「それを言うには、唇だけでは対価が足りませんね」
「なんで、直ぐに人の貞操を狙おうとするんだよ!」
メイデルはアルファ用の抑制剤を使ったのに、欲望が俺に向くのはおかしくないか?
これが、本当に運命の番の効果……とかなら、メイデルは、俺に惹かれてくれていると思えるんだけどな。
確証の無いものを見極めるのは、難しい。
「サキさん、今日は抑制剤を飲みましたか?」
「一応、飲んだ」
「基地の場所、知りたいですか?」
顎を指で上に持ち上げられて、メイデルの目に何かゾックりとしたものを感じて、生唾を呑み込む。
情報料は、体……だろうか? でも、シズクの為に出し惜しみをしている場合でもない。
抑制剤が効いている間は、妊娠はしにくい。百パーセントでは無いから、無いとは言えない。
「……シズクが、そこに居る、なら……」
「彼は、居ないでしょうね」
「じゃあ、行く必要はあるのか?」
「手掛かりにはなりますよ」
どうしますか? と目で聞かれて、頷いた。
1
あなたにおすすめの小説
氷の支配者と偽りのベータ。過労で倒れたら冷徹上司(銀狼)に拾われ、極上の溺愛生活が始まりました。
水凪しおん
BL
オメガであることを隠し、メガバンクで身を粉にして働く、水瀬湊。
※この作品には、性的描写の表現が含まれています。18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。
過労と理不尽な扱いで、心身ともに限界を迎えた夜、彼を救ったのは、冷徹で知られる超エリートα、橘蓮だった。
「君はもう、頑張らなくていい」
――それは、運命の番との出会い。
圧倒的な庇護と、独占欲に戸惑いながらも、湊の凍てついた心は、次第に溶かされていく。
理不尽な会社への華麗なる逆転劇と、極上に甘いオメガバース・オフィスラブ!
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
こじらせΩのふつうの婚活
深山恐竜
BL
宮間裕貴はΩとして生まれたが、Ωとしての生き方を受け入れられずにいた。
彼はヒートがないのをいいことに、ふつうのβと同じように大学へ行き、就職もした。
しかし、ある日ヒートがやってきてしまい、ふつうの生活がままならなくなってしまう。
裕貴は平穏な生活を取り戻すために婚活を始めるのだが、こじらせてる彼はなかなかうまくいかなくて…。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
金色の恋と愛とが降ってくる
鳩かなこ
BL
もう18歳になるオメガなのに、鶯原あゆたはまだ発情期の来ていない。
引き取られた富豪のアルファ家系の梅渓家で
オメガらしくないあゆたは厄介者扱いされている。
二学期の初めのある日、委員長を務める美化委員会に
転校生だというアルファの一年生・八月一日宮が参加してくれることに。
初のアルファの後輩は初日に遅刻。
やっと顔を出した八月一日宮と出会い頭にぶつかって、あゆたは足に怪我をしてしまう。
転校してきた訳アリ? 一年生のアルファ×幸薄い自覚のない未成熟のオメガのマイペース初恋物語。
オメガバースの世界観ですが、オメガへの差別が社会からなくなりつつある現代が舞台です。
途中主人公がちょっと不憫です。
性描写のあるお話にはタイトルに「*」がついてます。
【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話
降魔 鬼灯
BL
ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。
両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。
しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。
コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる