狼兵は運命の番を逃がさない

ろいず

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独り身 ※

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 狭い蜜路を穿つ剛直に気持ち良さと安心感、そしてこの人は自分のものなのだと思ってしまう。
 本当はこんなことを思うなんて、駄目なことも理解してる。
 発情して気持ちが昂っているだけ。番だから求めてしまうだけで、メイデルは俺のものにはならない。

「……っ、サキさん、きもち、いい」
「ん、おれも……すごく、きもちいい……っ、ん、ん」

 浴室に肌のぶつかり合う音に、興奮した声と息遣いが響く。
 吐精を中に感じて満たされる気持ちと体から、ズロッとメイデルの雄竿が出て行くと、急に突き放された気がして胸がチクりと痛む。
 シャワーで体を洗って、股の間から白い体液が流れていく。
 
「……勿体ない」
「サキさん、発情期はまだ数日残っているのでしょう?」
「あ、うん」
「今日は抑制剤がまだ体に残っているでしょうから、子供は出来にくいかもしれません。程々にしておきましょうね」
「そう、だな……やったら、少し落ち着いたしな」
 
 やっぱり、メイデルが欲しいのは子供で、俺なんかがアルファの番になれるわけがない。
 メイデルにバスタオルで包まれて頭を拭かれ、少しだけ涙が出たのは感情が発情期で不安定なだけだ。
 きっと終われば、いつも通りなんてことは無いはず。
 シズクはメイデルが俺と一緒に暮らすとか色々言っていたけど、奥さんの所に子供を連れて帰るだろうから、俺が子供を産んだら、きっと会いにも来てくれなくなる。
 それは寂しいだろうな……でも、自分の容姿は自分が一番分かっている。
 メイデルの背中に手を伸ばそうとして、もう少しの所で引っ込めるとメイデルが振り返った。

「サキさん。体は大丈夫ですか?」
「平気。少し足に力が入らないけど」
「では、少し失礼しますよ」

 バスタオルごと抱き上げられて目を丸くすると、メイデルは人懐っこい笑顔を向けてキスをしてきた。
 いつかは突き放される関係でも、今のこの笑顔とキスだけは、俺に向けられたものだ。
 本当は、誰にも渡したくない。
 愛人でも何でもいいから、ずっと一緒に居られたらいいのに……
 唇が離れると、メイデルが俺を抱きかかえ直す。
 
「サキさん、ご飯は食べましたか? 随分と軽いですね」
「あー……そういえば、食べてる途中で警察に連れていかれたから、三口くらいしか食べてない。まぁ、元々発情期中は食事なんて一食くらいで、ずっと寝ているだけだから……」

 首をコテンと力なく傾げ、今は喉が渇いているから食べ物より飲み物だなーと、ぼんやりと考えながらリビングのソファの上にそっと下ろされた。

「何か用意しますね」
「別に気にしなくてもいいけど?」
「駄目です。前も思いましたし、今も思っていますが、サキさんは食が細すぎですよ」
「うーん……発情期中だからだよ」
「それでも、軽すぎます」

 メイベルの食べる量を、俺に当てはめないで欲しいところだけどな。
 冷蔵庫を漁り、キッチンからは何やら物音が色々としているけど、体が疲れてウトウトしつつ食事が出てくるのを待った。

「冷凍食品ばかりですけど、食べましょうか」
「はーい」

 物の見事に、冷凍食品と目玉焼きやソーセージなど簡単な物だけだ。
 メイデルが申し訳なさそうな顔をしているが、メイデルのせいではない。
 我が家の冷蔵庫にある物は、シズクが発情期中の俺に合わせた物しか買っていないのは、俺も知っていたしね。

「今回は大変だったようですね」
「あ、まぁ……俺が余計なことに首を突っ込んだみたいで、ごめん」
「直ぐに交渉の場を作って、サキさんのデリケートな時期を邪魔した事を、後悔させなければいけませんね」
「まぁ、俺は犯罪歴が付こうとどうなろうと、良いんだけどね。元々、日の当たる場所の住民でもないし」

 メイデルは納得のいかない顔をしていたけど、美羽さえ見つかれば、それほどの大きな罪には問われないだろうし、結婚や将来に関して、俺に犯罪歴があろうとなかろうと変わる事は無い。
 こういう時、独り身は何とでもなることが身軽でもある。
 子供を産んでも、メイデルが連れて行くのならば、親の犯罪歴は関係ないだろうし、メイデルと結婚するわけでもないから、大丈夫だ。
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