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美羽の選択
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頭痛と重い体を引きずるようにしてリビングへ向かうと、メイデルが足を組んで椅子に座りテレビを見ながらコーヒーを飲んでいた。
俺の気配に気付くと顔をこちらに向けて微笑んで挨拶をしてくる。
「おはようございます。サキさん」
「ぉ……んっ、ケホッ」
「ああ、可哀想に……喉を痛めているようですね」
誰のせいだと思っているのやら……ジロッと睨みつければ、挨拶のようにキスをされて抱き寄せられた。
身じろぐと、頬や首筋にもキスをしてきて、本当に朝っぱらから元気な……と、テレビに目をやれば、十四時四十分の数字に、朝では無い事に気付く。
メイデルに椅子に座らされ、大人しくテレビを見ていると、メイデルが冷蔵庫からスポーツ飲料を持ってきた。
蓋を開けて口を付けると、一気に流し込めてしまったから、喉が渇いていたのだと思う。
「はぁー……なんか、生き返った……」
「三日間しどうしの上、一日半寝ていましたからね」
「へっ!? 三日!?」
メイデルがテレビのリモコンで西暦から曜日まで表示できるように切り替え、流石に俺も納得した。
結構な時間していたとは思ったけど、まさかの三日間……道理で、頭痛に体の痛み、そして気怠さがあるわけだ。
「あ、じゃあ発情期、終わってる……」
「ふふっ、サキさん。体の方はどうです?」
「……すっごい、怠い。泥のように眠りたい……」
「寝ても良いですが、流石に食事をとらないと駄目ですよ」
本当に、誰のせいなんだか……
メイデルは俺の頭にキスを落としてから、キッチンへと行ってしまい、何かを作り始めている。
テーブルに頬をつけて行儀悪くテレビのニュースを見ていると、蓬生グループの社長が逮捕されていた。
「メイデル! 美羽の父親が逮捕されているんだけど!」
「ええ。彼女の選択です。父親が自分をゲームの負けた代償とした事を告発し、他にも悪どい裏取引をしている動画も証拠として提出しましたからね」
「じゃあ、美羽は? 美羽はどうなった!?」
父親が逮捕されても、婚約者たちが居たはずだ。
美羽は無事保護されているだろうか……それだけが心配だ。
たった十六歳の女の子が、婚約者のアルファ三人相手に立ち回る事が出来るかどうか……
「安心してください。ミウは、ちゃんと法の手続きの元に保護され、ミウを産んだ方が美羽を引き取りたいと申し出ています」
「でも、そいつは美羽を見捨てたじゃないか……信用、出来るのかよ」
「見捨てたわけではなく、彼はミウの父親に引き離されていた被害者でもあります」
「そう、なのか……でも、三人の婚約者たちは納得したのか? オメガの母親じゃ、美羽を守り切れないかもしれないだろ?」
「そこら辺も、安心してください。婚約者だった企業の三人も、ちゃんと逮捕しました。シズヤは優秀な弁護士ですからね」
「そっかー……あー、なんか、俺が知らない間に色々、動き過ぎだろー……疎外感がする」
それなら安心だ。
オメガというだけで、大変な事もあるかもしれないが、美羽には幸せになって欲しい。
「サキさんの車を盗んだり、色々やらかしてはいますが、彼女には幸せになって欲しいですね」
「うん。俺も今、そう思っていたところ」
慌ただしい発情期の出来事だったけど、落ち着いたみたいで良かった。
そして不意に思い出した。
「俺の、未成年者略取はどうなったんだ……?」
「美羽の証言と、父親の逮捕で、書類だけで済みそうですよ」
「あー……やっぱり、そうなっちゃうか」
「揉み消しは出来ますが、ミウを助けたサキさんの勲章だとでも思えばいいのでは?」
「名誉の負傷とはいかないけどな……」
どうせなら、揉み消して欲しいところだ。
きっと簡単にメイデルなら出来ると思うけど、どうせ裏で生きてきた俺なのだから罪状の一つや二つあった方がこれから先、役に立つ……かなぁ? むしろロリコンというレッテルが付いたような……
いや、深くは考えないでいよう。
「そうそう、サキさんが起きた事ですし、私は一度、国に戻らなくてはいけないので、また少しの間離れ離れになりますが、直ぐに戻りますから、待っていてくださいね」
「あー、そうなのか」
ずっと一緒に居られるわけは無いし、むしろ発情期に無理に来てくれたのだから、感謝しておくべきなのだろう。
本来なら寝て過ごしているか、今頃は警察で誘拐犯として刑務所送りにされて、発情期で悶え苦しんでいたのかもしれないのだし……
刑務所では意識を保たせるために、軽い抑制効果のある薬しか貰えないと聞いたことがある。
だから、こうして体は酷使されたけど、好きな人と過ごせたのはラッキーだった。
「サキさん、悲しい顔をしないで下さい。直ぐに戻ってきますから」
「別に、悲しんでない……」
「そんな顔で言われても、説得力は無いですね。私も、サキさんを置いて国へ帰るのは、辛いです」
どんな顔だっていうんだか……
メイデルがキッチンからパンケーキの山になった皿を持ってきて、テーブルの上に置くと俺の頭を撫でて「可愛い」と言った。
俺の気配に気付くと顔をこちらに向けて微笑んで挨拶をしてくる。
「おはようございます。サキさん」
「ぉ……んっ、ケホッ」
「ああ、可哀想に……喉を痛めているようですね」
誰のせいだと思っているのやら……ジロッと睨みつければ、挨拶のようにキスをされて抱き寄せられた。
身じろぐと、頬や首筋にもキスをしてきて、本当に朝っぱらから元気な……と、テレビに目をやれば、十四時四十分の数字に、朝では無い事に気付く。
メイデルに椅子に座らされ、大人しくテレビを見ていると、メイデルが冷蔵庫からスポーツ飲料を持ってきた。
蓋を開けて口を付けると、一気に流し込めてしまったから、喉が渇いていたのだと思う。
「はぁー……なんか、生き返った……」
「三日間しどうしの上、一日半寝ていましたからね」
「へっ!? 三日!?」
メイデルがテレビのリモコンで西暦から曜日まで表示できるように切り替え、流石に俺も納得した。
結構な時間していたとは思ったけど、まさかの三日間……道理で、頭痛に体の痛み、そして気怠さがあるわけだ。
「あ、じゃあ発情期、終わってる……」
「ふふっ、サキさん。体の方はどうです?」
「……すっごい、怠い。泥のように眠りたい……」
「寝ても良いですが、流石に食事をとらないと駄目ですよ」
本当に、誰のせいなんだか……
メイデルは俺の頭にキスを落としてから、キッチンへと行ってしまい、何かを作り始めている。
テーブルに頬をつけて行儀悪くテレビのニュースを見ていると、蓬生グループの社長が逮捕されていた。
「メイデル! 美羽の父親が逮捕されているんだけど!」
「ええ。彼女の選択です。父親が自分をゲームの負けた代償とした事を告発し、他にも悪どい裏取引をしている動画も証拠として提出しましたからね」
「じゃあ、美羽は? 美羽はどうなった!?」
父親が逮捕されても、婚約者たちが居たはずだ。
美羽は無事保護されているだろうか……それだけが心配だ。
たった十六歳の女の子が、婚約者のアルファ三人相手に立ち回る事が出来るかどうか……
「安心してください。ミウは、ちゃんと法の手続きの元に保護され、ミウを産んだ方が美羽を引き取りたいと申し出ています」
「でも、そいつは美羽を見捨てたじゃないか……信用、出来るのかよ」
「見捨てたわけではなく、彼はミウの父親に引き離されていた被害者でもあります」
「そう、なのか……でも、三人の婚約者たちは納得したのか? オメガの母親じゃ、美羽を守り切れないかもしれないだろ?」
「そこら辺も、安心してください。婚約者だった企業の三人も、ちゃんと逮捕しました。シズヤは優秀な弁護士ですからね」
「そっかー……あー、なんか、俺が知らない間に色々、動き過ぎだろー……疎外感がする」
それなら安心だ。
オメガというだけで、大変な事もあるかもしれないが、美羽には幸せになって欲しい。
「サキさんの車を盗んだり、色々やらかしてはいますが、彼女には幸せになって欲しいですね」
「うん。俺も今、そう思っていたところ」
慌ただしい発情期の出来事だったけど、落ち着いたみたいで良かった。
そして不意に思い出した。
「俺の、未成年者略取はどうなったんだ……?」
「美羽の証言と、父親の逮捕で、書類だけで済みそうですよ」
「あー……やっぱり、そうなっちゃうか」
「揉み消しは出来ますが、ミウを助けたサキさんの勲章だとでも思えばいいのでは?」
「名誉の負傷とはいかないけどな……」
どうせなら、揉み消して欲しいところだ。
きっと簡単にメイデルなら出来ると思うけど、どうせ裏で生きてきた俺なのだから罪状の一つや二つあった方がこれから先、役に立つ……かなぁ? むしろロリコンというレッテルが付いたような……
いや、深くは考えないでいよう。
「そうそう、サキさんが起きた事ですし、私は一度、国に戻らなくてはいけないので、また少しの間離れ離れになりますが、直ぐに戻りますから、待っていてくださいね」
「あー、そうなのか」
ずっと一緒に居られるわけは無いし、むしろ発情期に無理に来てくれたのだから、感謝しておくべきなのだろう。
本来なら寝て過ごしているか、今頃は警察で誘拐犯として刑務所送りにされて、発情期で悶え苦しんでいたのかもしれないのだし……
刑務所では意識を保たせるために、軽い抑制効果のある薬しか貰えないと聞いたことがある。
だから、こうして体は酷使されたけど、好きな人と過ごせたのはラッキーだった。
「サキさん、悲しい顔をしないで下さい。直ぐに戻ってきますから」
「別に、悲しんでない……」
「そんな顔で言われても、説得力は無いですね。私も、サキさんを置いて国へ帰るのは、辛いです」
どんな顔だっていうんだか……
メイデルがキッチンからパンケーキの山になった皿を持ってきて、テーブルの上に置くと俺の頭を撫でて「可愛い」と言った。
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