狼兵は運命の番を逃がさない

ろいず

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可愛い ※

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 ギシギシと畳で出来たベッドが軋み、メイデルが強い力で逃げる腰を捕まえて、後ろから穿たれては音を響かせる。家に帰ってきて、どのくらいの時間が経ったのか発情した頭では判別がつかず、ただ求めて求められてをお互いに繰り返し、先にギブアップしたのは体力のない俺の方だった。
 
「んっあっ、や……もっと、ゆっく、り……っ、あ、や……っ!」
「覚悟、して下さいと、言ったはずですよ……っ、ん」

 力強く奥まで突き入れられて、ゴリッと奥に当たる。
 足がガクガクと震えて、シーツを握り締めて呼吸を乱す。それでもメイデルは休ませてはくれず、また覆いかぶさるように激しく腰を突き動かしてきた。

「っ、あっ、ううっ!」
「素直に、乱れてしまいなさい」

 イヤイヤと首を振れば、首筋の裏をキツく噛まれ、奥を深く抉るように楔を打ち込まれる。
 下がってきた子宮に先端を擦り合わせて、ドクリと精を放つ。
 中に注ぎ込まれて発情が治まりを見せ、冷静な思考が戻り始めてしまうと散々乱れた後で、また乱れることも出来ずにいる。
 シーツをギュッと握り締めると、握り締めた手の上からメイデルの手が重なってきた。

「何を、意地を張っているんです?」
「いじ、なんか……んっ、はって、ない……」
「そうですか」

 乱れた吐息混じりに図星を突かれて、否定した。
 ゆっくりとメイデルが腰を引くと、腸壁がカリ部分に撫でられるように擦られて快感が背筋をゾクリと粟立たせる。

「ひっ、う……っ、……っ!」

 抜き去られると思っていた雄は、また奥まで穿たれ、声にならない悲鳴が上がる。
 もう快感なのか拷問なのかも分からない。

「後ろからだと、サキさんの顔が見えないですね」
「んぐっ」

 片足を持たれて、そのまま横を向いたまま腰を動かして、俺の感じる弱い部分を先端で断続的に擦っては、イキそうになると意地悪をするようにゆっくりと焦らして動かしてくる。

「やめ……っ、それ、やだ……っ、あ、っ……」
「サキさんの泣きそうな顔、可愛くて、そそりますね」
「……っ!」
「んっ、締めつけなくても、まだ可愛がってあげますよ」

 そうじゃないと思いながらも、抉るように肉壁をカリ部分で摩擦されて、甘く痺れた快感に身を任せてイッてしまえば、あとは求められるままに嬌声を上げ続けさせられるだけだった。
 
 

 ***********(メイデル視点)********


 ふぅ、と一息ついて、横で気を失うように寝てしまったサキを見る。実際、気を失わせてしまった自覚もある。
 自分の満たされない何かを満たす『運命の番』と、こうして出会い、体を繋げることが出来ることにタガが外れてしまうのも、致し方ない事だろう。
 体の相性が良すぎて自分でも止められないところがある。

「サキが可愛いのが、悪い」

 呟いてから眠るサキを見れば、眉間にしわを寄せ「可愛いって、言うな……」と寝言が返ってきた。
 そういえば、最中も「可愛い」と言えば中がギュッと締まりが良くなったな。と、思い出す。
 サラサラとしたサキの黒髪を手で触り、頬にキスをする。
 今、自分は一番幸せだと思えるひと時を過ごしていることに感謝したい。

「サキが一番かわ……」

 ドンドンドン……『ちょっと! 僕を待たせるとか、ありえないんだけどー!』と、声が部屋の外から聞こえる。
 折角の幸せのひと時も、サキの弟と名乗る口うるさいシズクに関わると台無しにされる。本当に邪魔な奴でもあるのだ。
 サキを起こしては可哀想だと、部屋を出て行くと、姿かたちだけは少年のようなシズクが立っている。

「遅いんだけど? まったく、三日間もやるとか無茶させ過ぎだからね!」
「……三日も経っていたか」
「ちょっと、日付の感覚くらい持ちなよね! うちの咲は、オッサンと違って軍人並みの体力なんか無いんだからね!」

 それは自分でも反省しているところだが、キャンキャン子犬のように吠えられてはたまらない。
 三日も経っていたとは、夢中になり過ぎた事には反省をしなくては……

「サキが可愛すぎて、抑えが効かなかったようだ」
「オッサン。その『可愛い』は咲に禁句だからね? あんまり言ってると逃げられるから」

 シズクに睨み上げられ、何を言っているのだ? と、肩をすくめれば、シズクはフンと鼻で言ってそっぽを向く。
 本当に可愛くない弟だ。
 
「サキはね、オメガの組織で他のオメガに比べられて『平凡な顔』って言われてたし、『売れ残り』だったから、普通の顔なのに、極端に自分の顔を嫌ってるんだよ」
「お前がそうしていたんじゃないのか? お前はサキを気に入っているからな」
「そりゃね、サキをオメガの商品として、客に出すのは禁止はさせてた。でもね、元々、あの組織のオメガは僕みたいに可愛い子や、ササメみたいな綺麗どころばかりで、咲は埋もれちゃうんだよ」

 まさかサキが、そんな事を気にしているとは思わなかった。
 しかし、思い出せば……サキに「可愛い」と言った時に、「可愛くないから」と返されたこともあった。そして少し目を逸らしたりしていたが、あれは恥ずかしがっている訳ではなかったのか。
 行為の最中も、恥ずかしがっての締めつけではなく、傷ついて身を固めていただけだったのだろうか?
 
「サキが起きたら、色々話し合わなくてはな……」

 溜め息混じりに呟くと、幸せな気分は重く苦いものに変わってしまった。 
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