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色欲の魔女、薄着で真冬の街へ行く
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「……………色欲の、魔女……?」
多くの種族を魅了し、眷属とした色欲。
眷属を増やす事で本人も強くなる。それにより、最強の魔女と恐れられた色欲。
そのあまりの危険さから、全ての種族が力を合わせ、封印することにした。僕が触れたのは、その力が封印された宝珠。
そんなヤバい存在になってしまった。
「でも、別にそこまでエロい事したいわけでも……」
魔女とは、人々の抑制された欲望を一身に受け持ち、欲望のままに行動する職業。
……のはずだったらしい。
だけど、聖剣に選ばれていた僕は、勇者の力が理性を保ち、守ってくれている。
その代わりに勇者としての力は使えないみたいだけど。
なんて考えていると、ふと違和感を感じて下を見る。
「……服が変わってる」
黒のビキニ、その上からパーカーみたいなのを着てるだけ……ちょっと露出度高くない?
あれでも……しっくりくる。これも色欲としての本能というか、仕方ないものらしいけどさ。
チャックを限界まで上げ――え~? 露出を減らしすぎると、勝手に服が作り替えられるんだって。……露出狂になれと?
むぅ……この姿を人前で晒さないといけないのかぁ。
「はぁ……なんでこんな事に……」
散々だ! と思いながら出口に向かうと、変な魔力の流れを感じた。いや、初めての感覚なんだけど、それ以外に思いつかなかったから、ね?
魔女になったことで、パラメーターが全体的に上昇、MPの最大値はぶっちぎり。
そして、MPの最大値が多いほど、魔力感知能力や魔法の威力、魔法ダメージの軽減率やらが上がるらしいよ。
早速その方向に向かってみると……謎の魔法陣を発見!
これはきっと、街か何かに行けるやつだよ! ゲーマーの勘がそう囁いているからね。
「街と言えば、身分証……発行してもらえても、お金が必要……体で払えとか言われたら気持ち悪いし、まだやめとこ」
露出過多の美少女を見て、どうも思わない男が居るかな? 少なくとも、8割の人はよからぬ事を考えるね。僕も例外じゃないよ。
「売れそうな魔物を狩りたいな……魔女になったから強くなってるらしいし。最悪、門番を魅了して通してもらおっか」
門番を魅了するのは最終手段ですよ?
……だって、人の多いところで使いたくないもん。
『ブラインドタイガー Lv48』
スキルポイントを使って鑑定を取ってみたんだけど……うん、なんというか、あれだよ。
今僕は、明らかに強いであろう生き物を前にしているにも関わらず、緊張、焦り、動揺、そのいずれも感じていない。
何故? それは、魔女がチートだから。
色欲の魔眼というスキルを使えば、一発で魅力出来る。それを剣でサクッと殺ればいいだけの簡単なお仕事です。
……剣はどこから出したって?
それはね、聖剣召喚が変化した、魔剣召喚を使っているのですよ。職業は強制的に魔女だから、召喚スキルが使えるのです!
魔剣クトネシリカ。
柄に狐の意匠がある双剣で、血のように紅い。イメージとしては、アブソリュート・デ〇オに出てくるヒロインが使っていた武器が近いかもしれない。
とにかくかっこよくて、実用性は無さそうなのに強い。
ザクッ
「……気持ち悪くなったりしなくて良かった」
元のノアにグロ耐性があって、僕も全然気持ち悪くならなかった。感謝しとこう。
すると、頭の中でファンファーレが鳴り響く。
『レベルアップ!』
という声も聞こえてきた。
盲目の状態異常にしてくる虎さんはー、しまっちゃおうねー! ……異空間収納に。
完全無欠に便利スキル。
定番で最強なチートだね。
「でもやっぱりスースーして恥ずかしい……」
太ももが、上半身がー……せめてショートパンツくらい穿かせて。それくらいいじゃん。
……というか、なんで羞恥心までノアのものが混ざってるのかな。記憶があるからかも。
口調まで変わってきてる? ……もういい、女の子になればいいんでしょ? (錯乱)
「……これだけ大きい獲物だったんだし、数日分の宿代くらいにはなるよね。行こう……」
再度魔法陣のある場所まで歩く。
……よし、最初の街、ゴー!
「…………?」
一瞬光ったけど、特に景色は変わってない。もしかして、この魔法陣壊れてた?
いやいや、きっと何か足りないものが……
魔力とか流してみる?
「あっ、来たー! もう一度、ゴー!」
今度こそ正常に作動してくれたようで、視界が暗転する。10秒、20秒……1分……5分。
「いや長くない!?」
んん? 声が反響する……てことは?
「ステータスオープン!」
ウィンドウの光でいい感じに辺りが照らされる。つまり、既に転移していて、洞窟の中だっただけというわけです。
「でも……これだと歩きにくいし……スキル、取っちゃおう」
光魔法:3ポイント
・熟練度上昇により光系統魔法を覚える。最大レベル999。
「さすが魔女、最大レベルが999とか」
この世界のスキルは特殊で、熟練度形式で強くするのはいいとしても、最大レベルが人によって違う。
まあ、それが無いと、凄く強い人間がうじゃうじゃ出てくるもんね。仕方ないね。
ノアが教わった大体の平均を出しておくと、
人間
武術系···75
魔法系···40
技能系···160
獣人
武術系···220
魔法系···20
技能系···55
エルフ
武術系···55
魔法系···170
技能系···90
魔族
武術系···125
魔法系···130
技能系···35
他にもあるはずなんだけど、ノアが覚えていたのはこれだけ。ある程度の目安にはなるかな?
これプラス、職業補正も入るよ。
ぶっちゃけ、魔女とか勇者とかは頭おかしい。ノアの魔法適正は低いはずなのに、999だから。
……そうだ、光魔法覚えるんだった。
『光魔法を覚えました!』
「えっとぉ、使える魔法はーっと……《我が道を照らすは小さき光――ライト》」
ぽわぁ……って感じで僕の周りを照らし出す。光の位置は動かせるみたいで、頭の上に置くと丁度いい。
『ライトを無詠唱で発動可能になりました!』
わー、すごーい(白目)
これが魔女の職業スキルだって言うんだから、他の魔女さんには会いたくないですね!
七つの大罪がそのまま魔女になっているから、嫉妬、怠惰、暴食、憤怒、傲慢、強欲……色欲、僕を含めて7人居るということになる。
個人的には暴食が危険なんじゃないかなーって。
ラノベだと、ステータスとかスキルの強奪、どんな攻撃も吸収、広範囲を喰らい尽くす攻撃など……数の暴力が効かない相手だね。
これはちょっと、早めに強くなった方がいいかもしれないなぁ……今の魔女が昔のままだったりしたら、圧倒的レベル差で瞬殺されちゃう。
「……そっか、魔女だって分からないようにしないと」
『偽装を覚えました!』
このスキルは読んで字のごとく、ステータスを偽装出来るのです。ただし、自分の倍以上のMPがある相手には通用しないというね。
……そんな相手、魔女か魔王か勇者くらいしか居ないんじゃないの? まだレベル低いし、もしかしたらもしかするかもだけど。
「あ、外が見えてき――って寒っ!?」
ヒュォォォ……
「し、島の方は暖かかったのにぃ……」
今なら、真冬にスカートを穿く女の子の苦労がわかる。上もそうだけど、下が水着だけなのはもっと辛いね。
……風魔法とか覚えれば、周りだけいい感じに出来るかなぁー? 後で試してみよっと。
「それにしても……この森、どっちに行けば街に出るの?」
洞窟を出たのはよかったけど、木に囲まれてるせいで何処に何があるかなんて分かりっこない。
「確かめるなら、上からだよ……ねっ!」
全力でジャンプすると、辛うじて木の向こう側を見ることが出来る。むむ、この森広いね。
……よかった、街はすぐそこにあるみたい。
「ダーッシュ! ……狼さん邪魔!」
途中で襲いかかって来た狼さんを一撃で屠りんぐしつつ、異空間収納行きに。やったねー!
……狼さん呼びにすら違和感を覚えなかった僕、もう色々とダメかな……うん、女の子人生謳歌しよう。
あ、そういえば、僕も狼の獣人だった。
とか考えてる間に、街の入口っぽい所が見えてきた。
「……あれが異世界の街なんだぁ……」
持っていたクトネシリカを、腰の後ろに付いている鞘へしまう。そして、数人が作っている列に並んで待つ。
…………やっぱりこの格好目立つよね。だってさ、異世界に水着って概念、ないでしょ? 一部にはあるかもしれないけど、海とかがある場所じゃないと必要無いし……
僕の順番が来ると、門番と見つめ合う。……いや、何か言ってよ。どういう状況?
「……身分証を見せろ」
自分で出すのを待ってたの? ……あれかな、僕を通すべきか迷ってたとか。こんな格好だし。
「えっとー、ボクずっと村に住んでてそういうの持ってないんです。あはは~」
「そうか、なら仮の身分証を作るために、詰め所へ来てもらうがいいな?」
「もちろん、大丈夫!」
……あれ? 普通に話すつもりだったのに、テンションの高いボクっ娘になっちゃった。
詰め所へ行くと、何やら石版みたいなものを持ってきた。なにそれ、くれるの?
「仮身分証発行する前に、この石版に触れた状態でいくつか質問させてもらう……一応聞くが、金はあるのか?」
「ありません!」
そう答えると、石版が緑色に光った。もしかしなくても、嘘発見器的な?
犯罪歴は? 犯罪をするつもりは?
みたいな事を聞かれたけど、全部ノー。石版も緑に光ったからセーフってことだと思う。
「俺なら買い取りも出来るが……持ってるようには見えないな。後で返すなら貸してやってもいいぞ」
「ううん、ちょっと待ってて」
「……何も無い所から出しただと? 収納持ちだったのか」
さっき屠った狼さんを取り出すと、「羨ましい」と言わんばかりの目を向けてくる。
この収納持ちというのは、異空間収納の事ではなく、アイテムボックスというスキルのこと。
スキルレベルが低いと容量も少ないんだけど、ほとんどの人が最大レベル10前後で、実用可能な人は珍しいんだって。
……ノア、スキルについては勉強してたんだね。
あとさ、ノアが美少女なのは分かるけど、気軽にお金貸したりしちゃダメだと思う。強面のおじさんが赤くなってても嬉しくないもん、。
「状態が良いな……買い取りが3500ギル。仮身分証の発行に2000ギル。ほれ、残り1500ギルだ」
「……紙幣? 門番さん、この紙幣とか、通貨の呼び方とか、誰が決めたの?」
「あ? そんなもん、勇者に決まってるだろ。その辺の子供でも知ってることだ」
そっかぁ……日本人を召喚でもしたの? ギルって、フ〇イナルファンタジーのお金だった気がするんだよねー……それに、銀貨とか金貨を見てみたかったのに。
銅貨はほら、十円玉があるでしょ?
「身分証は冒険者ギルドで作るといい。仮身分証のまま5日を過ぎると、罰金を払うか奴隷にされるから気を付けろよ」
「奴隷はやだなー……」
というか、やっぱり居るんだね。
門番さんは詰め所の出口に立ち、こちらを振り返る。
「ようこそ、バテームへ」
うんうん、やっと異世界生活が始まった感じ。
ただ、そこから出る前に、門番さんがボソッと呟く。
「……治安はあまり良くないがな」
最後の最後に色々と台無しだった。
多くの種族を魅了し、眷属とした色欲。
眷属を増やす事で本人も強くなる。それにより、最強の魔女と恐れられた色欲。
そのあまりの危険さから、全ての種族が力を合わせ、封印することにした。僕が触れたのは、その力が封印された宝珠。
そんなヤバい存在になってしまった。
「でも、別にそこまでエロい事したいわけでも……」
魔女とは、人々の抑制された欲望を一身に受け持ち、欲望のままに行動する職業。
……のはずだったらしい。
だけど、聖剣に選ばれていた僕は、勇者の力が理性を保ち、守ってくれている。
その代わりに勇者としての力は使えないみたいだけど。
なんて考えていると、ふと違和感を感じて下を見る。
「……服が変わってる」
黒のビキニ、その上からパーカーみたいなのを着てるだけ……ちょっと露出度高くない?
あれでも……しっくりくる。これも色欲としての本能というか、仕方ないものらしいけどさ。
チャックを限界まで上げ――え~? 露出を減らしすぎると、勝手に服が作り替えられるんだって。……露出狂になれと?
むぅ……この姿を人前で晒さないといけないのかぁ。
「はぁ……なんでこんな事に……」
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魔女になったことで、パラメーターが全体的に上昇、MPの最大値はぶっちぎり。
そして、MPの最大値が多いほど、魔力感知能力や魔法の威力、魔法ダメージの軽減率やらが上がるらしいよ。
早速その方向に向かってみると……謎の魔法陣を発見!
これはきっと、街か何かに行けるやつだよ! ゲーマーの勘がそう囁いているからね。
「街と言えば、身分証……発行してもらえても、お金が必要……体で払えとか言われたら気持ち悪いし、まだやめとこ」
露出過多の美少女を見て、どうも思わない男が居るかな? 少なくとも、8割の人はよからぬ事を考えるね。僕も例外じゃないよ。
「売れそうな魔物を狩りたいな……魔女になったから強くなってるらしいし。最悪、門番を魅了して通してもらおっか」
門番を魅了するのは最終手段ですよ?
……だって、人の多いところで使いたくないもん。
『ブラインドタイガー Lv48』
スキルポイントを使って鑑定を取ってみたんだけど……うん、なんというか、あれだよ。
今僕は、明らかに強いであろう生き物を前にしているにも関わらず、緊張、焦り、動揺、そのいずれも感じていない。
何故? それは、魔女がチートだから。
色欲の魔眼というスキルを使えば、一発で魅力出来る。それを剣でサクッと殺ればいいだけの簡単なお仕事です。
……剣はどこから出したって?
それはね、聖剣召喚が変化した、魔剣召喚を使っているのですよ。職業は強制的に魔女だから、召喚スキルが使えるのです!
魔剣クトネシリカ。
柄に狐の意匠がある双剣で、血のように紅い。イメージとしては、アブソリュート・デ〇オに出てくるヒロインが使っていた武器が近いかもしれない。
とにかくかっこよくて、実用性は無さそうなのに強い。
ザクッ
「……気持ち悪くなったりしなくて良かった」
元のノアにグロ耐性があって、僕も全然気持ち悪くならなかった。感謝しとこう。
すると、頭の中でファンファーレが鳴り響く。
『レベルアップ!』
という声も聞こえてきた。
盲目の状態異常にしてくる虎さんはー、しまっちゃおうねー! ……異空間収納に。
完全無欠に便利スキル。
定番で最強なチートだね。
「でもやっぱりスースーして恥ずかしい……」
太ももが、上半身がー……せめてショートパンツくらい穿かせて。それくらいいじゃん。
……というか、なんで羞恥心までノアのものが混ざってるのかな。記憶があるからかも。
口調まで変わってきてる? ……もういい、女の子になればいいんでしょ? (錯乱)
「……これだけ大きい獲物だったんだし、数日分の宿代くらいにはなるよね。行こう……」
再度魔法陣のある場所まで歩く。
……よし、最初の街、ゴー!
「…………?」
一瞬光ったけど、特に景色は変わってない。もしかして、この魔法陣壊れてた?
いやいや、きっと何か足りないものが……
魔力とか流してみる?
「あっ、来たー! もう一度、ゴー!」
今度こそ正常に作動してくれたようで、視界が暗転する。10秒、20秒……1分……5分。
「いや長くない!?」
んん? 声が反響する……てことは?
「ステータスオープン!」
ウィンドウの光でいい感じに辺りが照らされる。つまり、既に転移していて、洞窟の中だっただけというわけです。
「でも……これだと歩きにくいし……スキル、取っちゃおう」
光魔法:3ポイント
・熟練度上昇により光系統魔法を覚える。最大レベル999。
「さすが魔女、最大レベルが999とか」
この世界のスキルは特殊で、熟練度形式で強くするのはいいとしても、最大レベルが人によって違う。
まあ、それが無いと、凄く強い人間がうじゃうじゃ出てくるもんね。仕方ないね。
ノアが教わった大体の平均を出しておくと、
人間
武術系···75
魔法系···40
技能系···160
獣人
武術系···220
魔法系···20
技能系···55
エルフ
武術系···55
魔法系···170
技能系···90
魔族
武術系···125
魔法系···130
技能系···35
他にもあるはずなんだけど、ノアが覚えていたのはこれだけ。ある程度の目安にはなるかな?
これプラス、職業補正も入るよ。
ぶっちゃけ、魔女とか勇者とかは頭おかしい。ノアの魔法適正は低いはずなのに、999だから。
……そうだ、光魔法覚えるんだった。
『光魔法を覚えました!』
「えっとぉ、使える魔法はーっと……《我が道を照らすは小さき光――ライト》」
ぽわぁ……って感じで僕の周りを照らし出す。光の位置は動かせるみたいで、頭の上に置くと丁度いい。
『ライトを無詠唱で発動可能になりました!』
わー、すごーい(白目)
これが魔女の職業スキルだって言うんだから、他の魔女さんには会いたくないですね!
七つの大罪がそのまま魔女になっているから、嫉妬、怠惰、暴食、憤怒、傲慢、強欲……色欲、僕を含めて7人居るということになる。
個人的には暴食が危険なんじゃないかなーって。
ラノベだと、ステータスとかスキルの強奪、どんな攻撃も吸収、広範囲を喰らい尽くす攻撃など……数の暴力が効かない相手だね。
これはちょっと、早めに強くなった方がいいかもしれないなぁ……今の魔女が昔のままだったりしたら、圧倒的レベル差で瞬殺されちゃう。
「……そっか、魔女だって分からないようにしないと」
『偽装を覚えました!』
このスキルは読んで字のごとく、ステータスを偽装出来るのです。ただし、自分の倍以上のMPがある相手には通用しないというね。
……そんな相手、魔女か魔王か勇者くらいしか居ないんじゃないの? まだレベル低いし、もしかしたらもしかするかもだけど。
「あ、外が見えてき――って寒っ!?」
ヒュォォォ……
「し、島の方は暖かかったのにぃ……」
今なら、真冬にスカートを穿く女の子の苦労がわかる。上もそうだけど、下が水着だけなのはもっと辛いね。
……風魔法とか覚えれば、周りだけいい感じに出来るかなぁー? 後で試してみよっと。
「それにしても……この森、どっちに行けば街に出るの?」
洞窟を出たのはよかったけど、木に囲まれてるせいで何処に何があるかなんて分かりっこない。
「確かめるなら、上からだよ……ねっ!」
全力でジャンプすると、辛うじて木の向こう側を見ることが出来る。むむ、この森広いね。
……よかった、街はすぐそこにあるみたい。
「ダーッシュ! ……狼さん邪魔!」
途中で襲いかかって来た狼さんを一撃で屠りんぐしつつ、異空間収納行きに。やったねー!
……狼さん呼びにすら違和感を覚えなかった僕、もう色々とダメかな……うん、女の子人生謳歌しよう。
あ、そういえば、僕も狼の獣人だった。
とか考えてる間に、街の入口っぽい所が見えてきた。
「……あれが異世界の街なんだぁ……」
持っていたクトネシリカを、腰の後ろに付いている鞘へしまう。そして、数人が作っている列に並んで待つ。
…………やっぱりこの格好目立つよね。だってさ、異世界に水着って概念、ないでしょ? 一部にはあるかもしれないけど、海とかがある場所じゃないと必要無いし……
僕の順番が来ると、門番と見つめ合う。……いや、何か言ってよ。どういう状況?
「……身分証を見せろ」
自分で出すのを待ってたの? ……あれかな、僕を通すべきか迷ってたとか。こんな格好だし。
「えっとー、ボクずっと村に住んでてそういうの持ってないんです。あはは~」
「そうか、なら仮の身分証を作るために、詰め所へ来てもらうがいいな?」
「もちろん、大丈夫!」
……あれ? 普通に話すつもりだったのに、テンションの高いボクっ娘になっちゃった。
詰め所へ行くと、何やら石版みたいなものを持ってきた。なにそれ、くれるの?
「仮身分証発行する前に、この石版に触れた状態でいくつか質問させてもらう……一応聞くが、金はあるのか?」
「ありません!」
そう答えると、石版が緑色に光った。もしかしなくても、嘘発見器的な?
犯罪歴は? 犯罪をするつもりは?
みたいな事を聞かれたけど、全部ノー。石版も緑に光ったからセーフってことだと思う。
「俺なら買い取りも出来るが……持ってるようには見えないな。後で返すなら貸してやってもいいぞ」
「ううん、ちょっと待ってて」
「……何も無い所から出しただと? 収納持ちだったのか」
さっき屠った狼さんを取り出すと、「羨ましい」と言わんばかりの目を向けてくる。
この収納持ちというのは、異空間収納の事ではなく、アイテムボックスというスキルのこと。
スキルレベルが低いと容量も少ないんだけど、ほとんどの人が最大レベル10前後で、実用可能な人は珍しいんだって。
……ノア、スキルについては勉強してたんだね。
あとさ、ノアが美少女なのは分かるけど、気軽にお金貸したりしちゃダメだと思う。強面のおじさんが赤くなってても嬉しくないもん、。
「状態が良いな……買い取りが3500ギル。仮身分証の発行に2000ギル。ほれ、残り1500ギルだ」
「……紙幣? 門番さん、この紙幣とか、通貨の呼び方とか、誰が決めたの?」
「あ? そんなもん、勇者に決まってるだろ。その辺の子供でも知ってることだ」
そっかぁ……日本人を召喚でもしたの? ギルって、フ〇イナルファンタジーのお金だった気がするんだよねー……それに、銀貨とか金貨を見てみたかったのに。
銅貨はほら、十円玉があるでしょ?
「身分証は冒険者ギルドで作るといい。仮身分証のまま5日を過ぎると、罰金を払うか奴隷にされるから気を付けろよ」
「奴隷はやだなー……」
というか、やっぱり居るんだね。
門番さんは詰め所の出口に立ち、こちらを振り返る。
「ようこそ、バテームへ」
うんうん、やっと異世界生活が始まった感じ。
ただ、そこから出る前に、門番さんがボソッと呟く。
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