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39話 銀狐とお医者さん
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今日も銀狐は男で遊んでいた。
本日の銀狐は、とても真面目でできる女であった。
「口を開けろキョウよ。喉の奥を見たら、次は舌を触診じゃ」
「あぐっ」
「うむ。では次は呼気についてじゃ。鼻から吸って口から吐き、しばらく繰り返した後は逆の動作をして見よ」
「すーはー、すーはー、すーはー……」
男は銀狐先生の言う通りに身体を委ねていた。そんな弟子に対して私情を挟まずに、銀狐はてきぱきと応じていく。
今回、男は銀狐の検診を受けていた。自らの体調について判断できない弟子のことを、銀狐は気遣ったのである。思い立ったらきっちりと、銀狐は弟子に有無を言わせずに検査を実施していった。
『医者の言うことはよく聞け、絶対にじゃ』
男を威圧するかのように、銀狐は変化でわざわざ身なりも整えていた。髪は後ろでざっくりと束ねて、胸元と太ももが強調される衣服となっていたが……目元は平素よりも冷淡であった。尾や狐耳も隠れており、普段のどこか親しみを感じる雰囲気からは一変して、触れれば即座に切れるかのような鋭さを伴っている。
男の位置からでは度々銀狐の股布が見えていたが……男が恥らって目を逸らせば即座に檄が飛ぶ。診断を第一に考えて弟子に対する甘さなど晒さぬ、厳しい先生っぷりであった。
「少し血が見たい。首筋に傷を付けるから『動くな』」
「(はい)」
おそらくは言霊で動作を縛られた男は、とりあえず心の中で返事をする。それに返答が来るよりも先に鋭い痛みが走り、男は首元を押さえられた。目の前では既に銀狐が、指先に付着した血液をしげしげと見つめて匂いを嗅いでいる。
やがて検査を終えたらしい銀狐は己の手に狐火をかざして、血を燃やして消し去った。
「…………」
「なんじゃ? わらわが患者の血を舐め取って楽しむ、魔性の輩とでも思ったのか?」
「……まあ」
「ふんっ、何を言うか。この小童が」
止血を終えた手の汚れも炎に包み、できる女である銀狐先生は男を見下ろした。そして鼻で笑う。
「医は仁徳じゃ。己以外のものを救うために学を修める徳高き行いぞ。わらわに命を救われて、その教えを受けることも認可されたお主がわらわを疑うとは……世も末じゃな」
「……すまぬ」
「良い。どのみちわらわは仁なき藪医者じゃ。お主以外の輩を救おうとは思わん……お主はわらわのようになるな。他者を慈しむ心を持ちながら……それでもわらわを一番に思ってくれるのならば、わらわは少しは己を許せる」
「……ああ」
「わらわにとってお主は唯一無二じゃが、お主にとってまでそうである必要はない。師を疑いすべてを委ねるな、魔に心を持ち去られるぞ。医者の言うことはよく聞け」
「……善処しよう」
医者の警告を金言と捉えて男は頷く。実際にこれまで何度も発情期に入った師の相手をしていたが……最後にはお互いに抑えが利いていなかった。男も頻繁に理性が飛ぶ。
弟子に無体を働いてしまったと、行為の後に虚ろな瞳で涙を流している師を見るのは男も辛い。そこには誇張が多分に含まれているであろうことは、男もわかっている。しかし本音の部分まで嘘偽りかといえば、そんなことはあるまい。師が罪悪感を覚えているのは相違ないはずである。
だが師を満足させたところで、また更なる悦楽を師は求める。男はそんな師の限界を見定めて、己を律して駆け引きをしていかなければならないのである。師に溺れたら師の所有物に成り果てて、結局は共倒れになる。男は自分の足で歩くことを諦めたつもりはない。
(アサギも……馬鹿な男に引っ掛かったものだ)
お互いに、面倒臭い相手に堕とされてしまったのだと思う。それが伝わっているはずの銀狐先生は生真面目な表情のまま、男の脈を採っていた。
ぺたぺたぺたぺたぺたぺた……。
「……首からでは計りづらい。胸を触るぞ」
返事を聞かずに銀狐先生は、男の下の石穴に入った。そして何度かぺたぺたと胸板に触れてから、頬を寄せる。ぴったりと当てた両手の間で、男の胸の鼓動に聞き入る。
目をつぶって、息も止めながら。
「ん……」
「…………」
……明らかにその行動は私欲に満ちていたが、銀狐は綺麗だった。何もかも煩わしいことは忘れて、静かな時間を共にしたいのは男も同じである。男もしばし目をつぶって、穏やかな時の流れに身を預ける。
そして日の傾きがはっきり感じられる程度が過ぎて、銀狐は離れた。すでに化けの皮は剥がれて、尾や狐耳は露出している。それらは冷然としている銀狐とは裏腹に、ひょこひょこと御機嫌に揺れていた。
「……脈が不整脈じゃ。おまけに早く、心の動きも大きい。何かの病の恐れも考えられるため、今日からは授業を減らして胸の音を聞く時間を日に三回作るぞ」
「……他の時間から削れないのか」
「師の言うことを聞けんのか? ふんっ、お主が信じられんというのなら、藪医者でないまともな輩でも紹介してやろうか?」
「紹介してくれ」
「すまぬ。医者の立場を利用して、わらわは少し役得が欲しいだけなんじゃ。金ならいくらでも払うからやらせてくれ」
「……日に二回までなら」
「本当かっ!? 毎日やるぞっ、わらわは!」
「……落ち着いてくれ先生。胸を吸うか?」
「う、うむ……」
深い土下座の姿勢から急に飛び掛ってくる銀狐先生に、男はとりあえず譲歩した。大人の雰囲気を纏わせながら控えめに胸に吸い付いてくる師に、男も見て見ぬ振りをする。
無垢な患者にちょっと悪戯することでしか得られない楽しさが、銀狐にはあるのだろう。弟子が何も知らないほうが、都合が良いことも銀狐にはあるのだ。
そして余裕を持って弟子の胸への悪戯を切り上げた銀狐は、居住まいを正した。それでもって、胸を吸ったのは経験に裏打ちされた医療行為ですという姿を男へと見せる。手をわきわきと動かしながら。
「やはり胸の鼓動が大きい。今後もお主専用の先生であるわらわが、お主の身体について予断なく診察していくとしよう」
「先生、今日はもう二回分は終わりましたよ」
「う、うむ……ではまた明日だな、お大事に……」
「はい、ありがとうございました」
途端にしょんぼりとなった顔を銀狐は見せるが、そこは大人しく引き下がった。平時は悪戯好きで強引な分、品性を保った役柄を演じる際には無理に踏み込めないのが銀狐の弱点である。普段の行いからして、自業自得であるが。
(もっと入浴時のように、節度を持ってくれていればな……)
風呂に入っている際の銀狐はとても健全で、むしろ男の方が恥じらいを感じてしまうほどである。銀狐にとっては迷惑かもしれないが、今後も一緒に入浴してくれることを男は期待していた。お子様扱いをされるのが怖くて、面と向かって頼めるわけはないが。
(いや、もっと踏み込むべきか……)
師の胸中は窺えないが、今の残念がっている姿は嘘ではない。弟子にあしらわれても、袖にされたことについては銀狐は不満を持っていないのだ。それは男のことを尊重してくれているからだろう……弟子のために自分を抑えて。
受身ばかりでは、師に追いつくことなどできないに違いない。
「……師よ、俺にも師の身体を診させてくれ」
銀狐が唖然と口を開く姿を、男は初めて見た。
(くくくっ……これは勝ったの)
いきなり因縁の決戦に突入した気分だが、銀狐はほくそ笑んで己の栄光を確信していた(※負けます)
『目上の女がふとしたことで見せる甘え』を追求していた銀狐だったが、今回の男は自分から師に踏み込んできた。いきなりに銀狐も面を食らったが、これはもちろん好機である。
ここらで大人の女の魅力を、弟子に見せつけてやらなければ。
(ぬふふっ、わらわがいつでもいつも発情していると思うでないぞキョウや!)
弟子を存分に甘えさせてやる大人の女の余裕を見せてやると、銀狐は胸に誓ったのだった。
しかし自分の考えが弟子とは一致していないことを、うっかりな銀狐先生はまたも見過ごしていたのだった……。
そして夜になった。
男と銀狐の意地を張った戦いは、まだ続いていた。
「くぅ……この、いい加減にしろ……キョウよっ」
「そっち、こそ……はぁはぁ……」
互いに大粒の汗を垂らしながら息も荒く、二人は向き合っていた。男の前で銀狐は、大きく開脚した状態で座っている。股を見せ付ける品のない体勢であるが、二人はまだ交わってはいない。男が口に咥える銀狐の尾だけが、二人の触れ合っている部位であった。
そしてもう一方の尾は銀狐の秘所にぴったりと張り付いて、男が尾を挿入しようとする試みを完璧に防いでいた。
「誰が、そんなものを、中にいれるかっ」
「前は、やろうと、してただろっ」
「阿呆かっ、そんなの、お主を煽るためだけじゃっ」
……このやり取りで大体経緯がわかるだろうが、発端は銀狐である。以前から銀狐が弟子の前で自分の尾を、膣口に当てる煽りを散々にしてきたために男が勘違いしたのである。
これは銀狐が悪い。この男が妖魔の性風俗を、正確に把握しているわけがない。銀狐から得た性知識が弟子にとってすべてなのである。
弟子を不用意に焚き付けた結果、わけのわからない方向からやり返されているのが今の銀狐だった。弟子と触れ合いながらも不満しか感じない、それは銀狐にとって不愉快な感覚であった。自業自得であるが。
しかしだからといって、ここで負けるのは最低最悪である。
(ちぃ……この、わらわの弱味を的確に突きおって……)
銀狐も男から、自らの尾を取り上げようとはしていた。しかしその度に甘噛みをされて、力が抜けてままならない。そのやり口は陰湿であった。
かつて男の体内に突き込んだのとは逆に、優しく口の中で咥えられて愛撫をされると罪悪感に銀狐は身動きが取れない。責められれば開き直られるのに、悪辣な己を愛する男が受け入れて許してくれている行為には銀狐も反駁できないのだ。まさしく惚れた弱味であった。
だがここで、素直に負けを認めるわけでないのが銀狐だった。
「ほれ、ほれっ! お主の乳が待っておるぞ、そんなもので遊ぶのは止めて、こっちにきいや」
「くっ……」
上半身を反らして、銀狐は男に乳揺れを見せつける。当初こそ腕で隠すなどして余裕を持っていたが、今は完全に乳頭までさらけ出されている。乳肉から垂れる汗は湯気となって香り立ち、男の下まで届いていた。
しかしそれは不完全な師の匂いである。弟子の唾液と混ざることでようやく完成される、この男のためだけの乳房の証。
それを銀狐は見せ付けて、上腕の動きだけで前後左右に寄せて上げて男を誘う。
「毎日毎日わらわの胸を弄びおって……お主は小童かっ。お主の母の乳もわらわのものじゃぞっ、代わりにお主はわらわのものになれやい」
「……誰がっ」
銀狐に傾きかけていた男も、子ども扱いされたことで一気に反発する。そしてよくわからない執念でこれこそが銀狐の弱点と見当違いした男は、負けじと尾を弄り倒す。
男は尾を顎の下に挟んで、すりすりと撫で回した。
「文無しの弟子に遊ばれて、金を払う気配もないぞっ。これでは妖狐の自慢の尾が形無しだなっ」
「ぐぬぅ……」
男は柔らかで温かい、その銀の尾が好きだった。寒い日は目一杯近くにいてくれて、暑い日は気遣うように汗を拭ってくれる。何十年も銀狐の尻だけを見て生きて来た男にとって、その尾は師の象徴であった。良いことも悪いことも、多くの思い出がそこにつまっている。
その尾でならたとえ銀狐の秘部に入れられようと、師の性欲を発散させるために許せる。本日の男はそんな全力に方向違いな覚悟を決めていた。
「このまま俺に尾を遊ばれていると、俺のものにするぞっ。師も無駄な抵抗は止めて俺の診断を信じろっ」
「……するかっ」
しかし銀狐も銀狐で、男に都合良く動くわけがない。自分への好意が尾に向けられていることに、銀狐は嫉妬する。加えて日課の髪梳きと同じ仕草で尾を撫でられていることにも、銀狐の内で焼きもちの火がちりちりと燃え立つ。
(わらわの……わらわの髪に匂いを擦り付けようと毎日頑張っておるのに、都合が悪くなったら尾にも手を出すというのか……お主はっ!)
銀狐はこの弟子が、師の髪から気の流れを察知しようと試みていることに気付いていた。それは銀狐にとっては小細工であったが、男にとっては死活問題である。銀狐との殺し合いで尾に加えて髪からの連撃や、飛び道具の波状攻撃を展開された場合、男に打つ手はない。
この男は本当に、銀狐との殺し合いに生き残るつもりなのである。その後にも銀狐と共に生きるために。
自分と師の未来のために汚い手段にも手を染め、しかし己と違って浅ましい思いを持たずに正道を行く。その眩しさに銀狐の心は千々に乱れて、そんな弟子もやっぱり可愛いという惚気へと収束していく。今日も馬鹿師匠は、馬鹿弟子の先を行っているのだった。
(う、う、う……しかし、この状況からどうやってキョウを誤魔化せば……)
当初こそ男を笑い飛ばして軽んじていた銀狐だが、次第にぎらぎらとした眼になってくる弟子を直視できなくなっていた。師への欲情を抑えているが完全に勃起している男の匂いを感じて、尾の下の秘所はえらいことになっている。もう抜かずに精を何度も注がれなければ満足出来そうにない。
しかしそれでは銀狐が医者として振舞った意味は、まるでなくなってしまう。
(くすん……甘えて、甘えさせてゆっくり休ませてやりたかったのに……)
完璧な仙人である銀狐と、半人前な道士である男では体力差は大きい。加えて封呪による底上げがあるとはいえ、もとから飲食不要な銀狐と人間の男では行動力の差異は如何ともしがたい。
男が自分の早漏さを恥じて師の秘所に尾を捻じ込もうとしているのも、全部が全部間違っているというわけでもないのだ。銀狐がそれを完全に求めていないという点は除いて。
(じゃがじゃが……甘露を飲ませ過ぎても、身体に……)
体力回復の補助薬は、定期的に男に与えている。それ以上の精力増強剤などについては、我が強いこの男には効き目が薄い。
強き者の血肉を貪って力を取り込もうとするほど、この弟子は浅ましくない。確固とした己自身を持ち合わせているこの男は、良くも悪くも安定している。大きく呪の悪影響を受けない分、不埒な恩恵についても目を向けない。
仙酒を飲んでもほろ酔うだけで、師との取り留めのない語り合いに心を砕いてくれるこの男は……本当に、本当に銀狐にとって掛け替えのなく大事にしたい存在なのだ。
そしてそんな愛する男を『発情期』などというわけのわからぬ設定で騙して、卑劣に犯しているのが銀狐なのである。弟子のせいで発情しているだけなのを、自分の身体の体質ということにして定期的にやってしまっているのであった。
(すんすん……上手の手から水が漏れる、薄汚いことをやっているわらわは、いつだってキョウに勝てんのじゃぁ……口惜しいぃ)
銀狐は鼻息荒く興奮している弟子を、潤んだ目で悲しく見つめた。男は性欲に囚われているように見えて、実際には師の精を解きほぐそうと試みているだけである。ただ銀狐のせいで暴走してしまっているだけなのだ。それを止めずに煽ったのもまた、銀狐自身である。
卑怯者ならば、どこまでも浅ましく行くしかない。銀狐は心の中で涙を流して弟子に謝罪した。
「とうとう、観念したか、師よ」
「ああ……」
銀狐が弟子を傷付けてへし折る覚悟を決めたことに、男は勘違いをした。抵抗が弱まった隙を逃がさずに、男はここぞとばかりに尾を引っ張って……。
キュポンッ。
――そして二又の尾が、根元から抜けるのを目にした。
「え……」
「変化と分身と幻術の応用の尻尾切りじゃ。大事ない」
弟子を極力傷付けぬように即座に種明かしをするが、男はもうそんなことなど聞いていなかった。銀狐の身体から切り離されたかのように見えた尾が元に戻っても、男の口は呆けたように開かれたままだった。
放置していればこの男は、自らの舌を噛み千切る。それを悟った銀狐は、さらに不意打ちで男の顔を……自らの秘所へと押し当てた。
「んぐっ!?」
「よく見るんじゃキョウよ、お主がしでかしたことを」
男の口に指でかませをして、さらに上から頭を押さえつけ、両脇から太ももで挟んで固定する。そして銀狐は秘所に左右から尾で触れて、肉壁の内側を男へと見せ付けた。
男がそこに目を奪われるのを見ながら、銀狐は馬鹿弟子を何年分もの実感を込めて叱っていく。
「……お主はもう二、三十年はわらわのここを見ながら過ごしてきたのう。お主を他の女なんぞに取られるのが嫌で、わらわは散々にお主の顔に押し当てて遊んできたが……そのときも一本筋じゃっただろ。そしてお主を誘惑しようとした馬鹿女のわらわのここが開いたのは、結局はお主がわらわのために何年も、わらわを変えようと愛撫してくれたおかげじゃ。だからといって、わらわのここがいつまでもそのときのままとは思うなよっ」
銀狐は肉壁から尾を離して、男の口から己の指も手元に戻す。そして開いたまま戻らない花びらの外周を、男の唾液で濡れた指でゆっくりとなぞっていく。
肛門から楕円に上っていき、膨れ上がっている陰核の周囲を弄って下り、尿道口には触れないで膣口へと至る。
そこでは穴が男の肉棒の太さにまで広がって、ひくひくと涙を流して本来入るべきものを待ち望んでいた。
「……股が緩い女と思われるのが嫌で、確かにお主の前では広げた形を見させてなかった。だがお主のものを納めていなくても、わらわのそこはとうにお主の形じゃ……お主だけのものなんじゃぞ。言わせるな、このっ……」
女の穴に魅了されている男の姿は滑稽だったが、そんな姿を見てやるのも癪で銀狐は顔をそらした。そして頬を膨らませて告げる。
「で、お主のものだけを愛撫するそこに、お主はわらわの尾を捻り込むのか? ほれっ、もう穴が小さくなって唇も閉じられておるぞ? 生娘みたいな筋の股じゃが、そこを愛情深く切り開いて広げたのはお主じゃぞ? 今度は師への仕置きで、無理矢理別の形を覚え込ませる気か?」
「……ごめんなさいでした」
「謝るな。お主が非を認めれば、お主の師はつけ上がるだけじゃぞ。ここは『次にその入り口に勝手に尾でも当てたら、望み通りに尾をぶち込んでやるぞ』とでも言え」
「……あんまり尾を当てるような真似をしたら、俺のをすぐに入れるぞ」
「う、む……よろしい。医者の眼から見ても、お主のそれは正しき行いじゃぞ」
ここまで弟子への教育目的でした、という流れに持ち込もうかと銀狐は目論むが、もうそんな雰囲気ではない。男は強い欲望を秘めながらも自省的で、楽しく師へと睦み合うという気は失せている。
しかし雌の匂いに当てられて、その肉棒は苛々と熱を放っている。控えめで無欲な弟子には珍しい姿で、どうにかしてその精を発散させてやらなければと義務感を覚える愛らしさであった。
弟子を蹂躙したい銀狐には都合良く、今日の男は無抵抗で師のことを受け入れてくれることだろう。この弟子が行為の後に後悔に苛まれて、夜に静かに嗚咽を洩らす姿は…………物凄く、見たい。
しかしそれでは、できる大人の女という自らのお遊びが台無しである。
そしてそれ以上に、そんなことをしでかした己は獣にすら劣る色魔であろう。もう陽の光の下で、この男と共に生きる資格さえも失うに違いない。
(ぐぬぬ……襲えば終わり、しかし据え膳食わぬは……だがキョウに罪悪感を抱かせたままでは今後の交わりも……ぐはっ)
鬼畜な所業に手を染めることに激昂して、銀狐は心の中で血反吐を吐いた。実際に行動に移そうものなら、即座に己の舌を噛み千切る程度には銀狐も覚悟が決まっていた。
それでも弟子を襲いたいと思ってしまうのが銀狐なのであるが。
(むむむ……もとはといえば、大元に悪いのはわらわじゃぞ。そこに気付かれないように、ここはわらわも控えめにするべきなのでは……?)
弟子とすることは確定であったが、欲張りにすべてを得ることは今回は出来ない。そもそも男に適度に甘えつつ、甘やかしてやるのが本来の目的であった。師との逢瀬に悩む、男のために。
銀狐も男のために、自分自身を自省する必要があるのだ。
(くぅ……仕方あるまい。今のわらわはこの男の師ではなく、ただのアサギリじゃ……)
愛する男のために渋々と、銀狐は石穴に入って身体を寄せた。ぎくしゃくする男を無視して陰部同士をぴったり当てて、銀狐は他人事のように振舞う。
「……愛する女に恥じることがあるならば修練を積め。今だけは他人の医者であるわらわの相手をしろ」
「……他人、の師?」
「うむ、本命のためには多くの女を抱け……そこで他人のわらわの出番じゃ。医者として、お主の悩みを解決するために身を差し出すのも当然じゃぞ」
「他人、って……」
「わらわはお主の愛人になれても恋人にはなれん女じゃ。何せお主とは手を握り合ったこともないのだからな。それともお主は本当に、他人の女を連れて来られて練習台にしたいのか?」
「……医者の言葉に従います」
「そうか、では入れるぞ」
男から顔を逸らしつつ、銀狐はまだ固さを保っている肉棒を自らの内に納める。内側では男を弄りも揶揄もせずに、ただ温かさでもってその場にいるだけで嬉しいという気持ちで受け入れていく。
銀狐の今までにない受け止め方に、二人は共に震えた。
(う、これは…………)
互いに顔が赤くなって思いが伝わりつつも、銀狐は大人の余裕を見せるべく早口で男に告げる。
「今のわらわはただの穴だからして勝手に出すでないぞ。医者とはいえ他人に出す男なんて情けないのじゃ何とか耐えろ」
「が、頑張ってみる……」
「出すなよ、わらわがただのお主用の穴として振舞ってやっているのだからな。お主がわらわの弟子で寝所番であることには何ら変わりはないのだぞ」
「は、はい……」
「……しかし弟弟子の粗相を許すのも姉の務めじゃ。わらわが寝た後に一回、一回くらいならお主が射精しても見なかった振りをしてやろう」
「……朝まで、耐え切って見せます」
「そ、そうか……うむ、医者としての忠告だが無理は……するなよ」
「……ああ」
顔を背けていたはずなのにどんどんと近づいて来てしまって、いつの間にかお互いに口付けをしそうになっていた。今の状態から男を誘うのは嫌で、銀狐は慌てて目をそらす。そして瞳を閉じて息も止めて、心から念じ続ける。
(わらわは穴じゃ♡ 好きなときにキョウに使われて包み込む、ただの肉穴じゃぞ♡)
何にもしていないのも関わらず、銀狐の心の中からは確かな幸福感が湧き続ける。一箇所だけしか繋がり合っていないのに、それですべてを肯定できると全身が幸せに満ち溢れる。
快楽を得ることを目的とせずに、しかし男から射精してしまうならばしょうがないこんっ♡と、待ちの立ち回りは新鮮だった。これに比べたら弟子に己を眠姦させたことも、まだまだである。受けながら攻めるこれならば、男の罪悪感を羞恥心へと塗り替えて、その肉欲を余すことなく受け入れられる。石女の自分も、こんな形で男を愛せたのだ。
男との逢瀬に銀狐も成長して、弟子の手管に手を染めたのだった。
(こんこ~ん♡ お主が動かなければわらわも動かんのじゃ♡ お主も動かんでわらわの心地良さを理解するが良いぞ♡)
……男も師の真似をして石となってやり過ごそうとするが、魅力的な師が全身で男への愛を伝えてきていることに、どうしても邪念が入る。一物がぴくぴくと震えて、その度に大人の余裕でもって銀狐の肉穴で緩く受け入れられる。それに抗うのは……耐え難い。
結局は朝までどうにか凌いだものの、目覚めた師に『良い子♡良い子♡』と頭を撫でられて男は射精をしてしまった。その後にも朝の体操をいつもよりねっとりとやられて、男は銀狐の胸の中に撃沈してしまうのであった。
そんな男も後に石化の応用で回復力を高めて、銀狐の大人の誘惑にもなんとか乗り切って見せるのであった。先生としてはそれなりにまともな銀狐に、男はより敬意を払うことになるのだが……まあ当人達が幸せなので、余人からどう見られようが関係ない話なのであった。
「キョウよ、今からわらわはお主の赤子じゃ。拾い子じゃが乳をたんと吸わせてくれるか?」
「う、うむ……頑張ってみよう……」
……師に勝手に性感帯を増やされていく男であったが、それもまあ当人たち以外には関係のないお話。
本日の銀狐は、とても真面目でできる女であった。
「口を開けろキョウよ。喉の奥を見たら、次は舌を触診じゃ」
「あぐっ」
「うむ。では次は呼気についてじゃ。鼻から吸って口から吐き、しばらく繰り返した後は逆の動作をして見よ」
「すーはー、すーはー、すーはー……」
男は銀狐先生の言う通りに身体を委ねていた。そんな弟子に対して私情を挟まずに、銀狐はてきぱきと応じていく。
今回、男は銀狐の検診を受けていた。自らの体調について判断できない弟子のことを、銀狐は気遣ったのである。思い立ったらきっちりと、銀狐は弟子に有無を言わせずに検査を実施していった。
『医者の言うことはよく聞け、絶対にじゃ』
男を威圧するかのように、銀狐は変化でわざわざ身なりも整えていた。髪は後ろでざっくりと束ねて、胸元と太ももが強調される衣服となっていたが……目元は平素よりも冷淡であった。尾や狐耳も隠れており、普段のどこか親しみを感じる雰囲気からは一変して、触れれば即座に切れるかのような鋭さを伴っている。
男の位置からでは度々銀狐の股布が見えていたが……男が恥らって目を逸らせば即座に檄が飛ぶ。診断を第一に考えて弟子に対する甘さなど晒さぬ、厳しい先生っぷりであった。
「少し血が見たい。首筋に傷を付けるから『動くな』」
「(はい)」
おそらくは言霊で動作を縛られた男は、とりあえず心の中で返事をする。それに返答が来るよりも先に鋭い痛みが走り、男は首元を押さえられた。目の前では既に銀狐が、指先に付着した血液をしげしげと見つめて匂いを嗅いでいる。
やがて検査を終えたらしい銀狐は己の手に狐火をかざして、血を燃やして消し去った。
「…………」
「なんじゃ? わらわが患者の血を舐め取って楽しむ、魔性の輩とでも思ったのか?」
「……まあ」
「ふんっ、何を言うか。この小童が」
止血を終えた手の汚れも炎に包み、できる女である銀狐先生は男を見下ろした。そして鼻で笑う。
「医は仁徳じゃ。己以外のものを救うために学を修める徳高き行いぞ。わらわに命を救われて、その教えを受けることも認可されたお主がわらわを疑うとは……世も末じゃな」
「……すまぬ」
「良い。どのみちわらわは仁なき藪医者じゃ。お主以外の輩を救おうとは思わん……お主はわらわのようになるな。他者を慈しむ心を持ちながら……それでもわらわを一番に思ってくれるのならば、わらわは少しは己を許せる」
「……ああ」
「わらわにとってお主は唯一無二じゃが、お主にとってまでそうである必要はない。師を疑いすべてを委ねるな、魔に心を持ち去られるぞ。医者の言うことはよく聞け」
「……善処しよう」
医者の警告を金言と捉えて男は頷く。実際にこれまで何度も発情期に入った師の相手をしていたが……最後にはお互いに抑えが利いていなかった。男も頻繁に理性が飛ぶ。
弟子に無体を働いてしまったと、行為の後に虚ろな瞳で涙を流している師を見るのは男も辛い。そこには誇張が多分に含まれているであろうことは、男もわかっている。しかし本音の部分まで嘘偽りかといえば、そんなことはあるまい。師が罪悪感を覚えているのは相違ないはずである。
だが師を満足させたところで、また更なる悦楽を師は求める。男はそんな師の限界を見定めて、己を律して駆け引きをしていかなければならないのである。師に溺れたら師の所有物に成り果てて、結局は共倒れになる。男は自分の足で歩くことを諦めたつもりはない。
(アサギも……馬鹿な男に引っ掛かったものだ)
お互いに、面倒臭い相手に堕とされてしまったのだと思う。それが伝わっているはずの銀狐先生は生真面目な表情のまま、男の脈を採っていた。
ぺたぺたぺたぺたぺたぺた……。
「……首からでは計りづらい。胸を触るぞ」
返事を聞かずに銀狐先生は、男の下の石穴に入った。そして何度かぺたぺたと胸板に触れてから、頬を寄せる。ぴったりと当てた両手の間で、男の胸の鼓動に聞き入る。
目をつぶって、息も止めながら。
「ん……」
「…………」
……明らかにその行動は私欲に満ちていたが、銀狐は綺麗だった。何もかも煩わしいことは忘れて、静かな時間を共にしたいのは男も同じである。男もしばし目をつぶって、穏やかな時の流れに身を預ける。
そして日の傾きがはっきり感じられる程度が過ぎて、銀狐は離れた。すでに化けの皮は剥がれて、尾や狐耳は露出している。それらは冷然としている銀狐とは裏腹に、ひょこひょこと御機嫌に揺れていた。
「……脈が不整脈じゃ。おまけに早く、心の動きも大きい。何かの病の恐れも考えられるため、今日からは授業を減らして胸の音を聞く時間を日に三回作るぞ」
「……他の時間から削れないのか」
「師の言うことを聞けんのか? ふんっ、お主が信じられんというのなら、藪医者でないまともな輩でも紹介してやろうか?」
「紹介してくれ」
「すまぬ。医者の立場を利用して、わらわは少し役得が欲しいだけなんじゃ。金ならいくらでも払うからやらせてくれ」
「……日に二回までなら」
「本当かっ!? 毎日やるぞっ、わらわは!」
「……落ち着いてくれ先生。胸を吸うか?」
「う、うむ……」
深い土下座の姿勢から急に飛び掛ってくる銀狐先生に、男はとりあえず譲歩した。大人の雰囲気を纏わせながら控えめに胸に吸い付いてくる師に、男も見て見ぬ振りをする。
無垢な患者にちょっと悪戯することでしか得られない楽しさが、銀狐にはあるのだろう。弟子が何も知らないほうが、都合が良いことも銀狐にはあるのだ。
そして余裕を持って弟子の胸への悪戯を切り上げた銀狐は、居住まいを正した。それでもって、胸を吸ったのは経験に裏打ちされた医療行為ですという姿を男へと見せる。手をわきわきと動かしながら。
「やはり胸の鼓動が大きい。今後もお主専用の先生であるわらわが、お主の身体について予断なく診察していくとしよう」
「先生、今日はもう二回分は終わりましたよ」
「う、うむ……ではまた明日だな、お大事に……」
「はい、ありがとうございました」
途端にしょんぼりとなった顔を銀狐は見せるが、そこは大人しく引き下がった。平時は悪戯好きで強引な分、品性を保った役柄を演じる際には無理に踏み込めないのが銀狐の弱点である。普段の行いからして、自業自得であるが。
(もっと入浴時のように、節度を持ってくれていればな……)
風呂に入っている際の銀狐はとても健全で、むしろ男の方が恥じらいを感じてしまうほどである。銀狐にとっては迷惑かもしれないが、今後も一緒に入浴してくれることを男は期待していた。お子様扱いをされるのが怖くて、面と向かって頼めるわけはないが。
(いや、もっと踏み込むべきか……)
師の胸中は窺えないが、今の残念がっている姿は嘘ではない。弟子にあしらわれても、袖にされたことについては銀狐は不満を持っていないのだ。それは男のことを尊重してくれているからだろう……弟子のために自分を抑えて。
受身ばかりでは、師に追いつくことなどできないに違いない。
「……師よ、俺にも師の身体を診させてくれ」
銀狐が唖然と口を開く姿を、男は初めて見た。
(くくくっ……これは勝ったの)
いきなり因縁の決戦に突入した気分だが、銀狐はほくそ笑んで己の栄光を確信していた(※負けます)
『目上の女がふとしたことで見せる甘え』を追求していた銀狐だったが、今回の男は自分から師に踏み込んできた。いきなりに銀狐も面を食らったが、これはもちろん好機である。
ここらで大人の女の魅力を、弟子に見せつけてやらなければ。
(ぬふふっ、わらわがいつでもいつも発情していると思うでないぞキョウや!)
弟子を存分に甘えさせてやる大人の女の余裕を見せてやると、銀狐は胸に誓ったのだった。
しかし自分の考えが弟子とは一致していないことを、うっかりな銀狐先生はまたも見過ごしていたのだった……。
そして夜になった。
男と銀狐の意地を張った戦いは、まだ続いていた。
「くぅ……この、いい加減にしろ……キョウよっ」
「そっち、こそ……はぁはぁ……」
互いに大粒の汗を垂らしながら息も荒く、二人は向き合っていた。男の前で銀狐は、大きく開脚した状態で座っている。股を見せ付ける品のない体勢であるが、二人はまだ交わってはいない。男が口に咥える銀狐の尾だけが、二人の触れ合っている部位であった。
そしてもう一方の尾は銀狐の秘所にぴったりと張り付いて、男が尾を挿入しようとする試みを完璧に防いでいた。
「誰が、そんなものを、中にいれるかっ」
「前は、やろうと、してただろっ」
「阿呆かっ、そんなの、お主を煽るためだけじゃっ」
……このやり取りで大体経緯がわかるだろうが、発端は銀狐である。以前から銀狐が弟子の前で自分の尾を、膣口に当てる煽りを散々にしてきたために男が勘違いしたのである。
これは銀狐が悪い。この男が妖魔の性風俗を、正確に把握しているわけがない。銀狐から得た性知識が弟子にとってすべてなのである。
弟子を不用意に焚き付けた結果、わけのわからない方向からやり返されているのが今の銀狐だった。弟子と触れ合いながらも不満しか感じない、それは銀狐にとって不愉快な感覚であった。自業自得であるが。
しかしだからといって、ここで負けるのは最低最悪である。
(ちぃ……この、わらわの弱味を的確に突きおって……)
銀狐も男から、自らの尾を取り上げようとはしていた。しかしその度に甘噛みをされて、力が抜けてままならない。そのやり口は陰湿であった。
かつて男の体内に突き込んだのとは逆に、優しく口の中で咥えられて愛撫をされると罪悪感に銀狐は身動きが取れない。責められれば開き直られるのに、悪辣な己を愛する男が受け入れて許してくれている行為には銀狐も反駁できないのだ。まさしく惚れた弱味であった。
だがここで、素直に負けを認めるわけでないのが銀狐だった。
「ほれ、ほれっ! お主の乳が待っておるぞ、そんなもので遊ぶのは止めて、こっちにきいや」
「くっ……」
上半身を反らして、銀狐は男に乳揺れを見せつける。当初こそ腕で隠すなどして余裕を持っていたが、今は完全に乳頭までさらけ出されている。乳肉から垂れる汗は湯気となって香り立ち、男の下まで届いていた。
しかしそれは不完全な師の匂いである。弟子の唾液と混ざることでようやく完成される、この男のためだけの乳房の証。
それを銀狐は見せ付けて、上腕の動きだけで前後左右に寄せて上げて男を誘う。
「毎日毎日わらわの胸を弄びおって……お主は小童かっ。お主の母の乳もわらわのものじゃぞっ、代わりにお主はわらわのものになれやい」
「……誰がっ」
銀狐に傾きかけていた男も、子ども扱いされたことで一気に反発する。そしてよくわからない執念でこれこそが銀狐の弱点と見当違いした男は、負けじと尾を弄り倒す。
男は尾を顎の下に挟んで、すりすりと撫で回した。
「文無しの弟子に遊ばれて、金を払う気配もないぞっ。これでは妖狐の自慢の尾が形無しだなっ」
「ぐぬぅ……」
男は柔らかで温かい、その銀の尾が好きだった。寒い日は目一杯近くにいてくれて、暑い日は気遣うように汗を拭ってくれる。何十年も銀狐の尻だけを見て生きて来た男にとって、その尾は師の象徴であった。良いことも悪いことも、多くの思い出がそこにつまっている。
その尾でならたとえ銀狐の秘部に入れられようと、師の性欲を発散させるために許せる。本日の男はそんな全力に方向違いな覚悟を決めていた。
「このまま俺に尾を遊ばれていると、俺のものにするぞっ。師も無駄な抵抗は止めて俺の診断を信じろっ」
「……するかっ」
しかし銀狐も銀狐で、男に都合良く動くわけがない。自分への好意が尾に向けられていることに、銀狐は嫉妬する。加えて日課の髪梳きと同じ仕草で尾を撫でられていることにも、銀狐の内で焼きもちの火がちりちりと燃え立つ。
(わらわの……わらわの髪に匂いを擦り付けようと毎日頑張っておるのに、都合が悪くなったら尾にも手を出すというのか……お主はっ!)
銀狐はこの弟子が、師の髪から気の流れを察知しようと試みていることに気付いていた。それは銀狐にとっては小細工であったが、男にとっては死活問題である。銀狐との殺し合いで尾に加えて髪からの連撃や、飛び道具の波状攻撃を展開された場合、男に打つ手はない。
この男は本当に、銀狐との殺し合いに生き残るつもりなのである。その後にも銀狐と共に生きるために。
自分と師の未来のために汚い手段にも手を染め、しかし己と違って浅ましい思いを持たずに正道を行く。その眩しさに銀狐の心は千々に乱れて、そんな弟子もやっぱり可愛いという惚気へと収束していく。今日も馬鹿師匠は、馬鹿弟子の先を行っているのだった。
(う、う、う……しかし、この状況からどうやってキョウを誤魔化せば……)
当初こそ男を笑い飛ばして軽んじていた銀狐だが、次第にぎらぎらとした眼になってくる弟子を直視できなくなっていた。師への欲情を抑えているが完全に勃起している男の匂いを感じて、尾の下の秘所はえらいことになっている。もう抜かずに精を何度も注がれなければ満足出来そうにない。
しかしそれでは銀狐が医者として振舞った意味は、まるでなくなってしまう。
(くすん……甘えて、甘えさせてゆっくり休ませてやりたかったのに……)
完璧な仙人である銀狐と、半人前な道士である男では体力差は大きい。加えて封呪による底上げがあるとはいえ、もとから飲食不要な銀狐と人間の男では行動力の差異は如何ともしがたい。
男が自分の早漏さを恥じて師の秘所に尾を捻じ込もうとしているのも、全部が全部間違っているというわけでもないのだ。銀狐がそれを完全に求めていないという点は除いて。
(じゃがじゃが……甘露を飲ませ過ぎても、身体に……)
体力回復の補助薬は、定期的に男に与えている。それ以上の精力増強剤などについては、我が強いこの男には効き目が薄い。
強き者の血肉を貪って力を取り込もうとするほど、この弟子は浅ましくない。確固とした己自身を持ち合わせているこの男は、良くも悪くも安定している。大きく呪の悪影響を受けない分、不埒な恩恵についても目を向けない。
仙酒を飲んでもほろ酔うだけで、師との取り留めのない語り合いに心を砕いてくれるこの男は……本当に、本当に銀狐にとって掛け替えのなく大事にしたい存在なのだ。
そしてそんな愛する男を『発情期』などというわけのわからぬ設定で騙して、卑劣に犯しているのが銀狐なのである。弟子のせいで発情しているだけなのを、自分の身体の体質ということにして定期的にやってしまっているのであった。
(すんすん……上手の手から水が漏れる、薄汚いことをやっているわらわは、いつだってキョウに勝てんのじゃぁ……口惜しいぃ)
銀狐は鼻息荒く興奮している弟子を、潤んだ目で悲しく見つめた。男は性欲に囚われているように見えて、実際には師の精を解きほぐそうと試みているだけである。ただ銀狐のせいで暴走してしまっているだけなのだ。それを止めずに煽ったのもまた、銀狐自身である。
卑怯者ならば、どこまでも浅ましく行くしかない。銀狐は心の中で涙を流して弟子に謝罪した。
「とうとう、観念したか、師よ」
「ああ……」
銀狐が弟子を傷付けてへし折る覚悟を決めたことに、男は勘違いをした。抵抗が弱まった隙を逃がさずに、男はここぞとばかりに尾を引っ張って……。
キュポンッ。
――そして二又の尾が、根元から抜けるのを目にした。
「え……」
「変化と分身と幻術の応用の尻尾切りじゃ。大事ない」
弟子を極力傷付けぬように即座に種明かしをするが、男はもうそんなことなど聞いていなかった。銀狐の身体から切り離されたかのように見えた尾が元に戻っても、男の口は呆けたように開かれたままだった。
放置していればこの男は、自らの舌を噛み千切る。それを悟った銀狐は、さらに不意打ちで男の顔を……自らの秘所へと押し当てた。
「んぐっ!?」
「よく見るんじゃキョウよ、お主がしでかしたことを」
男の口に指でかませをして、さらに上から頭を押さえつけ、両脇から太ももで挟んで固定する。そして銀狐は秘所に左右から尾で触れて、肉壁の内側を男へと見せ付けた。
男がそこに目を奪われるのを見ながら、銀狐は馬鹿弟子を何年分もの実感を込めて叱っていく。
「……お主はもう二、三十年はわらわのここを見ながら過ごしてきたのう。お主を他の女なんぞに取られるのが嫌で、わらわは散々にお主の顔に押し当てて遊んできたが……そのときも一本筋じゃっただろ。そしてお主を誘惑しようとした馬鹿女のわらわのここが開いたのは、結局はお主がわらわのために何年も、わらわを変えようと愛撫してくれたおかげじゃ。だからといって、わらわのここがいつまでもそのときのままとは思うなよっ」
銀狐は肉壁から尾を離して、男の口から己の指も手元に戻す。そして開いたまま戻らない花びらの外周を、男の唾液で濡れた指でゆっくりとなぞっていく。
肛門から楕円に上っていき、膨れ上がっている陰核の周囲を弄って下り、尿道口には触れないで膣口へと至る。
そこでは穴が男の肉棒の太さにまで広がって、ひくひくと涙を流して本来入るべきものを待ち望んでいた。
「……股が緩い女と思われるのが嫌で、確かにお主の前では広げた形を見させてなかった。だがお主のものを納めていなくても、わらわのそこはとうにお主の形じゃ……お主だけのものなんじゃぞ。言わせるな、このっ……」
女の穴に魅了されている男の姿は滑稽だったが、そんな姿を見てやるのも癪で銀狐は顔をそらした。そして頬を膨らませて告げる。
「で、お主のものだけを愛撫するそこに、お主はわらわの尾を捻り込むのか? ほれっ、もう穴が小さくなって唇も閉じられておるぞ? 生娘みたいな筋の股じゃが、そこを愛情深く切り開いて広げたのはお主じゃぞ? 今度は師への仕置きで、無理矢理別の形を覚え込ませる気か?」
「……ごめんなさいでした」
「謝るな。お主が非を認めれば、お主の師はつけ上がるだけじゃぞ。ここは『次にその入り口に勝手に尾でも当てたら、望み通りに尾をぶち込んでやるぞ』とでも言え」
「……あんまり尾を当てるような真似をしたら、俺のをすぐに入れるぞ」
「う、む……よろしい。医者の眼から見ても、お主のそれは正しき行いじゃぞ」
ここまで弟子への教育目的でした、という流れに持ち込もうかと銀狐は目論むが、もうそんな雰囲気ではない。男は強い欲望を秘めながらも自省的で、楽しく師へと睦み合うという気は失せている。
しかし雌の匂いに当てられて、その肉棒は苛々と熱を放っている。控えめで無欲な弟子には珍しい姿で、どうにかしてその精を発散させてやらなければと義務感を覚える愛らしさであった。
弟子を蹂躙したい銀狐には都合良く、今日の男は無抵抗で師のことを受け入れてくれることだろう。この弟子が行為の後に後悔に苛まれて、夜に静かに嗚咽を洩らす姿は…………物凄く、見たい。
しかしそれでは、できる大人の女という自らのお遊びが台無しである。
そしてそれ以上に、そんなことをしでかした己は獣にすら劣る色魔であろう。もう陽の光の下で、この男と共に生きる資格さえも失うに違いない。
(ぐぬぬ……襲えば終わり、しかし据え膳食わぬは……だがキョウに罪悪感を抱かせたままでは今後の交わりも……ぐはっ)
鬼畜な所業に手を染めることに激昂して、銀狐は心の中で血反吐を吐いた。実際に行動に移そうものなら、即座に己の舌を噛み千切る程度には銀狐も覚悟が決まっていた。
それでも弟子を襲いたいと思ってしまうのが銀狐なのであるが。
(むむむ……もとはといえば、大元に悪いのはわらわじゃぞ。そこに気付かれないように、ここはわらわも控えめにするべきなのでは……?)
弟子とすることは確定であったが、欲張りにすべてを得ることは今回は出来ない。そもそも男に適度に甘えつつ、甘やかしてやるのが本来の目的であった。師との逢瀬に悩む、男のために。
銀狐も男のために、自分自身を自省する必要があるのだ。
(くぅ……仕方あるまい。今のわらわはこの男の師ではなく、ただのアサギリじゃ……)
愛する男のために渋々と、銀狐は石穴に入って身体を寄せた。ぎくしゃくする男を無視して陰部同士をぴったり当てて、銀狐は他人事のように振舞う。
「……愛する女に恥じることがあるならば修練を積め。今だけは他人の医者であるわらわの相手をしろ」
「……他人、の師?」
「うむ、本命のためには多くの女を抱け……そこで他人のわらわの出番じゃ。医者として、お主の悩みを解決するために身を差し出すのも当然じゃぞ」
「他人、って……」
「わらわはお主の愛人になれても恋人にはなれん女じゃ。何せお主とは手を握り合ったこともないのだからな。それともお主は本当に、他人の女を連れて来られて練習台にしたいのか?」
「……医者の言葉に従います」
「そうか、では入れるぞ」
男から顔を逸らしつつ、銀狐はまだ固さを保っている肉棒を自らの内に納める。内側では男を弄りも揶揄もせずに、ただ温かさでもってその場にいるだけで嬉しいという気持ちで受け入れていく。
銀狐の今までにない受け止め方に、二人は共に震えた。
(う、これは…………)
互いに顔が赤くなって思いが伝わりつつも、銀狐は大人の余裕を見せるべく早口で男に告げる。
「今のわらわはただの穴だからして勝手に出すでないぞ。医者とはいえ他人に出す男なんて情けないのじゃ何とか耐えろ」
「が、頑張ってみる……」
「出すなよ、わらわがただのお主用の穴として振舞ってやっているのだからな。お主がわらわの弟子で寝所番であることには何ら変わりはないのだぞ」
「は、はい……」
「……しかし弟弟子の粗相を許すのも姉の務めじゃ。わらわが寝た後に一回、一回くらいならお主が射精しても見なかった振りをしてやろう」
「……朝まで、耐え切って見せます」
「そ、そうか……うむ、医者としての忠告だが無理は……するなよ」
「……ああ」
顔を背けていたはずなのにどんどんと近づいて来てしまって、いつの間にかお互いに口付けをしそうになっていた。今の状態から男を誘うのは嫌で、銀狐は慌てて目をそらす。そして瞳を閉じて息も止めて、心から念じ続ける。
(わらわは穴じゃ♡ 好きなときにキョウに使われて包み込む、ただの肉穴じゃぞ♡)
何にもしていないのも関わらず、銀狐の心の中からは確かな幸福感が湧き続ける。一箇所だけしか繋がり合っていないのに、それですべてを肯定できると全身が幸せに満ち溢れる。
快楽を得ることを目的とせずに、しかし男から射精してしまうならばしょうがないこんっ♡と、待ちの立ち回りは新鮮だった。これに比べたら弟子に己を眠姦させたことも、まだまだである。受けながら攻めるこれならば、男の罪悪感を羞恥心へと塗り替えて、その肉欲を余すことなく受け入れられる。石女の自分も、こんな形で男を愛せたのだ。
男との逢瀬に銀狐も成長して、弟子の手管に手を染めたのだった。
(こんこ~ん♡ お主が動かなければわらわも動かんのじゃ♡ お主も動かんでわらわの心地良さを理解するが良いぞ♡)
……男も師の真似をして石となってやり過ごそうとするが、魅力的な師が全身で男への愛を伝えてきていることに、どうしても邪念が入る。一物がぴくぴくと震えて、その度に大人の余裕でもって銀狐の肉穴で緩く受け入れられる。それに抗うのは……耐え難い。
結局は朝までどうにか凌いだものの、目覚めた師に『良い子♡良い子♡』と頭を撫でられて男は射精をしてしまった。その後にも朝の体操をいつもよりねっとりとやられて、男は銀狐の胸の中に撃沈してしまうのであった。
そんな男も後に石化の応用で回復力を高めて、銀狐の大人の誘惑にもなんとか乗り切って見せるのであった。先生としてはそれなりにまともな銀狐に、男はより敬意を払うことになるのだが……まあ当人達が幸せなので、余人からどう見られようが関係ない話なのであった。
「キョウよ、今からわらわはお主の赤子じゃ。拾い子じゃが乳をたんと吸わせてくれるか?」
「う、うむ……頑張ってみよう……」
……師に勝手に性感帯を増やされていく男であったが、それもまあ当人たち以外には関係のないお話。
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