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公爵令嬢を蹴落としたい
しおりを挟む他の魔法こそ才能が無いものの、エミリーは魅了の魔法に優れていると自負している。
伯爵家なので爵位はまぁまぁ高位ではあるが家格でいうとそれほど力のある貴族では無い上に、特に他になにも取り柄や優れていることはなかった。
(いえ……あったわ)
生まれつきの美貌。
それがエミリーの自信でいちばんの持ち札だった。
平民であった母と伯爵の父を持つエミリーは、貴族のライバル令嬢達を蹴落とし、身分の壁を乗り越えて父を虜にした母の話を聞くのがとても好きだった。
姉も容姿こそ似ているのだが、愛嬌がなく笑顔が少ない。
男性にあまり好まれるタイプではなかった。
だから、父に似たのか商才にだけは恵まれいた為、それを生かして伯爵家の跡取りとして他所の子息達に負けぬ程の敏腕な商売人になった。
エミリーは姉のような商才は無かったが、学園に入って可憐だと持て囃されて嬉しかったし、鏡を見る度に当然だとも思っていた。
家業や勉強をするよりもより良い子息に嫁ぐことが目標だ。
周りはいつも子息達に囲まれ、プレゼントが沢山な所為で帰りの馬車はいつも荷がいっぱいだった。
そんな特別な自分が特に大好きなのだ。
「エミリー嬢、ぜひ私とお付き合いをして欲しい!」
「いや!僕とまずはデートに行こう!」
「ずるいぞ、僕とだ!!」
でもなぜか満足できなかった。常により良い男を探して伯爵家に嫁げた母のように私に見合うもっといい男を捕まえたかった。
(こんな雑魚ごときに私は勿体無いわ)
私の魅了は魔力がそれなりにある者には全く効かない。
けれど、とある教師に叱られそうになった時に新しい力を発揮した。
「君、ここは王侯貴族が通う学園であり娼館ではない!胸元の閉じたドレスを着なさい」
学園では魔法の授業以外では制服等は無く、皆それぞれ品位を守るためと学園内での格差を目立たせ無い為に簡素なデザインのドレスを着ていた。
(それじゃあ私の魅力は伝わらないわ……!お母様譲りの美しい身体は私の武器なのよ!仕方ないわね……)
「そ、そんな……先生、どの辺が娼婦だと言うの?酷いですわ、私、父に相談させて頂きます」
その教師の家門が大した事ないのは知っていた。
だから、一応伯爵である父の名を出せば簡単に引き下がると思ったが、そうはいかなかった。
「そ、それは!見ての通り他の方々は学生として慎ましい装いをされております。デボラ令嬢もそれに習うべきでしょう」
エミリーは心の中で舌打ちし、こんど寄せた胸で先生の腕を挟むように縋りつき反省しているかのように涙を流した。
そして、一か八かバレないように魅了を使った。
「私のどの辺が皆さまと違うのでしょうか……センセイ?」
どうやら魅了にはかからなかったが一時的に媚薬のような効能があるらしく、教師という立場であるにも関わらず私の胸元に顔を埋めだらしなく顔を緩めていた。
「あっ先生いけませんわ!あの、ご指導は……?」
(このオヤジ、そろそろ離してよ気持ち悪いわ)
心の中で悪態をつきながら、どのくらい効果が持続するのか分からないので騒がしくなった窓の外をなんとなく眺める。
(きゃー!あれは、王太子様だわ!)
そこには王太子とその婚約者のセシールが皆に囲まれながら歩いていた。エミリーはその瞬間に王太子殿下が欲しくなった。
(あんなに持て囃されていずれは国王になるのだものね。しかもなんて美丈夫なの!)
セシールもかなりの美人だ。けれどエミリーは顔だったら負けていないしなんとでもなるわね!なんて心の中でほくそ笑んだ。
欲望とは不思議なもので一度火をつけると止められないらしい。それはこの胸元に埋まる馬鹿な教師も同じなようで冷めた目でそれを他人事のように眺めながら考え耽る。
(近くへ寄れて、触れて見つめ合えるチャンスさえあればいいのよね)
欲を駆り立てるこの魅了の力使えないかしら……
そして考え抜いた末に、虐げられている場面を自分で演出し"たまたま"通りがかった王太子に助けられ、相談を会う口実に時々力を使い惑わせながら王太子の寵愛を受けていると噂が立つほど親しくなれた。
だが王太子はセシールを愛していた。
王太子とて年頃の男。色事を匂わせる噂が出回れば流石に婚約者とは上手くいかなくなると画策し、怪我をしたと王太子に近寄った。
そして動揺している王太子に力を使い引き寄せたのだが、突然開かれた扉によって意識は引き戻され失敗した。
けれどそれは嬉しい誤算へと変わったのだった。
マチルダが暴走してくれたおかげでセシールに王太子の欲に駆られる姿を見せつけることができたのだから。
(に、してもあの隣の美しい男は辺境伯子息のクロヴィス様じゃない!なんであの女にはいい男が集まるの?こうなったら全員私が手に入れてやるわ!)
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