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彼はそれでも愛したい
しおりを挟む地下牢に入れられたギデオンは考えていた。
魅了にかけられていたということには気づいて居なかったが、きっとエラサに入ってそれは解けてしまっていた。
彼は嫉妬深い性格であり、多くの男達と肌を合わせるエミリー嬢に気付いていたし、その時点で盲目的な想い等消え失せていた。
それでも彼は、元より自由で女性らしいエミリーに惹かれており、彼女の悪すらも愛おしいと思うようになっていた。
他の者に体を許すエミリーを愛しているけど憎い、
憎いけど彼女を愛さずにはいられない。
その葛藤は、余計にギデオンを恋の沼へと沈ませて行った。
ーー地下牢
「ちょっと!出しなさいよ!!!!私が何したっていうのよ!!!」
決して広いとは言えない寒々とした地下牢に、とりあえずとばかりに、乱雑に放り込まれた2人の反応は違っていた。
物思いに耽っているギデオンに対し
絶えず大きな声でエミリーは騒ぎ立てていた。
「ギデオン!貴方どうにかしなさいよ!!!!使えないわね!!!本当は貴方はいちばん最後のスペアだったのに、テオ様もダグラス様も………ほんとムカつくわ!!!」
ギデオンの心はエミリーに切り刻まれていった。
エミリーは奔放ではあるが、ギデオンだけを愛してくれていると信じていたからだ。
瞬間に、裏切りへの憎しみ、愛おしいからこそくるどす黒い欲望に飲み込まれる感じがしてエミリー嬢を組み敷き、彼女の脱がしやすいドレスを丁寧に脱がさず、引きちぎった。
「キャアァァァァ!!やめなさいよ!なにすんのよ、あんたとはもう、じゅうぶんしたでしょ!!!!役立たずのくせに!!!」
憎しみのまま、彼女を貪った。
涙を流し、必死で抵抗するエミリー嬢の姿に、なぜか征服欲が満たされた。彼の欲望が何度も吐き出され、虚な目をした彼女に自分の上着をかけて大切に横にさせた時、地下の廊下を複数の足音がこちらへ向かってきた。
「ひっ…!」
初めて感じる、臭いとそのエミリーのあられも無い姿、目の前状況にセシールは恐怖を感じた。両手で口元を押さえて、蒼白な顔をしたセシールの前に、テオドールとクロヴィスが庇うように立ち塞がったと思ったら、ダンテによりその視界は暗く遮られた。
同じように顔を蒼白にし、動かなくなったマチルダの前に立ち、彼女の視界を遮るように抱きしめたのはリシュであった。
ダグラスは目の前の状況に、目を逸らした。
ダンテは兄の見たことの無い姿と、何かを悔やむような、決心をしたようなその表情をただ悲しそうに見ていた。
すると、エミリー嬢を庇うように抱え込んだままのギデオンが口を開いた。
「殿下、」
「まずはソレをどうにかしろ、セシール達も居る。」
クロヴィスが感情のない瞳でそういうと、ギデオンは強く抱え直し、エミリー嬢を抱きしめた。
痺れを切らしたように、テオドールが魔法をかけ、エミリー嬢の衣服を元に戻した。
「ギデオン、彼女を置いてくれないか。」
きちんと洋服を着たエミリーを冷たい床にそっと寝かせて、ギデオンはテオドールに向き直った。
「ギデオン、貴方は魅了にかけられている可能性がある。」
ギデオンはその言葉を呑み込むようにゆっくり瞬きをして言った。
「もう、とっくに解けています…。それでも俺は、エミリー嬢を愛してしまった。彼女の悪すらも愛おしい。」
泣きそうな顔で、そう言ったギデオンはその言葉を続けた…
「彼女が俺を愛していないのは、知っている。だけど、もう戻れない。殿下、今までありがとうございました。
ウチで肌の色がこんなにも黒いのは俺だけで、婚外子だと、子供の頃に他の者達に虐げられていた時に、あなたに救われた。
いつも分け隔てない優しさを持ち、常に圧倒的な強さの貴方をとても尊敬していた。せめて…貴方に罰されたい。」
ギデオンは真っ直ぐにテオドールを見てそう言ったが、
テオドールは悲しげに目を伏せ、
「貴方を裁くのは私ではなく法だ。
ギデオン、貴方は良い友人だった。ありがとう。」
そう言って振り返り、侍従のクレマンに
「ギデオンとエミリー嬢の牢を別々に。」
すると、扉の前にいるエイダとエイミーが、一瞬で地下へ降りてきて、焦ったように言った。
「王都にてクーデターが起こりました。次代の聖女であるエミリーを無実の罪で捕らえたと、貴族派による反発だと…っ」
「っそして、その背後には、エレメント・シズリー・アルベーリア…………王弟殿下です。」
聖女を蔑ろにする、現王を愚王とし、王弟であるエレメントを王に、そう描かれたシナリオは、見事に兵達を狩立たせ、次々と王都に攻め入っていた。
そして、最悪の事態はここ、エラサにも訪れる。
「ランスロット辺境伯より、伝達です!エラサ西側、聖なる森よりエラサに進入予想です。 北の国境を避け、東西に分けて隣国エウリアスよりアルベーリアへ進入!セルドーラとエウリアスよりかなりの軍勢でエラサへ向かって居ます!」
(賽は投げられた、)
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