公爵令嬢は破棄したい!

abang

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お嬢様を慰めたい

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セシール様を連れて帰ってきた、三人だがどうやら険悪なようで、顔を腫らしたリアムは特におかしい。


リアムに氷水を手渡し、何があったのかと問うとリアムはどよんとした雰囲気で「聞かないでくれ…」と疲れたように去って行った。


エイダが立腹したように「放っておきましょう!」と言うので、
エイミーの方を見ると「お嬢様に無礼を働いたの!」と怒っていた。


とにかく、どちらにしろセシール様の部屋の護衛をする当番なので部屋の前へ行くと、ちょうど湯浴みをした後のセシール様が帰ってきた所で頭を下げ、「お帰りなさいませ」と声をかけた。


「あっ…ダンテただいま帰ったわ。」


いつも通り微笑むセシール様だがなんだか少しいつもと違うような気がしてチラリと頭を下げたまま覗き見ると、セシール様はいつもの寝衣の胸元を少し隠すような仕草でどことなく心配そうな表情に見えた。


「良い一日を過ごされましたか?」


「ええ、とても多くの事があったわ….」




「そうですか…廊下は冷えます。部屋にお入り下さい。」



「そうね、いつもありがとうダンテ。」


「聞き手が必要な時はいつでもお呼び下さい。扉の前におります。」


ダンテの優しさにセシールは温かい気持ちで、部屋に入った。


セシールは最近あった出来事が頭を巡り、眠れなかった。

エラサに大軍が押し寄せた時も、ノーフォードの仕事をするときも、勉学も、社交会も涼しい顔をしてるも言われたが、セシールなりに考えながら、ノーフォードの評判に見合う自分になるべく行動してきた。ただがむしゃらであったがどれも想像以上の評価をいつも得て居た。


「なのに、婚約者とも上手くいかず、この歳になってもまだ男性とも上手く接することが出来ていないなんて….」



ふと、扉の向こうのダンテを思い出して扉の前に大きなクッションを置いて、背を扉に預けて話し出した。


「ダンテ、今日ね…」

セシールはダンテに今日あった事を話した。誰かに聞いて欲しかったのだ。



「マチルダやクロを見て、わたくしだけ子供の頃から時間が止まっているようだと感じたの」


すると、背中に軽く振動を感じ、ダンテも同じように扉に背を預け座ったのだと分かった。



「セシール様…大丈夫ですよ。皆が同じではありません。私と兄も全く違いました…だけど兄を最後に見た時は愛する女性の為に全てを捨てた馬鹿だとは思いませんでした。」


「貴方も、それほどに人を愛したことがある?」


「過去にそういう記憶はございませんが、強いて言えば今がそうなのかも知れません。」


「貴方にも愛する人がいるのね…私もいつか分かるかしら?」



「ええ、きっと。」


「欲とは怖いものね、愛すらも穢してしまうのかしら」


「いいえ、私の想い人はとても純粋な方で、彼女を決して穢すことはしません。愛を穢してしまう行為があったのだとしたら、それは愛ではありません。」


「そうなのね、貴方も想い人に欲を抱く事はある?男性は皆そうだと聞いたわ….」


「…間違いではありませんが、欲というよりは、愛おしくて触れたくて仕方がないのです。身を委ねると言うことには言葉では伝わらない愛情を表現する手段だと言う人もいます。」


「…でははしたない事ではないの?」


「リアムはきっとセシール様が多くの男性の心を奪ってしまうので、心配になったのでしょう。幸せにやってほしくて。」


「そんな、あり得ないわ。でもリアムには感謝しているわ。」


「実際に私も彼女想い人の些細な姿にお腹の奥から何か込み上げるような衝動に駆られる時もあります。」



「そんな時はどうしているの?」


「私は、辛抱強い方でして。」クスクス

「触れずともその存在を感じるだけで幸せなんです。」

今みたいに、と優しい声で言ったダンテにまるであなたが好きだと言われたようでびっくりしたが、想い人の事よねと冷静になりダンテにお礼を言った。


「ダンテ、ありがとう。」


「ええ。ひとつリアムに共感することは、貴女を大切にしてくれる人を愛して下さい。」


おやすみなさいと言ったダンテの背が離れたのを感じてセシールもベッドへ戻った。


(愛とはきっと素敵なものよね。)

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