71 / 75
辺境伯夫人は小公爵
しおりを挟むあれから驚くほど早く月日は経ち、彼女達の卒業はもう間近となっていた。
何が変わったと言われればなにも変わって居ないような、そんな穏やかな日々を過ごしていた。
「お嬢様、もうすぐご卒業ですね」
「ダンテも同じでしょう、ふふっ」
公務をしているセシールの後ろに控えたダンテが懐かしげに言うので少し笑った。
ダンテは大切そうにそっとブランケットをセシールの肩にかけて愛おしげに見て言った。
「もうすぐ……成人されますね」
「それも、貴方もでしょう?」
「ええ、そうですね」
皆それぞれエラサでの功績を認められ、爵位や褒美を貰っていたが、彼はエラサでの功績で伯爵位を手に入れていた。
それは、ノーフォード小公爵に誓いをした騎士だということを差し引いても珍しいほどの大出世だった。
あれからの月日な長いようで短く、セシールの結婚の日までもうすぐだと言うのに、彼女への気持ちを無くせた者は居なかった。
けれど正面切って、クロヴィスに対抗するものなどリアムくらいのものである。(リアムのは少し違うかもしれないが)
「……急いで消さずとも、きっといつか形が変わる」
「ん?なんの話かしら?」
「どちらにせよ私はセシール様が大切で仕方がないと考えていただけです」
優しく微笑んだダンテはセシールよりも大人びて見えた、セシールは少し照れたように、こほんっと咳払いをして書類に向き直った。
「ありがとう。私も貴方達がとても大切よ」
「ふふ、それで我慢しておきます」
「?」
荒々しいノック音と顰めっ面が現れてダンテは内心で「噂をすれば……」と考える。
「口説いてんじゃねーよ」
(お嬢様、お客様がいらしています)
「……リアム」
急に何だ?と呆れたような顔のセシールとは対照的に今にも笑ってしまいそうなダンテは深呼吸をしてリアムに指摘する。
「心の声と逆になってないかな?」
「んなっ!……え?どっち言った?今」
「口説いてんじゃねーよ。と部屋に入るなり言いました」
セシールが戒めるように言ってリアムを見ると、肩を落として素直に謝罪をする。
「申し訳ございません。お嬢様にお声をかけるつもりが無礼を働きました」
「いいのよ、……ふっ」
とうとう笑ってしまったセシールに恥ずかしそうにリアムは姿勢を正して、本来の目的を不服そうに伝える。
「お嬢様、ランスロット様がいらしております」
「あら、それは大変……!お待たせしてしまったわね。急いで行くわ」
--
「クロ」
「セシール、急ですまない。送ればよかったんだが……」
「まぁ!私に?開けてもいいかしら?」
クロヴィスは大きめの箱を侍従から受け取り、置いた。
嬉しそうなセシールの言葉に頷くのを確認すると、
リアムが箱を開け、セシールはキラキラと目を輝かせ、それを取り出した。
「なんてキレイなドレスなの!クロ、ありがとう……!」
「あぁ。少し早いが卒業パーティーの為にそれを贈ろうと」
「送ってくれてもよかったのに、来てくれたのね」
「直接渡したくてな、それと……遅くなったがコレを」
セシールの指につけられたのは、大きめのダイヤに似て異なるとても珍しい魔法石の指輪であった。
それは、とても珍しいのに加えて、発掘出来たとしてもとても硬く、魔力を有するため加工に手間と時間がかかる。
よって、王族でも簡単に手に入れる事ができない最高級品であった。
「とても、キレイ……!!ほんとうにありがとう、クロ」
セシールは嬉しそうに頬を染めてクロヴィスに抱きついた。
「間に合ってよかったよ」
こちらもまた、目を細めて嬉しそうにセシールをギュッと抱え直した。
見ていられない、と言うようにそっと退出したリアムに、部屋の前に控えるダンテは苦笑していた。
そしてそれを身につけた彼女のその完璧な姿は当日、アルベーリアに留まらず他国にまで噂となる程美しかったという。
そして、程なくして盛大な披露宴が行われ、二人は生涯の伴侶となった。
「お嬢様……っ」
「大丈夫よリアム、直ぐに帰って来るのだし」
「……お気をつけて。明日お迎えに上がります」
ランスロットの王都の邸はそう遠くはないが、そこで二人は新婚生活をする事になる。
まだノーフォード敷地内の別邸から荷物が移されておらず、セシールの部下達はエイダとエイミー、アンだけが初夜、ランスロット邸へ同行することとなっていた。
ランスロット邸で案内された部屋は、比較的殺風景な邸からは想像もできない程、華やかだが上品な部屋だった。
「セシール、この部屋は寝室を挟んで俺の部屋と繋ぎになっている」
「その、寝室は一緒でも構わないか?」
セシールはボッと顔を一気に赤くさせる。
「か、構わないです、夫婦だもの……」
そして、その日の晩ーー
「お嬢さ……奥様、今日は特段お美しいです」
「これなら、旦那様も……!!」
「エイダ、エイミー!お嬢様、寝衣はこちらを」
キャッキャと楽しそうに手入れをする二人に続けてアンが持ってきたのは、淡いピンクのフリルを施された可愛い下着と、透き通る柔らかくて上質な生地のネグリジェでセシールはとうとう、声にならない声で諦めたように返事をして、着替えた。
「~~っ!分かったわ」
36
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない
ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。
公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。
旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。
そんな私は旦那様に感謝しています。
無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。
そんな二人の日常を書いてみました。
お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m
無事完結しました!
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」
「……あぁ、君がアグリア、か」
「それで……、離縁はいつになさいます?」
領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。
両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。
帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。
形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。
★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます!
※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる