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第2章 石の花
第10話 お召し
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「そ、その……凜凜が……凜凜がなにか粗相をしましたか?」
雪英は、最初震える声でそう問いかけた。
凜凜なら不思議はない。医局で出会ったときに何かあったのだ。そう思ったのだろう。
玄冬殿の面々も青ざめた顔で凜凜を責めるように見やった。
「それでしたら平に伏してお詫び申し上げます。その子は……その、そそっかしい子ですが、悪い子ではないのです。どうか、どうか、お許し願いたく……」
――雪英様が私を心配してくださっている。
凜凜の冷えた体に一筋の炎が灯るようだった。
しかしその炎は一瞬で消え去った。
「ああ、なあに、心配することは何もない。ただ、閨に誘っているだけだ」
ぐらりと、雪英の体が揺れた。
慌てて周りの女官と古堂が雪英を椅子に座らせる。
凜凜の頭は真っ白になり、放たれた言葉の意味がよくわからなかった。
ただ、雪英の顔に浮かんでいる苦悶に近い表情が、凜凜の心に灯った炎をかき消していった。
「ね、閨に……その子を……?」
雪英がわななきながら、青ざめた顔で問いかける。
「ああ、借りていくよ。さあ、おいで凜凜」
皇帝の呼び掛けに、凜凜の体は動かなかった。
どうしていいのかわからなかった。
助けを求めるように雪英を見る。
雪英と目が合った。その目は今まで見たことがないくらい冷たかった。
雪英は自分を助けてくれない。凜凜にはそれがすぐにわかった。
「し、支度をさせます。お時間をいただけますか?」
主人に代わって古堂が振り絞るようにそう言った。
「ああ、待つよ」
雪英の正面の椅子に皇帝は腰掛けた。
古堂は凜凜を抱きすくめるように部屋から連れ去った。
「服を持っておいで! 髪も結い直すよ! お前は化粧道具を!」
古堂が宮女たちに声をかける。凜凜は瞬く間に宮女の服を脱がされた。
「こ、古堂様……」
凜凜はようやく言葉を発することができた。
「お前は雪英様といっしょに礼儀作法を習っているだろう。十全と言わずとも、最低限のことはできるはずさ」
「で、でも……でも……わ、私は……」
「皇帝陛下のご命令は絶対だ」
古堂の表情は優れなかった。
「……お前の気持ちはわかる。雪英様のことは私達に任せて、行っておいで」
そういうと古堂は凜凜を強く抱き締めた。冷たい女傑で通っている古堂がこのようなことをするのはめったにないことだった。
凜凜は泣きそうになりながら、衣を着させられるままになった。
飾り立てられた凜凜を皇帝は迎え入れ、そして玄冬殿から凜凜を連れて出て行った。
玄冬殿の外には輿が用意されていて、凜凜は皇帝といっしょにその中に押し込められた。
雪英の顔を見ることもなく、凜凜は揺れる輿の中、皇帝を見ることもできず、ただひたすら色鮮やかな布の乗る膝を見ていた。
輿の外では雪は未だ降り続いていた。
雪英は、最初震える声でそう問いかけた。
凜凜なら不思議はない。医局で出会ったときに何かあったのだ。そう思ったのだろう。
玄冬殿の面々も青ざめた顔で凜凜を責めるように見やった。
「それでしたら平に伏してお詫び申し上げます。その子は……その、そそっかしい子ですが、悪い子ではないのです。どうか、どうか、お許し願いたく……」
――雪英様が私を心配してくださっている。
凜凜の冷えた体に一筋の炎が灯るようだった。
しかしその炎は一瞬で消え去った。
「ああ、なあに、心配することは何もない。ただ、閨に誘っているだけだ」
ぐらりと、雪英の体が揺れた。
慌てて周りの女官と古堂が雪英を椅子に座らせる。
凜凜の頭は真っ白になり、放たれた言葉の意味がよくわからなかった。
ただ、雪英の顔に浮かんでいる苦悶に近い表情が、凜凜の心に灯った炎をかき消していった。
「ね、閨に……その子を……?」
雪英がわななきながら、青ざめた顔で問いかける。
「ああ、借りていくよ。さあ、おいで凜凜」
皇帝の呼び掛けに、凜凜の体は動かなかった。
どうしていいのかわからなかった。
助けを求めるように雪英を見る。
雪英と目が合った。その目は今まで見たことがないくらい冷たかった。
雪英は自分を助けてくれない。凜凜にはそれがすぐにわかった。
「し、支度をさせます。お時間をいただけますか?」
主人に代わって古堂が振り絞るようにそう言った。
「ああ、待つよ」
雪英の正面の椅子に皇帝は腰掛けた。
古堂は凜凜を抱きすくめるように部屋から連れ去った。
「服を持っておいで! 髪も結い直すよ! お前は化粧道具を!」
古堂が宮女たちに声をかける。凜凜は瞬く間に宮女の服を脱がされた。
「こ、古堂様……」
凜凜はようやく言葉を発することができた。
「お前は雪英様といっしょに礼儀作法を習っているだろう。十全と言わずとも、最低限のことはできるはずさ」
「で、でも……でも……わ、私は……」
「皇帝陛下のご命令は絶対だ」
古堂の表情は優れなかった。
「……お前の気持ちはわかる。雪英様のことは私達に任せて、行っておいで」
そういうと古堂は凜凜を強く抱き締めた。冷たい女傑で通っている古堂がこのようなことをするのはめったにないことだった。
凜凜は泣きそうになりながら、衣を着させられるままになった。
飾り立てられた凜凜を皇帝は迎え入れ、そして玄冬殿から凜凜を連れて出て行った。
玄冬殿の外には輿が用意されていて、凜凜は皇帝といっしょにその中に押し込められた。
雪英の顔を見ることもなく、凜凜は揺れる輿の中、皇帝を見ることもできず、ただひたすら色鮮やかな布の乗る膝を見ていた。
輿の外では雪は未だ降り続いていた。
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