その愛は縄を伝って継がれる【8話完結】【R18】

新月蕾

文字の大きさ
6 / 8

第6話 唐突な終わり

しおりを挟む
 そんな日々が一生続くのだろう。
 セシリアがそう思い始めた頃、その日は唐突に訪れた。

「…………」
 その日もセシリアはレイナルドの手で縄に吊されていた。
 声を聞かせたくないと悲鳴を我慢する力も失われ、少しの責め苦で獣のような咆哮を喉から発するようになっていた。
 レイナルドはたとえ獣のように聞き苦しい声でも嬉しそうだった。

 そんな地下牢の扉が突如として乱暴に開かれた。
「なんだ……?」
 珍しくレイナルドが顔をしかめて振り返り、その顔には驚愕が浮かんだ。
 扉を開いたのはレイナルドの父、イェルコース侯爵だった。
「父上……?」
 レイナルドは何故、ここに父が来るのかさっぱりわからないという顔をした。
「やっと……やっとだ、レイナルド、突き止めた。これでお前を放逐できる……!」
 イェルコース侯爵は苦々しい顔でそう言った。
「おい、夫人を……いいや、セシリア嬢を解放してやれ!」
 イェルコース侯爵は連れてきた部下たちにそう命じた。
「何をするんだ父さん!」
 レイナルドは口角泡を飛ばして叫ぶ。
「責め苦の最中だ! 父さんだって母さんを止めなかったじゃないか! どうして止めるんだ!」
「うるさい! お前に父さんなどと呼ばれる筋合いはない! この……アバズレと下郎の子が!」
「な、なんだって……?」
 レイナルドは呆然と立ち尽くした。
 その隙にセシリアはイェルコース侯爵の部下たちによって縄を解かれ、床に優しく下ろされていた。
「……どういう、ことですか……」
 すっかりかすれた声で、セシリアは問うた。
 自分でもそんな気力があることが驚きだった。
「セシリア嬢、今まですまなかった。このレイナルドは私の正式な跡継ぎとして王家から認定を受けていたので私も今までなかなか踏み切れなかったのだ」
 イェルコース侯爵は心底痛々しいものを見る目でセシリアを見た。
「だが、妻の浮気の証拠が見つかった。そいつは私の血を、この侯爵家の血を継いでいない。それさえわかれば王家にも廃嫡を申し出ることができる」
「うそだ……」
「嘘じゃない、お前は罪の子だ、レイナルド」
「うそだあ!」
 レイナルドは頭を抱えてそこにしゃがみ込んだ。
「やめてくれ……セシリアを連れていかないで……父さん……助けてよ……痛いよ……苦しいよ……許して……お母さん……僕は……」
 レイナルドの目はここを見ていなかった。
 どこか、遠くを見ていた。
 セシリアは心の奥に憐れみを抱きながらも、安心感から気を失った。
 次に目を覚ましたとき、助けられたことの方が夢になっていないことを祈りながら。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...