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第6話 唐突な終わり
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そんな日々が一生続くのだろう。
セシリアがそう思い始めた頃、その日は唐突に訪れた。
「…………」
その日もセシリアはレイナルドの手で縄に吊されていた。
声を聞かせたくないと悲鳴を我慢する力も失われ、少しの責め苦で獣のような咆哮を喉から発するようになっていた。
レイナルドはたとえ獣のように聞き苦しい声でも嬉しそうだった。
そんな地下牢の扉が突如として乱暴に開かれた。
「なんだ……?」
珍しくレイナルドが顔をしかめて振り返り、その顔には驚愕が浮かんだ。
扉を開いたのはレイナルドの父、イェルコース侯爵だった。
「父上……?」
レイナルドは何故、ここに父が来るのかさっぱりわからないという顔をした。
「やっと……やっとだ、レイナルド、突き止めた。これでお前を放逐できる……!」
イェルコース侯爵は苦々しい顔でそう言った。
「おい、夫人を……いいや、セシリア嬢を解放してやれ!」
イェルコース侯爵は連れてきた部下たちにそう命じた。
「何をするんだ父さん!」
レイナルドは口角泡を飛ばして叫ぶ。
「責め苦の最中だ! 父さんだって母さんを止めなかったじゃないか! どうして止めるんだ!」
「うるさい! お前に父さんなどと呼ばれる筋合いはない! この……アバズレと下郎の子が!」
「な、なんだって……?」
レイナルドは呆然と立ち尽くした。
その隙にセシリアはイェルコース侯爵の部下たちによって縄を解かれ、床に優しく下ろされていた。
「……どういう、ことですか……」
すっかりかすれた声で、セシリアは問うた。
自分でもそんな気力があることが驚きだった。
「セシリア嬢、今まですまなかった。このレイナルドは私の正式な跡継ぎとして王家から認定を受けていたので私も今までなかなか踏み切れなかったのだ」
イェルコース侯爵は心底痛々しいものを見る目でセシリアを見た。
「だが、妻の浮気の証拠が見つかった。そいつは私の血を、この侯爵家の血を継いでいない。それさえわかれば王家にも廃嫡を申し出ることができる」
「うそだ……」
「嘘じゃない、お前は罪の子だ、レイナルド」
「うそだあ!」
レイナルドは頭を抱えてそこにしゃがみ込んだ。
「やめてくれ……セシリアを連れていかないで……父さん……助けてよ……痛いよ……苦しいよ……許して……お母さん……僕は……」
レイナルドの目はここを見ていなかった。
どこか、遠くを見ていた。
セシリアは心の奥に憐れみを抱きながらも、安心感から気を失った。
次に目を覚ましたとき、助けられたことの方が夢になっていないことを祈りながら。
セシリアがそう思い始めた頃、その日は唐突に訪れた。
「…………」
その日もセシリアはレイナルドの手で縄に吊されていた。
声を聞かせたくないと悲鳴を我慢する力も失われ、少しの責め苦で獣のような咆哮を喉から発するようになっていた。
レイナルドはたとえ獣のように聞き苦しい声でも嬉しそうだった。
そんな地下牢の扉が突如として乱暴に開かれた。
「なんだ……?」
珍しくレイナルドが顔をしかめて振り返り、その顔には驚愕が浮かんだ。
扉を開いたのはレイナルドの父、イェルコース侯爵だった。
「父上……?」
レイナルドは何故、ここに父が来るのかさっぱりわからないという顔をした。
「やっと……やっとだ、レイナルド、突き止めた。これでお前を放逐できる……!」
イェルコース侯爵は苦々しい顔でそう言った。
「おい、夫人を……いいや、セシリア嬢を解放してやれ!」
イェルコース侯爵は連れてきた部下たちにそう命じた。
「何をするんだ父さん!」
レイナルドは口角泡を飛ばして叫ぶ。
「責め苦の最中だ! 父さんだって母さんを止めなかったじゃないか! どうして止めるんだ!」
「うるさい! お前に父さんなどと呼ばれる筋合いはない! この……アバズレと下郎の子が!」
「な、なんだって……?」
レイナルドは呆然と立ち尽くした。
その隙にセシリアはイェルコース侯爵の部下たちによって縄を解かれ、床に優しく下ろされていた。
「……どういう、ことですか……」
すっかりかすれた声で、セシリアは問うた。
自分でもそんな気力があることが驚きだった。
「セシリア嬢、今まですまなかった。このレイナルドは私の正式な跡継ぎとして王家から認定を受けていたので私も今までなかなか踏み切れなかったのだ」
イェルコース侯爵は心底痛々しいものを見る目でセシリアを見た。
「だが、妻の浮気の証拠が見つかった。そいつは私の血を、この侯爵家の血を継いでいない。それさえわかれば王家にも廃嫡を申し出ることができる」
「うそだ……」
「嘘じゃない、お前は罪の子だ、レイナルド」
「うそだあ!」
レイナルドは頭を抱えてそこにしゃがみ込んだ。
「やめてくれ……セシリアを連れていかないで……父さん……助けてよ……痛いよ……苦しいよ……許して……お母さん……僕は……」
レイナルドの目はここを見ていなかった。
どこか、遠くを見ていた。
セシリアは心の奥に憐れみを抱きながらも、安心感から気を失った。
次に目を覚ましたとき、助けられたことの方が夢になっていないことを祈りながら。
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