『魔王』へ嫁入り~魔王の子供を産むために王妃になりました~【完結】

新月蕾

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第9話 はじめて

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「ああっ……」

 ユリウスを抱く手に力がこもる。
 目をぎゅっとつむった。
 私の中は強く締まり、ユリウスの鼓動がより鮮明に感じられる。

「ミラベル、動くぞ」

「はい……」

 ユリウスの手が私の腰に回る。
 私をしっかりと捕まえて、彼は腰を動かし始めた。

「やっ、んっ……」

 揺り動かされる体から漏れる声はブレている。
 肌と肌がぶつかり合う。
 いつの間にかかいていた汗が飛び散る。

 見上げればユリウスも余裕のない表情で私を見下ろしていた。
 肩で息をしていて、汗が私の上に滴っている。
 ユリウスのにおいがする。
 私の顔はどうなっているのか、想像すると恥ずかしくなって顔を手で覆い隠した。

「……ミラベル……」

「は、恥ずかしい……」

「そうか」

 ユリウスは問答無用に私の手首を掴み、顔の横に広げた。

「あっ……」

「真っ赤な顔だ……ずっとだが」

「み、見ないで……」

「分かった」

 ユリウスは私の顔の左側に再び顔を埋めた。

 耳元でユリウスの息づかいが聞こえる。
 くすぐったい。

「あっ……ああっ!」

 私はよくわからないままにもう限界だと感じていた。

「ミラベル!」

 胎の中にユリウスが精を放ったのが分かった。
 それと同時に、刺激で意識が飛んでいく。
 暗くなっていく視界の中、胎の中に広がる熱を、私は感じていた。



「…………」

 翌朝、目を覚ますと裸のまま二人で毛布にくるまっていた。
 ユリウスはすやすやと眠っていて、外はまだ薄暗い。
 目を閉じたユリウスの顔はずいぶんと穏やかだった。

 体を起こそうとすると、腰が痛んで体が言うことを聞かなかった。

「んっ……」

 下半身に違和感がある。
 恐る恐る見ると、太ももに白いものがしたたり落ちていた。
 昨夜ユリウスが私に注いだ精の一部が漏れていた。

 寝台の隣の棚にはタオルが置かれていたので、それを手に取り、太ももを拭う。

「…………」

 どうしたものか少し困ったけれど、とりあえず脱がされた寝間着を身に纏って、もう一度寝てしまうことにした。



 次に目を覚ましたとき、ユリウスはもういなかった。
 外は明るかった。
 私は寂しさを胸にしまいこんだ。



 しばらくベッドで佇んでいると、鐘の音が遠くから聞こえた。

「おはようございます、お妃様」

「おはようございます」

 ニンフとシルフが寝室に入ってきた。

「……さっきの鐘の音は?」

「陛下のための起床の鐘ですね。朝昼晩を告げます」

「ファーザータイムが鳴らしてくれるのですわ」

「ファーザータイム……?」

「時を司る魔族です。鐘の塔に棲み着いていて私達とはめったに顔を合わせません」

「私達、メイドの部屋にも個別のベルがあって、私達の起床用にはそれを鳴らしてくれます」

「ところで、お妃様、もう一度、お風呂に入られますか?」

 髪も何もかも乱れているだろう。
 王妃なのだ。そのために連れてこられたのだ。
 そうは言ってもこんな姿を見られることに恥じらいは止まらなかった。

「お風呂……入ります……」

 ノロノロと体を起こす。
 まだ節々が痛む。

「では湯を温めさせてまいりますね」

 一人のニンフがそう言って部屋を出ていく。
 お湯を沸かすためのサラマンダーを連れてくるようだった。

 その間にカーテンが開かれた。外が見える。
 窓の外は断崖絶壁であったが、空はいい天気だった。
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