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第65話 長い長い話
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「ん……」
ユリウスが私の隣で目を覚ます。
結局一睡もできなかった私は彼に抱きついた。
「おはよう、ユリウス」
「……朝?」
「覚えてない? 昨日アーダーベルトの城で倒れてから、朝まで寝こけてたのよ、あなた」
「……そう、だったな……ここは魔王城か?」
「ええ、あなたの部屋。レヴィアタンとそれにベヒモスが運んでくれたわ。あのアーダーベルトが乗ってた動物」
「ああ……ベヒモスか。あいつは本来、魔王に仕えていて、アーダーベルトの家には下賜されていただけだからな……。あいつとしては元の主の元に戻った気分なのだろう……」
ここはユリウスの寝室だ。
私の寝室は壁が修繕中だったので、私は看病ついでにこの部屋で寝ることになった。
「ヴァンパイアが怒ってたわよ。勝手にひとりで先行しやがってって」
「……ミラベルが心配だったんだ」
ユリウスはどこかすねたようにそう言った。
「ありがとう」
私は素直にそう言っていた。
「どう? 体の調子は。万能薬を飲ませたから瘴気の方はそう問題じゃないはずだってサルース先生は言ってたけど……」
「そうか……俺は問題ない。ミラベルの方は?」
「私も大丈夫」
「それじゃあ、話を……しようか、長い話を……俺が、黙っていた話を」
「……ええ」
私達の様子をうかがいに来たニンフとシルフたちが朝食を持ってきてくれる。
私達はベッドに並んでそれを食べながら、話を始めた。
「……どこから、聞きたい?」
「……あなたの話から」
温かいスープをすすりながら、私はそう言っていた。
いろいろなことがわからないままだったけれど、ユリウス自身のことをユリウスの口から聞きたかった。
「わかった」
ユリウスは遠くを眺めた。過去を懐かしむように。
「……俺は捨て子だった。人間界と魔界の境界線に捨てられた。死んでも良いと思われた子供だった。そこを、人間界から魔界へ戻る最中の先代魔王に拾われた」
「先代魔王が、魔界に戻るとき……って私が生まれた後……?」
「うん。先代魔王は人間界に湧き出た魔族を魔界に連れ帰るために人間界にお忍びで通っていた。……その内、君のお母さんに出会ったそうだ。彼は常々言っていた。自分の子供と別れた直後に人間の子供を拾うなんて、これも何かの運命だろう、と。先代魔王は俺を賢者やドラキュラ、ニスナスと引き合わせてくれた。元人間の賢者も、人間と浅からぬ関係にあるヴァンパイア族も、人間と悪魔の末裔のニスナス族も、人間には比較的好意的だったからだ」
「…………」
「俺は先代への恩に報いたかった。頑張って勉強をした。魔法の練習も、剣の練習も、できうる限りのことをした。俺は、次期魔王に指名してもらえた。嬉しかった」
私はただただうなずいて聞いていた。
「……しかし、先代魔王は突如として体調を崩した。魔王族の寿命にはまだ早すぎた。診断はすぐに下った。番に引きずられているとのことだった。そこで先代は、君の母親が死んだことに気付いた」
「…………お母さん」
私を置いていってしまった母は、父も置いていってしまっていたのか。
「……先代は、その気になれば、新しい番を得ることができた。子供こそ出来たが、先代と君の母親の間には、まだ正式に番の契りは交されていなかったからだ。しかし、先代は君の母親に殉じることを選んだ。そして……彼は死んだ」
ユリウスの声はとても沈んでいた。
先代魔王、私の父の死は、彼の心を強く傷付けたようだった。
きっと本当の子供の私より、傷付いているだろう。
本当の子供の私より、よっぽど親子だったのだろう。ユリウスと父は。
ユリウスが私の隣で目を覚ます。
結局一睡もできなかった私は彼に抱きついた。
「おはよう、ユリウス」
「……朝?」
「覚えてない? 昨日アーダーベルトの城で倒れてから、朝まで寝こけてたのよ、あなた」
「……そう、だったな……ここは魔王城か?」
「ええ、あなたの部屋。レヴィアタンとそれにベヒモスが運んでくれたわ。あのアーダーベルトが乗ってた動物」
「ああ……ベヒモスか。あいつは本来、魔王に仕えていて、アーダーベルトの家には下賜されていただけだからな……。あいつとしては元の主の元に戻った気分なのだろう……」
ここはユリウスの寝室だ。
私の寝室は壁が修繕中だったので、私は看病ついでにこの部屋で寝ることになった。
「ヴァンパイアが怒ってたわよ。勝手にひとりで先行しやがってって」
「……ミラベルが心配だったんだ」
ユリウスはどこかすねたようにそう言った。
「ありがとう」
私は素直にそう言っていた。
「どう? 体の調子は。万能薬を飲ませたから瘴気の方はそう問題じゃないはずだってサルース先生は言ってたけど……」
「そうか……俺は問題ない。ミラベルの方は?」
「私も大丈夫」
「それじゃあ、話を……しようか、長い話を……俺が、黙っていた話を」
「……ええ」
私達の様子をうかがいに来たニンフとシルフたちが朝食を持ってきてくれる。
私達はベッドに並んでそれを食べながら、話を始めた。
「……どこから、聞きたい?」
「……あなたの話から」
温かいスープをすすりながら、私はそう言っていた。
いろいろなことがわからないままだったけれど、ユリウス自身のことをユリウスの口から聞きたかった。
「わかった」
ユリウスは遠くを眺めた。過去を懐かしむように。
「……俺は捨て子だった。人間界と魔界の境界線に捨てられた。死んでも良いと思われた子供だった。そこを、人間界から魔界へ戻る最中の先代魔王に拾われた」
「先代魔王が、魔界に戻るとき……って私が生まれた後……?」
「うん。先代魔王は人間界に湧き出た魔族を魔界に連れ帰るために人間界にお忍びで通っていた。……その内、君のお母さんに出会ったそうだ。彼は常々言っていた。自分の子供と別れた直後に人間の子供を拾うなんて、これも何かの運命だろう、と。先代魔王は俺を賢者やドラキュラ、ニスナスと引き合わせてくれた。元人間の賢者も、人間と浅からぬ関係にあるヴァンパイア族も、人間と悪魔の末裔のニスナス族も、人間には比較的好意的だったからだ」
「…………」
「俺は先代への恩に報いたかった。頑張って勉強をした。魔法の練習も、剣の練習も、できうる限りのことをした。俺は、次期魔王に指名してもらえた。嬉しかった」
私はただただうなずいて聞いていた。
「……しかし、先代魔王は突如として体調を崩した。魔王族の寿命にはまだ早すぎた。診断はすぐに下った。番に引きずられているとのことだった。そこで先代は、君の母親が死んだことに気付いた」
「…………お母さん」
私を置いていってしまった母は、父も置いていってしまっていたのか。
「……先代は、その気になれば、新しい番を得ることができた。子供こそ出来たが、先代と君の母親の間には、まだ正式に番の契りは交されていなかったからだ。しかし、先代は君の母親に殉じることを選んだ。そして……彼は死んだ」
ユリウスの声はとても沈んでいた。
先代魔王、私の父の死は、彼の心を強く傷付けたようだった。
きっと本当の子供の私より、傷付いているだろう。
本当の子供の私より、よっぽど親子だったのだろう。ユリウスと父は。
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