『魔王』へ嫁入り~魔王の子供を産むために王妃になりました~【完結】

新月蕾

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第70話 秘密の計画

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「……というわけで、どうしたものかと……」

「……ユリウスに全部ぶちまけるってのは、どうなの」

「……兄としては、それは最後の手段にしたいのです。お妃様には申し訳ないですが……」

「そうね……気持ちはわからないでもないわ……」

 別に私だってカーミラ嬢のことは嫌いではない。
 苦手意識はあるが、嫌うほどのことはされていない。
 彼女は、態度こそすこぶる悪かったが、言ってくれたことは正しかったから。

「ええと、じゃあ、ヴァンパイア族の策略についてだけ話すとか?」

「そう、ですね。結局それが丸い、のかな……」

 ヴァンパイアは気が進まなそうだった。
 まあ、身内の恥だ。進んで晒したいものでもなかろう。

「……じゃあ、私が、お茶会を受ける?」

「それは一番最悪の手段です」

 ヴァンパイアは断言した。

「……でも、カーミラ嬢の恋も、ヴァンパイア族の願いも、根本から片付けなければ、同じような策略が繰り返されるでしょう?」

「それは、そうなのですが……」

「仮に命を取ろうとしているのだとしても……私、魔王の娘だもの」

 私は胸を張った。

「魔王族のお城の瘴気も平気だったし、最近は四族と魔法の練習もし始めたの。風魔法の上達が早いってシルフが喜んでくれて、ニンフが悔しがって……ああ、いや、それはどうでもいいんだけれど」

 思わず横道に逸れそうになるのを、戻す。

「……その、ヴァンパイア族が何を企んでいるとしても、頑張れば、どうにかなるんじゃないかしら?」

「……………………うーん」

 ヴァンパイアはとても苦しそうだった。

「でも、うーん、ほら、アーダーベルトとの件があったばかりですから……これでうちの連中がお妃様を攫うとかしやがったら、ユリウスの逆鱗に振れることは間違いないですし……」

「そう……」

 なかなかに難しい状況だ。

「……でも、私とカーミラ嬢が仲良くしたら、ユリウスは喜ぶわよね?」

「え、あ、はい、それは、まあ」

「……じゃあ、挑戦してみたい」

 私は自然とそう言っていた。

「ヴァンパイア、私、カーミラ嬢と仲良くなりたい」

「…………わかりました」

 ヴァンパイアは観念したようにうなずいた。

「不肖、魔王陛下の執事、このヴァンパイア族ドラキュラ、お妃様がその覚悟であるならば、全霊を尽くしてお手伝いします」

「ありがとう」

「ああ、そうだ、よろしければ俺のことはドラキュラとお呼びください。ヴァンパイアと呼び続けるのは、その、ややこしくなると思いますので」

「そうね、そうさせてもらうわ、ヴァンパイア」

 こうして、私はカーミラ嬢と仲良くなるための一歩を踏み出した。
 すべてはユリウスのためだった。
 カーミラ嬢と私が仲良くなれば、ユリウスが喜ぶだろう。

 そういう思考のもとで、私は動き始めた。
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