70 / 105
第70話 秘密の計画
しおりを挟む「……というわけで、どうしたものかと……」
「……ユリウスに全部ぶちまけるってのは、どうなの」
「……兄としては、それは最後の手段にしたいのです。お妃様には申し訳ないですが……」
「そうね……気持ちはわからないでもないわ……」
別に私だってカーミラ嬢のことは嫌いではない。
苦手意識はあるが、嫌うほどのことはされていない。
彼女は、態度こそすこぶる悪かったが、言ってくれたことは正しかったから。
「ええと、じゃあ、ヴァンパイア族の策略についてだけ話すとか?」
「そう、ですね。結局それが丸い、のかな……」
ヴァンパイアは気が進まなそうだった。
まあ、身内の恥だ。進んで晒したいものでもなかろう。
「……じゃあ、私が、お茶会を受ける?」
「それは一番最悪の手段です」
ヴァンパイアは断言した。
「……でも、カーミラ嬢の恋も、ヴァンパイア族の願いも、根本から片付けなければ、同じような策略が繰り返されるでしょう?」
「それは、そうなのですが……」
「仮に命を取ろうとしているのだとしても……私、魔王の娘だもの」
私は胸を張った。
「魔王族のお城の瘴気も平気だったし、最近は四族と魔法の練習もし始めたの。風魔法の上達が早いってシルフが喜んでくれて、ニンフが悔しがって……ああ、いや、それはどうでもいいんだけれど」
思わず横道に逸れそうになるのを、戻す。
「……その、ヴァンパイア族が何を企んでいるとしても、頑張れば、どうにかなるんじゃないかしら?」
「……………………うーん」
ヴァンパイアはとても苦しそうだった。
「でも、うーん、ほら、アーダーベルトとの件があったばかりですから……これでうちの連中がお妃様を攫うとかしやがったら、ユリウスの逆鱗に振れることは間違いないですし……」
「そう……」
なかなかに難しい状況だ。
「……でも、私とカーミラ嬢が仲良くしたら、ユリウスは喜ぶわよね?」
「え、あ、はい、それは、まあ」
「……じゃあ、挑戦してみたい」
私は自然とそう言っていた。
「ヴァンパイア、私、カーミラ嬢と仲良くなりたい」
「…………わかりました」
ヴァンパイアは観念したようにうなずいた。
「不肖、魔王陛下の執事、このヴァンパイア族ドラキュラ、お妃様がその覚悟であるならば、全霊を尽くしてお手伝いします」
「ありがとう」
「ああ、そうだ、よろしければ俺のことはドラキュラとお呼びください。ヴァンパイアと呼び続けるのは、その、ややこしくなると思いますので」
「そうね、そうさせてもらうわ、ヴァンパイア」
こうして、私はカーミラ嬢と仲良くなるための一歩を踏み出した。
すべてはユリウスのためだった。
カーミラ嬢と私が仲良くなれば、ユリウスが喜ぶだろう。
そういう思考のもとで、私は動き始めた。
0
あなたにおすすめの小説
この結婚に、恋だの愛など要りません!! ~必要なのはアナタの子種だけです。
若松だんご
恋愛
「お前に期待するのは、その背後にある実家からの支援だけだ。それ以上のことを望む気はないし、余に愛されようと思うな」
新婚初夜。政略結婚の相手である、国王リオネルからそう言われたマリアローザ。
持参金目当ての結婚!? そんなの百も承知だ。だから。
「承知しております。ただし、陛下の子種。これだけは、わたくしの腹にお納めくださいませ。子を成すこと。それが、支援の条件でございますゆえ」
金がほしけりゃ子種を出してよ。そもそも愛だの恋だのほしいと思っていないわよ。
出すもの出して、とっとと子どもを授けてくださいな。
勘違い妻は騎士隊長に愛される。
更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。
ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ――
あれ?何か怒ってる?
私が一体何をした…っ!?なお話。
有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。
※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。
初恋をこじらせた騎士軍師は、愛妻を偏愛する ~有能な頭脳が愛妻には働きません!~
如月あこ
恋愛
宮廷使用人のメリアは男好きのする体型のせいで、日頃から貴族男性に絡まれることが多く、自分の身体を嫌っていた。
ある夜、悪辣で有名な貴族の男に王城の庭園へ追い込まれて、絶体絶命のピンチに陥る。
懸命に守ってきた純潔がついに散らされてしまう! と、恐怖に駆られるメリアを助けたのは『騎士軍師』という特別な階級を与えられている、策士として有名な男ゲオルグだった。
メリアはゲオルグの提案で、大切な人たちを守るために、彼と契約結婚をすることになるが――。
騎士軍師(40歳)×宮廷使用人(22歳)
ひたすら不器用で素直な二人の、両片想いむずむずストーリー。
※ヒロインは、むちっとした体型(太っているわけではないが、本人は太っていると思い込んでいる)
猫被り令嬢の恋愛結婚
玉響
恋愛
侯爵家の令嬢であるリリアーナ・グロッシは、婚約者であるブラマーニ公爵家の嫡男ジュストが大嫌いで仕方がなかった。
紳士的で穏やかな仮面を被りながら、陰でリリアーナを貶め、罵倒し、支配しようとする最低な男。
ジュストと婚約してからというもの、リリアーナは婚約解消を目標に、何とかジュストの仕打ちに耐えていた。
そんなリリアーナの密かな楽しみは、巷で人気の恋物語を読む事。
現実とは違う、心がときめくような恋物語はリリアーナの心を慰めてくれる癒やしだった。
特にお気に入りの物語のヒロインによく似た国王の婚約者である女侯爵と、とあるきっかけから仲良くなるが、その出会いがリリアーナの運命を大きく変えていくことになり………。
※『冷遇側妃の幸せな結婚』のスピンオフ作品となっていますが、本作単品でもお楽しみ頂けると思います。
※サイコパスが登場しますので、苦手な方はご注意下さい。
婚約破棄に応じる代わりにワンナイトした結果、婚約者の様子がおかしくなった
アマイ
恋愛
セシルには大嫌いな婚約者がいる。そして婚約者フレデリックもまたセシルを嫌い、社交界で浮名を流しては婚約破棄を迫っていた。
そんな歪な関係を続けること十年、セシルはとある事情からワンナイトを条件に婚約破棄に応じることにした。
しかし、ことに及んでからフレデリックの様子が何だかおかしい。あの……話が違うんですけど!?
悪役皇女は二度目の人生死にたくない〜義弟と婚約者にはもう放っておいて欲しい〜
abang
恋愛
皇女シエラ・ヒペリュアンと皇太子ジェレミア・ヒペリュアンは血が繋がっていない。
シエラは前皇后の不貞によって出来た庶子であったが皇族の醜聞を隠すためにその事実は伏せられた。
元々身体が弱かった前皇后は、名目上の療養中に亡くなる。
現皇后と皇帝の間に生まれたのがジェレミアであった。
"容姿しか取り柄の無い頭の悪い皇女"だと言われ、皇后からは邪険にされる。
皇帝である父に頼んで婚約者となった初恋のリヒト・マッケンゼン公爵には相手にもされない日々。
そして日々違和感を感じるデジャブのような感覚…するとある時……
「私…知っているわ。これが前世というものかしら…、」
突然思い出した自らの未来の展開。
このままではジェレミアに利用され、彼が皇帝となった後、汚れた部分の全ての罪を着せられ処刑される。
「それまでに…家出資金を貯めるのよ!」
全てを思い出したシエラは死亡フラグを回避できるのか!?
「リヒト、婚約を解消しましょう。」
「姉様は僕から逃げられない。」
(お願いだから皆もう放っておいて!)
【完結】死に戻り伯爵の妻への懺悔
日比木 陽
恋愛
「セレスティア、今度こそ君を幸せに…―――」
自身の執着により、妻を不遇の死に追いやった後悔を抱える伯爵・ウィリアム。
妻の死を嘆き悲しんだその翌日、目覚めた先に若い頃――名実ともに夫婦だった頃――の妻がいて…――。
本編完結。
完結後、妻視点投稿中。
第15回恋愛小説大賞にエントリーしております。
ご投票頂けたら励みになります。
ムーンライトさんにも投稿しています。
(表紙:@roukoworks)
隻眼の騎士王の歪な溺愛に亡国の王女は囚われる
玉響
恋愛
平和だったカヴァニス王国が、隣国イザイアの突然の侵攻により一夜にして滅亡した。
カヴァニスの王女アリーチェは、逃げ遅れたところを何者かに助けられるが、意識を失ってしまう。
目覚めたアリーチェの前に現れたのは、祖国を滅ぼしたイザイアの『隻眼の騎士王』ルドヴィクだった。
憎しみと侮蔑を感情のままにルドヴィクを罵倒するが、ルドヴィクは何も言わずにアリーチェに治療を施し、傷が癒えた後も城に留まらせる。
ルドヴィクに対して憎しみを募らせるアリーチェだが、時折彼の見せる悲しげな表情に別の感情が芽生え始めるのに気がついたアリーチェの心は揺れるが………。
※内容の一部に残酷描写が含まれます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる