『魔王』へ嫁入り~魔王の子供を産むために王妃になりました~【完結】

新月蕾

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第79話 カーミラ嬢の号泣

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「考えたくなかった……信じたくなかった……ううう……」

「か、カーミラ嬢……」

 そうだった。この子はユリウスに片思いをしているのだ。
 この子にとって私とユリウスがもうそういう関係だと知ることはそれはもう耐えがたいだろう。

「……ご、ごめんなさい」

「おやめください……余計、惨めになる……」

 カーミラ嬢は泣きじゃくりながら、そう言った。

「私の方が先に、10年も前にユリウス様のこと好きになったのに、ずっとずっと好きだったのに……」

「…………」

 かける言葉がない。
 妹の号泣の様子に、ドラキュラが恐る恐る戻ってくる気配がする。

 私の後ろで完全に存在感を消していたニンフとシルフが慌ててカーミラ嬢に駆け寄る。

「げ、元気を出してください、ヴァンパイア族のお嬢さん!」

「そうですよ、男なんて星の数ほどいますわ!」

「陛下だってよく考えてみたら大した男じゃないかもしれません!」

「ほら、目を閉じて、陛下の欠点とかあげつらってみませんか?」

 何だか妙に手慣れている。
 意外と彼女たちの間でも失恋はよくあることなのかもしれない。

 ユリウスの欠点をあげつらう……というのは王妃としては止めるべきなのかもしれないけれど、今は大目に見よう。

「……陛下は、あれよね、強情よね」

 私が口火を切ってみた。

「……お妃様」

 ニンフとシルフがなんとも言えない顔で私を振り返る。

「朴念仁だし……」

 カーミラ嬢が乗ってきた。

「ええと、ええと、無理ばかりなさるし」

「あんまり人の話聞かないし……」

「……か、顔がちょっと怖い、かも」

「仲良くなるまでは無愛想」

「あ、やっぱりそうなのですね」

 最初に会ったときの不機嫌な様子は怒りもあっただろうが、そういうのもあったのだろう。

「……最初は、怖い人でした」

 ぐすんと鼻水をすすりながら、カーミラ嬢が語り出す。

「兄に着いていった魔王城で初めてあの方に会いました。人間には初めて会いました。私は一目で、あの方のことがおいしそうだと思った……」

「えっ」

 思わず困惑する。
 しかし、たしか、ヴァンパイアは人間の血をすする生き物だったか。
 それはそういう目で見ることになるか。

「無愛想だった……でも、どんどんと会う回数が増えるにつれ、私とも遊んでくださるようになって……最初はお兄様が増えたようで嬉しかったけど、どんどんとお兄様とは違う好きだと気付いて……」

「カーミラ嬢……」

「……ヴァンパイア族は、魔界でも高位の貴族です。私、本気でユリウス様と結婚できると思ってた……思ってたのに……あの人はちっともそんな目で私を見てなかった……陛下が人間界からお妃様を連れてきたって聞いて、私三日寝込みました」

「ご、ごめんなさい……」

「謝ることはないですよ」

 戻ってきたドラキュラが大体状況を把握してそう口を挟む。

「……ユリウスの前で無愛想だったのはお前だろう、カーミラ、あれじゃ伝わる思いも伝わらん」

「……だって、だって」

「あと、ユリウスはずっとお前のこと妹みたいで可愛いって言ってたから、最初から脈なしだ」

「うわあん!」

「ドラキュラ……何故追い打ちをかけるの……」

 どうしよう、収拾がつかない。
 ええと、私は何しにここに来たのだったっけ……?

 私はがんばって一歩を踏み出した。
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