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第一章 地獄からの始まり
烈火の謝罪
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とある所に、ダンジョンがあった。そのダンジョンは、全部で100階で構成されている。
一階ごとに、下への階段を下りる事で、先に進める。進めば進むほど、敵は強力になっていく。
所が、この秩序をものともしない現象があった。
とあるパーティーが、いきなり100階まで飛ばされたのである。
これは、その不幸な出来事に遭遇した、パーティーの話である。
「どうする?」
緑髪の剣士が周りに聞いていた。
「どうする、というよりも、どうしようもないでしょうね。これは詰将棋で言うところの詰みです」
「いや、詰んじゃ駄目でしょ!クライン、何か脱出方法ないの?」
「脱出というよりも……起きた事象を解明すべきです。また戻されるかもしれませんからね」
クラインと呼ばれた、青髪の男が言った。やけに冷静である。
「と、とりあえず、危険な魔物がいないかどうか、調査すべきじゃないのかな?」
「そうですね。それは、当たっていると思います。なんせ、この階段、堂々と100階って書いてありますからね。魔物の強さは得体が知れないでしょう」
「そうだよね。と、とりあえず安全地帯を確保しよう。クレアは大丈夫?」
「私は、大丈夫です。多少なり緊張はしますが。皆さんの盾となります」
「無理に盾にならなくてもいいからね」
優しい口調なのはマルシェという青年。背が低い。
彼らの置かれている状況は、極めて過酷である。
全100階からなるダンジョンは、最奥部に行くほど、魔物が強いのだ。
そこに叩き落された。第二階において、トラップに引っかかり。
前人未踏の罠である。そんな罠は今までに事例がない。
故に、彼らは焦っている。状況を理解するのも一苦労だ。
まず、死の恐怖。それに、魔物を突破出来たとしても、100階分の階段など、登れるかどうか。
怪しい。彼らの生存確率が、いかにも怪しい。
端から見れば、生存確率0。忌まわしきトラップに掛かってしまった時点で、彼らの未来は決まってしまったようなもの。
しかし、そこに闘志を燃やす剣士がいた。
剣士の名はキョウコ。正義感が強く、曲がったことが許せない。
彼女の心は燃えていた。自分が犠牲になっても、必ず仲間を守りきると。
ダンジョンを登りきると。
彼女の必殺技は、練気。気を練りだすことが出来る。
この、睡蓮烈火の剣士が、ダンジョンの道を切り開く。
キョウコが覚悟している間に、最初の関門が現れた。
地獄の番犬オルトロス。本来現れない、その黄色き魔獣。その魔獣が、パーティーを殺そうと近寄ってきたのである。
パーティーが臨戦態勢を取った。
勝てない。それはもうわかっている。
つまり、死ぬしかない。
キョウコはそれを悟っていた。だから、誰よりも早く行動に出た。
恐怖の魔獣、オルトロスに、土下座したのである。
「ごめんなさい!敵意は無いんです!だから、仲間だけは助けてあげてください!この通りです!私は殺してもいいです!」
キョウコの迫真の言葉。
「キョウコ!」
アーサーという青年が、それを留めようとした。キョウコの恋人である。
「黙ってて!」
キョウコはアーサーを突っぱねて、オルトロスに話しかけ続けた。
「無理なお願いなのはわかっています!でも、いい人達なんです!だから、だから、助けてあげて欲しいんです。人間が嫌いなのはわかっています。この通りです」
キョウコは刀を握り、自らの長髪を、刀で切り裂いた。
パラパラと髪の毛が散り、短髪になった。
女の命とも言える髪。
「この通りです!!」
キョウコは涙すら浮かべていた。パーティーは固唾をのんで見守っている。
しかし、槍使いの女、ティナには、それは到底受け入れられなかった。
「オルトロス。この馬鹿女の言うことを聞く必要はない。私と一体一で勝負しろ。ただし、私に勝っても、仲間だけは見逃してもらう。戦え」
「ティナ!!」
キョウコは止めようとする。
「黙ってて。話が通じる相手じゃないの」
ティナは淡々と言った。
だが。
「よかろう」
オルトロスが喋り始めたのである。
一階ごとに、下への階段を下りる事で、先に進める。進めば進むほど、敵は強力になっていく。
所が、この秩序をものともしない現象があった。
とあるパーティーが、いきなり100階まで飛ばされたのである。
これは、その不幸な出来事に遭遇した、パーティーの話である。
「どうする?」
緑髪の剣士が周りに聞いていた。
「どうする、というよりも、どうしようもないでしょうね。これは詰将棋で言うところの詰みです」
「いや、詰んじゃ駄目でしょ!クライン、何か脱出方法ないの?」
「脱出というよりも……起きた事象を解明すべきです。また戻されるかもしれませんからね」
クラインと呼ばれた、青髪の男が言った。やけに冷静である。
「と、とりあえず、危険な魔物がいないかどうか、調査すべきじゃないのかな?」
「そうですね。それは、当たっていると思います。なんせ、この階段、堂々と100階って書いてありますからね。魔物の強さは得体が知れないでしょう」
「そうだよね。と、とりあえず安全地帯を確保しよう。クレアは大丈夫?」
「私は、大丈夫です。多少なり緊張はしますが。皆さんの盾となります」
「無理に盾にならなくてもいいからね」
優しい口調なのはマルシェという青年。背が低い。
彼らの置かれている状況は、極めて過酷である。
全100階からなるダンジョンは、最奥部に行くほど、魔物が強いのだ。
そこに叩き落された。第二階において、トラップに引っかかり。
前人未踏の罠である。そんな罠は今までに事例がない。
故に、彼らは焦っている。状況を理解するのも一苦労だ。
まず、死の恐怖。それに、魔物を突破出来たとしても、100階分の階段など、登れるかどうか。
怪しい。彼らの生存確率が、いかにも怪しい。
端から見れば、生存確率0。忌まわしきトラップに掛かってしまった時点で、彼らの未来は決まってしまったようなもの。
しかし、そこに闘志を燃やす剣士がいた。
剣士の名はキョウコ。正義感が強く、曲がったことが許せない。
彼女の心は燃えていた。自分が犠牲になっても、必ず仲間を守りきると。
ダンジョンを登りきると。
彼女の必殺技は、練気。気を練りだすことが出来る。
この、睡蓮烈火の剣士が、ダンジョンの道を切り開く。
キョウコが覚悟している間に、最初の関門が現れた。
地獄の番犬オルトロス。本来現れない、その黄色き魔獣。その魔獣が、パーティーを殺そうと近寄ってきたのである。
パーティーが臨戦態勢を取った。
勝てない。それはもうわかっている。
つまり、死ぬしかない。
キョウコはそれを悟っていた。だから、誰よりも早く行動に出た。
恐怖の魔獣、オルトロスに、土下座したのである。
「ごめんなさい!敵意は無いんです!だから、仲間だけは助けてあげてください!この通りです!私は殺してもいいです!」
キョウコの迫真の言葉。
「キョウコ!」
アーサーという青年が、それを留めようとした。キョウコの恋人である。
「黙ってて!」
キョウコはアーサーを突っぱねて、オルトロスに話しかけ続けた。
「無理なお願いなのはわかっています!でも、いい人達なんです!だから、だから、助けてあげて欲しいんです。人間が嫌いなのはわかっています。この通りです」
キョウコは刀を握り、自らの長髪を、刀で切り裂いた。
パラパラと髪の毛が散り、短髪になった。
女の命とも言える髪。
「この通りです!!」
キョウコは涙すら浮かべていた。パーティーは固唾をのんで見守っている。
しかし、槍使いの女、ティナには、それは到底受け入れられなかった。
「オルトロス。この馬鹿女の言うことを聞く必要はない。私と一体一で勝負しろ。ただし、私に勝っても、仲間だけは見逃してもらう。戦え」
「ティナ!!」
キョウコは止めようとする。
「黙ってて。話が通じる相手じゃないの」
ティナは淡々と言った。
だが。
「よかろう」
オルトロスが喋り始めたのである。
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