家鴨の空【改訂版】

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4話_ 幸福で平凡な生活

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――土曜日PM13:00――
空と蒼穹の部屋
空は、勉強机に向かい、教科書とノートを開いて勉強している。
勉強しながら、昨日あった出来事を思い出す。
空は、おもむろに鼻を触る。
空「舐められた…。」
世の中。
関わらないようにしている人程、
関わってきたりするんだよなと思い、ため息を吐く。
面倒臭いと感じながら、家の窓から船が見える。
匠さんも、あの船の中にいるのかな?
海を見ていると、蒼穹が帰ってきた。
蒼穹は、昨日より顔色が悪そうだった。
心配した空は、蒼穹に声を掛ける。
空「おかえり。どうした?」
蒼穹「ただいま…。頭が痛くて…」
空「最近、多いな、大丈夫か?」
蒼穹「うん……」
蒼穹は、自分のベッドで横になる。
空は、冷蔵庫から水を取り出し、コップに注ぐ。
その間に、冷凍庫から氷枕を取り出す。
タオルで氷枕を包み、蒼穹の所へ持って行く。
蒼穹は、頭が痛むので苦しそうにしている。
空「薬、飲もうか。起きれる?」
蒼穹「うん……」
空「ほら、これ薬。飲んで」
蒼穹「ありがとう……」
空は、薬と水を蒼穹に渡す。
蒼穹は、薬を飲み終わった後、また寝る。
空は、額に熱がないか確認する。
熱はないような気がするけど……念の為、測ってみようかな。
空は、体温計を持ってきて、蒼穹に挟ませる。
体温計が鳴り、確認する。
空「……熱ないじゃん」
空は、首を傾げながら体温計を見る。
でも、蒼穹は顔色が悪いし……何かあったのかな。
そんな事を考えながら、蒼穹の様子を見る。
空は、1階に降りると由美子が看護師の仕事が終わって、洗濯物を庭で干していた。
空「由美子さん、おかえり。」
由美子「あら、ただいま。蒼穹くんはどう?」
空「今は、寝てる。頭が痛いらしくて。」
由美子「最近、多いわね?心配だわ……明日、病院に行きましょう」
空「そうですね……。」
由美子「空くんも疲れが出ないように気をつけてね?」
空「うん。ありがとう、手伝うよ」
由美子「あら、嬉しい。それじゃ、お言葉に甘えてお願いしようかしら」
空は、洗濯物を一緒に干していく。
由美子「ありがとう。昔は良く息子も手伝ってくれたわね」
空「そうなんだ。そう言えば、僕らが今お借りしてる部屋。元々息子さん夫婦の部屋なんだよね?」
由美子「そうなのよ…。最近の子なのに…心配性でね、結婚してから、一時期同居してくれたんだけどね…。色々あってね…。」
由美子さんは、昔を思い出しながら話す。
寂しそうな顔をしているなと思った。
空は、何も言わずに聞いていた。
空「すみません、立ち入ったことを聞いてしまって……」
由美子「いいのよ、気にしないでちょうだい」
空「ありがとうございます」
由美子「ふふっ、素直で良い子ね」
空「いえ、そんなことないです」
由美子「そうそう、今日は匠さんが遅くなるみたいだから、ご飯は3人で食べましょう。」
2人は、洗濯物を干し終わった。
空「はい、分かりました」
由美子「それじゃぁ。私は夕食作るわ。空くん勉強頑張ってね。」
空「はい。あの…由美子さん。あの聞きたい事があって…。」
由美子「何?わからない教科があった?」
空は、戸惑うように言う。
空「……大道寺旬の事…知ってる?」
由美子「大道寺……。ええ、知っているわよ。何かあったの?」
由美子は、少し戸惑った感じで言う。
空「別に…大した事ないんだけど…。最近、学校に登校してくる事があって…悪い噂の絶えない人だなって思ってただけだし……。」
由美子は、少し驚いた表情をする。
由美子「あら、そうだったのね……ごめんなさいね。この島に来たばかりだから話しとくべきだったわ。」
由美子さんは、しばらく沈黙の後……台所の蛇口をひねり口を開く由美子さん……。
由美子「この島は、漁業が盛んでしょ?男ばかりで…。昔から荒い人も少し多くてね。」
空「匠さん、そんな感じしないですけどね…?」
由美子は、少し笑いながら言う。
由美子「ふふっ……そうね。匠さん、ああ見えても昔は結構荒れてたのよ」
空「え?そうなんですか?」
意外だなと思った。
あんなに優しい人が……?と疑問に思った。
由美子さんは、話を続けてくれる。
由美子「荒くれ者達、それを仕切っているのが、大道寺組なのよ…。」
空「……へぇ……」
由美子「大道寺組には、昔から、揉め事とか何かあった時とか相談に乗ってもらったり、お互い助け合って、支え合うっていう関係が昔から続いてるのよ」
由美子さんは、懐かしそうに話してくれる。
空「そっか……」
由美子「でも…所詮ヤクザだから汚い仕事もある。怖い部分もある。旬は、その組の息子よ…。彼自身もかなり腕っぷしが強いらしいわ。私も実際に見たわけじゃないけどね」
空「……なるほど」
空は、なんとなく納得する。
だから、みんな旬を避けてるのかなって思った。
でも、なんかモヤモヤする。
由美子「でも、何も揉め事をこの島で起こさない限り、大道寺組にお世話になることは無いと思うわ」
空「そうですか……教えてくれてありがとうございます」
由美子「いいのよ、貴方達の力になれたなら良かったわ」
空「はい……ありがとうございます」
空は、自室に戻る。


ーーーーーー

空と蒼穹の部屋
空が戻って来て、勉強机に座る。
空「あ、起きた?まだ安静にしてなよ」
蒼穹「うん、ありがとう。大丈夫だよ」
空「無理するなよ」
蒼穹「うん……」
蒼穹は、再び眠りにつく。
空は、腕をうしろに組んで、外を眺めていた。
勉強の続きをしているが、全然集中できない。
匠さんの過去……。
確かに、出会った頃は少し怖かったけど、今は凄く優しいし、助けてくれた恩人だと思っている。
匠さんの過去がどんなものであれ、今の匠さんを見ればわかる。
きっと、根は優しい人なんだなと思う。
空は、小さく呟く。
空「いつか……匠さんの事もっとちゃんと知りたいな……」
空は、目を閉じる。
そこに、匠さんが帰宅する。
空「帰って来た。」
空は、また一階に降りていくと匠さんに挨拶した。
匠「蒼穹、頭痛いって?」
空「はい…。」
匠「一回ちゃんと調べないとダメだな……」
空「ですね。」
由美子「あら?おかえりなさい。匠さん、遅くなるんじゃなかったの?」
匠「早めに切り上げてきた。」
匠は、疲れた顔で由美子に言う。
由美子「そうなの。蒼穹君の病院は。明日、私が付き添うわ。ちょうど仕事休みだし。」
空「ありがとうございます」
由美子「いいのよ、気にしないで。」
匠「頼むよ、由美子。」
3人は、リビングのテーブルでお茶を飲みながら話す。
匠は、仕事の話をしている。
僕は、その話を楽しく聞いている。
由美子さんが言うには、匠さんは、島一番の漁師で全員の世話役。
それに誰にでも隔たりなく
接するから誰からも慕われている人なんだって、伝えていく。
困った事があれば助けてくれる。
夕食は、基本由美子さんの惚気話とか漁の話だ。
匠さんと由美子さんは、18歳の時に結婚して浩太っていう一人息子がいて。
仕事もバリバリこなす、自慢の息子さんだそうだ。
でも、二人とも息子の浩太さんの話をすると寂しそうな顔で笑っていた。
夫婦と暮らして思った。
由美子さんは、島では凄く美人さんで、今だにナンパとかされるらしい。
常に笑みを絶やさない優しげな表情がとても魅力的な女性だ。
初めは、慣れない暮らしに慣れさせようと努力してくれてとても助かった。
本当に感謝しても尽くせない恩がある。匠さんは、島の人たちにも紹介してくれたし、色々と面倒を見てくれた。
奥さんの由美子さんとは凄く仲が良くて島一番のおしどり夫婦と言われている。そんな家族思いの匠さんを好いている人はたくさんいる。
だから僕も匠さんに好意を持っていたんだと思う…。
だからなのか…。
僕はこの家族の一員になりたかった。
ずっと一緒にいたいと思えた。
そんな人がそばに居たら幸福だろうなぁなんて思ったんだ。
匠さんに好意を抱けば、抱くほど、僕の心にモヤモヤとした感情が生まれたんだ。
それは、ジェラシーという醜い気持ち。それが最初は、何か分からなかった。
この醜い気持ちに気づくまでは、僕が望む幸福で平凡な生活はそこにあったのに。
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