家鴨の空

kappa

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親鳥編

壊した話2

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匠さんと結ばれてから1週間が経った。

*************************

僕と匠さんはあの後3日間くらい愛し合ってた。
匠さんって本当に絶倫で何度もイカされて、僕の身体はもう匠さんの虜になっていた。
匠さんと結ばれたのが嬉しくて、ずっとこのまま入れると思ってた……

*************************

島に帰ると旬は逮捕されたニュースが流れた。
旬のお母さんも捕まったらしい。
組の抗争で組長が死んだらしく、その跡取り争いで内部分裂が起きていたそうだ。
旬とは学校でもマンションにも会えなくなった。
旬が逮捕されたことで、僕がヤクザの愛人だって噂が流れたからだ。
僕は学校で、腫れ物扱いされるようになった。
話しかけてくる人もいなくなって、僕は孤独になっていった。
学校はサボりがちになり、家に籠るようになった。
学校にいるよりも家にいた方が安心だった。
友達とも遊ばなくなり、僕は完全に一人になった。
その頃、弟の蒼穹が原因不明の睡魔に襲われた。
最初は貧血だと思っていた。
だが日に日にそえの顔色は悪くなっていき、ついには倒れてしまった。
蒼穹は入院した。
入院費を工面する為、仕事を始め学校を休みがちになった。
弟、旬とも会えなくなり、孤独と金欠と寂しさに押し潰されそうになりながらも、必死に耐えた。
寂しさを埋めるように、匠さんと逢瀬を交わした。
「匠さん、由美子さんの次でいいから、これからもこの関係を続けたい。」
「空、構わないよ。」
「身体の関係だけでもいいから。」
「由美子には秘密にする。」
「うん、匠さん愛してる。」
「あぁ……愛してる。」
 寂しさを埋めるように関係は続いた。

*************************

1回目は由美子さんの目を盗んでこっそりホテルに行った。
2回目からは由美子さんが仕事に行っている時間を選んでホテルに行った。
3回目以降は匠さんの仕事場の近くまで車で行ってそこで落ち合った。
4回目以降は、由美子さんと匠さんが喧嘩して匠さんの家に行けなかった時とかに呼び出された。
そうやって匠さんとの愛を育んだ。
僕は幸せだと思った。
由美子さんと匠さんと3人でいるときが一番幸せだと感じた。
また何度も抱かれた。
「あぁっ……んんっ……はぁっ……!」
匠さんとの行為は凄く気持ちよくて、すぐに達してしまう。
匠さんとの行為はどんどん過激になっていった。
由美子さんがいない時は、家で夫婦のベッドで行為をした。
「んぐぅっ!?んんっ!むー!んんんっ。」
匠さんとセックスをしている間だけ寂しさを忘れることができた。
その頃から、不倫のストレスか吐き気が……するようになった。
匠さんと関係を持って、1ヶ月が経っていた。
匠さんは時々、由美子さんと交わる。
嫉妬は浅ましい。


*************************

匠さんと内緒でマンションを借りた。
そこで匠さんと逢瀬を重ねた。
由美子さんにはバレていない。
匠さんとの関係がどんどん深くなっていく。
由美子さんは僕を軽蔑するだろう。
だけど僕は幸せだった。
匠さんは僕を愛してくれている。
僕も匠さんを愛している。
将来由美子とは、離婚するから結婚しようと約束してくれた。
僕は匠さんを愛してるから何でも許せた。
匠さんは僕のことを愛してくれている。

*************************

だから僕は大丈夫。

僕は大丈夫。

僕は幸せだ。

大丈夫。

大丈夫。

大丈夫。

大丈夫……

大丈夫。 

大丈夫。

大丈夫。

大丈夫。

大丈夫……

*************************

ある、日大空家と由美子さんが旅行に行くことになった。
匠さんは、仕事で家。
久しぶりに家にこないかと匠さんに言われ、料理を作った。
お昼ご飯を食べて二人で映画を見て、ソファーの上で匠さんに後ろから抱きしめられながら寝た。
起きたらもう夕方で夜ご飯を作り一緒に食べた。
匠さんとご飯を食べると美味しい。
僕はいつも以上に料理を作った。 
匠さんはたくさん食べてくれた。
嬉しかった。食後に二人でテレビを見たり、会話したりした。
楽しい。
こんなに幸せで良いのだろうか?と思うほど、楽しく充実した時間を過ごした。
匠さんと一緒にいるだけで僕は満たされる。
幸せだった。
由美子さんが旅行に行って2日目。
夫婦の寝室で僕は匠さんと行為を始めた。
今日も激しく求め合った。
お互いが満足するまで何度も何度も交わり続けた。
匠さんとの行為が終わるとすぐに、お風呂に入り疲れを取る。
今日は金曜日。
明日は休みだ。
朝起きると、隣に匠さんはいなかった。
その後、寝室にピアスを落とした。
いつも付けているピアスを…。
匠さんには、気づかないところ。
由美子さんは、気づくだろうな………………。 

*************************

 匠と借りたマンションで、体重計に乗る空。
ピピッ……また増えてる……! 
昨日、たくさん食べたせいか? 
最近は毎日のように匠さんに求められ、匠さん以外の男性とは関係を断っているため匠さん以外に抱かれることはない。
「どうした?」
「うわっ!……びっくりした……」
背後から匠の声が聞こえた。
「ちょっと太ったみたい。」
「どれくらい?」
「5kgぐらい……」
匠は空の胸を揉み始めた。
「やめろって……」
「そうか?」
「ちょっとお腹が出て」
「気にしすぎだ、早く」
「うん」
「愛してる。」
「俺もだよ。」
「空、俺のこと好きか?」
「うん。大好き。」
空を抱き締める匠。
匠さんは優しい。
でもその優しさに、溺れていたい。
その頃から匠さんは、家に帰らなくなった。

*************************

そして、空は体調が優れず由美子がやっている病院に行く。
「どうしたの空くん」
「吐き気が続いてて」
「そう、最近ちゃんと食べてる?」
「食べてると思いますけど」
「体重は増えたり減ってたりする?」
「えっと……増えてます」
「ふむ、ちょっと調べたいから、尿検査するか」
「はい」
それから…。
「えっ……」
結果は、陽性だった。
「陽性ですね。妊娠していますね」
「にんしん?」
「おめでとうございます」
頭が真っ白になった。
にんしん?赤ちゃん? 匠さんとの? 
吐き気は、匠と関係を持つ前からだ。
「お医者さん……僕はどうすればいいですか?」
「旦那さんには言ったの?」
「はい……」
「じゃあ、まず産婦人科に行きましょう」
「はい」
匠には黙っていた。
産婦人科に行った。
医師に診てもらうと妊娠している
「最後に生理が来た日を覚えてますか?」
最後に来たのは旬と別れる前だったが…。
「4ヶ月前です。」
「えっ……それだと、流産の可能性ありますよ。」
「えっ……」
僕は妊娠していたのか?
匠さんとの子供を?
あれ?
4ヶ月前って旬と…だってあの日薬…!
そうだ。
避妊しなかった。
旬との時は……着けていなかった。
なんで……?
どうして……。
どうしよう……。
赤ちゃんが……。
匠さんの子供じゃない、だって身体の関係はこの間はじめて…。
どうしょう……
どうしょう……
旬さんの赤ちゃん? 
どうしよう……。
空は意識が薄れる。

*************************

病院のベッドで寝ている空の隣には、由美子がいた。
「空くん、気がついた?ここは病院よ」
空が目覚めたことに気づいた、由美子は空に語りかける。
「あ……、あの……僕は」
「あなた倒れたのよ」
「すみません」
「謝る事ないのよ」
匠が由美子の病院に来ていた。
「匠さん……」
匠が空を見る。
匠の顔を見て空は涙を流す。
匠は何も言わず病室を出た。
由美子と離婚の話をしにきた。
由美子は匠の離婚の話を拒否した。
「空くんの子供はあなたの子供じゃないわよ。」
「えっ?」
匠が驚く。
「妊娠4ヶ月よ。」
「嘘だ!」
「本当よ。私、嘘つかないわよ」
「俺の子じゃない…。」
匠は、愕然とする。
 俺は空との子供が欲しくて空を抱いた。
だが匠の気持ちは、空には届かなかった。
「前にもあったわね、こんな事。」
由美子が匠に問い詰める。
匠は、何も答えなかった。
ただ、その場にいるのが耐えられず、逃げるように病院を去った。
僕は匠さんに、本当のことを伝えたかった。
だが伝える勇気がなかった。
匠さんを傷つけたくない……。
僕はどうしたらいいのか……。
わからないまま時間だけがすぎていく。
一時退院で、匠さんと借りたマンションに戻った。
匠は仕事に行かず空を待っていた。
「おかえり。体調は大丈夫なのか?」
匠が、空に話しかける。
「あの、僕…、ごめんなさい…。」
「旬に乱暴されたんだよな?」
「えっ?」
「無理矢理されたんだろ?辛かったよな。もう大丈夫だからな」
「あの……違うんです。僕……」
空が匠に本当の事を話そうとした時。
「僕…」
「言わないでくれ、このまま暮らそうな。」
「匠さん……」
空を抱き締めた。
「空……」
空を離さない匠。
匠の温もりを感じながら空は涙を流していた。
「ん……」
匠は空の温もりを確かめた。
「ずっとこうしていたいな。空、愛してるよ。空は俺を愛してるよな?」
匠は、空の唇を奪った。
そして空は抵抗することなく受け入れ匠を受け入れた。
匠が空を抱きしめる。
空の耳元で囁く
「俺の子だよな?」
「匠さん……違う……」
「空、お願いだ、俺の子だと言ってくれ」
匠は、懇願した。
「匠さん……ごめんなさい……。」
空は涙をながす。
匠さんを傷つけたくない。
匠は寝室に空を引っ張る。
「やめて、匠さん……」
「お前が孕んだのは俺の子だよな?そう言ってくれるだけで良いんだ。空……」
空をベットに押し倒す匠。
「やだ……匠さん……」
「俺の子だと言え!」
空を押さえつけ
「俺の子だろ!」
匠が叫んだ。
空は抵抗する。
匠さんにこれ以上傷ついてほしくない。
僕なんかのせいで匠さんが苦しむなんて耐えられない。
匠を受け入れた。
「お願い……匠さん、許して……」
「空……」
匠は、何度も空の中に自分のものを放った。
2人だけしかいないはずのマンションの寝室のドアが開く。

*************************

「匠さん…?」
「あなた達何してるの?」
そこに立っていたのは、涙を流する由美子。
「由美子…。」
匠が呟いた。
由美子が泣き叫ぶ。
由美子は2人の関係を知った。
「何してるのって聞いてるのよ‼︎」
由美子は、匠の胸ぐらを掴み壁に叩きつけた。
由美子は泣いていた。
そして由美子の叫び声が響いた。
そして裸の空を見て激情する。
「どうして空くんに手を出したの!」
「由美子……」
匠は言葉を失う。
由美子は、匠にビンタをした。
「私たち夫婦は、幸せになるんじゃなかったの?ねぇ匠、どうしてあなたはそうなの?なんで浮気ばかりするの?」
由美子は、泣きながら匠を攻め
「あんたなんて大嫌いよ!」
匠は、その言葉をただ聞いていた。
「由美子……」
 由美子は空の方を振り向き空を髪を掴み引っ張りリビングまで引きずっていく。
「いいだろ!」
 匠は、由美子を止める。
匠の制止を無視して、リビングで空の髪を引っ張り上げ、顔を殴り、殴られ、髪を引っ張られながらも、空は必死に由美子に許しを請うた。
由美子は怒り狂い、さらに激しく空を殴った。
「この泥棒が!子供この人の子!」
 由美子は、空を踏んだり叩いたりする。
 空はお腹をかばう。
空のお腹を蹴飛ばす由美子。
空はお腹を抱えながらうずくまる。
空を殴る由美子。
匠が止めに入った。
「とりあえず落ち着け!」
「あんたなんて大嫌い!あんたさえいなければ私達は幸せだったのよ!」
「由美子!やめろ!」
「死ねばいいのよ!あんたも空くんも!」
由美子が言う。
匠は由美子を落ち着かせ椅子に座らせる。
匠が空に服を着替えるように促す。
「空、服を着替えたら来なさい」
「はい……」
空が答える。
空の体はアザだらけだった。

*************************

匠と由美子は向かい合いソファーに座っている。
空が部屋に戻り、しばらくした後リビングに戻り、匠は自分の元に空を呼ぶ。
「おいで、ここに座りなさい」
「はい……」
匠の隣に座る空。
匠は、優しく肩を抱いた。
そして由美子が話し出す。
「で?いつから?」
「1年前からです」
匠は答えた。
「1年前……?」
由美子は、少し考える。
「じゃあ……この島に来た時から…。」
匠は静かにうなづく。
由美子は涙をこぼす。
「それまでは、お遊びの延長だった、でも、仕方ないだろう…。」
「私は本気だったのよ!本気で愛してるのよ!」
匠は言葉を失った。
由美子の目には涙が溢れていた。
「未成年に手を出して、恥ずかしくないの?!」
「仕方ないだろ……」
「仕方ないって……、空あたな何してるの?」
「相手は既婚者で子供も孫もいるのよ?」
「はい……すいません……」
「なんで、空まで被害者面するのよ?あなたも同罪じゃない!」
「はい……」
空は俯く。
「何黙ってるのよ!」
 由美子は、空を睨み付けた 。
匠も由美子の怒りを宥める。
匠は冷静に話す。
しかし、由美子の怒りは治まらない。
空の胸ぐらを掴む由美子。
空が謝る。
匠が止めに入る。
「バカにしてるの!?」
「あ......いや......由美子。」
由美子が空の顔を殴りつける。
 (そんなつもりじゃなかった。ただ抱きしめたいだけだった。 なのに私は傷つけてしまった ――どうしてこうなった......?) 
匠は、ただ見ているしかなかった。
私はどうすれば良かったの?
 由美子は泣き叫ぶ。
私は、どうすればよかったんだろう? 私は、どうすればいいんだ? こんなことなら......)
 (あの時に戻れたら......) 
空は思う。
「関係を迫ったのは俺だ……、空は悪くない」
「何が悪くないよ!」
 空は由美子に土下座する。
「ごめんなさい、ずっと島に来たときから好きでした、家庭を壊すきはありませんでした、別れろというなら、別れます、だから……」
「空……」
 匠は、空に近づき頭を上げさせる。
「俺は別れない……」 
「なによ!」
「由美子、お前とは離婚する」
匠は、引き出しから離婚届を出す
「名前は書いてる」
「はぁ⁈」
由美子は呆気に取られる。
そして離婚届には匠の名前だけ書かれていた。
由美子は震えた。
怒りが込み上げてくる。
匠を殴り飛ばした。そして空を怒鳴り散らす。
空は何も言わずに俯いている。
(俺は間違っていない。これでよかったんだ。
空は悪くない、悪いのは私だ)
由美子は泣き叫ぶ。
由美子は匠に殴りかかろうとする。
匠は、離婚届を差し出す。
「もう、冷めきっているのに……」
「頭が冷えるまでっていったじゃない!」
「子供もできてるし、別れるしか……」
「あなたの子供なの?」
由美子は匠に詰め寄る。
匠は、黙ってうなづく。
匠は離婚届けを破り捨てる。
「何?」
「浩太は、違うわよ」
「何言い出す」
「今回は本気なの?」
「本気だ」
 由美子は離婚届をビリビリに破く。
「まだ、何枚もある」
「いや‼︎」
由美子は泣き崩れる。
由美子は離婚しないと言い張り、 匠も説得したが聞き入れなかった。
匠は頭をかきながら由美子に言う。
離婚届には由美子の記入済みと印鑑があり、匠がサインして、提出すれば終わりだ。
「絶対、あなたと別れない!」由美子は言う。
由美子は、カバンから包丁を取り出す。
「おい!それはなんだ?」
匠が慌てる。
「これ?ナイフだけど?」
「そうじゃなくて、なんでカバンから出てくる?」
「だって護身用だし、必要でしょう?」
「必要ない」
「え?何言ってるの?」
由美子は包丁を匠に向けた。
「匠、私の気持ち分かってくれるよね?」
「待て、早まるな!」
匠が由美子を抑えようとする。
しかし、由美子は匠を包丁で刺したはずだ。
だが、空から血が出ている?
「匠……さん……」
空が匠に抱きつく、包丁を持った由美子の腕を押さえる。
(刺されたはず……なぜ?空が?)
由美子はパニックになり包丁を落としてしまう。
由美子は、我に帰る。
部屋の前にはめぐみと浩太が待機していて、由美子を抑えて、救急車を呼ぶ。
「空……空……なんで……」
空は微笑む。
空に駆け寄る匠。
「匠さん……」
匠の手を握る空。
匠は、空を抱き寄せた。
空は出血が多く危なかった。
「匠さん、僕は、大丈夫ですから……」
「ああ、もうしゃべるな」
空は匠を見つめた。
「僕、匠さんが好きです。」
「俺も好きだ。」
空が微笑み、
めぐみが、空の応急手当をする。
「空!空!」
 匠は空を呼びづづける。
空は意識が遠のく。

*************************

 ――病院――
目を覚ます空。
「気いついたか?」
懐かしい関西弁だ。
空は、目を開ける。
ベッドの横にいるはずもない旬がいる? 
「旬?」
「同じ病院でよかったわ……」
 旬は、空の手を握っていた。
「え?なんで旬が?ごめんない……」空は泣き出す。
「空……」
旬は優しく抱きしめる。
空は泣き続ける。
「もう大丈夫やから、何もかんも俺がなんとかしたるさかい」
「旬……」
「もう泣くな」
「旬、俺裏切った。」
「快楽優先のお前やから、どうせ、迫られて断れんようなったんやろ」
「だって……」
「それに匠さんやし……、寂しい思いさせてごめん。」
「ごめん……」
「結婚してくれるなら許したる」
「…………」
「そこは、うん、って言うとこや」
「うん……」
「よし」
旬は笑顔だ。
「でも人の色に手ェ出したからにわ、少し代償も払ってもらう……」
「ひどいことしないで……」
「あかん!」
「…………」
「何があろうと、色やわかってんのに、手ェつけた、落とし前はつけてもらう」
 外から誰かが殴られている音がする。
匠が誰かに殴られてる? 
「旬!やめて!」
匠が殴られる音が激しくなる。
空は慌てて起き上がり匠の元に行こうとする。
しかし、旬は止める。
旬は外に出る。
匠は、男達に殴られていた。
匠は反撃しないで耐えるだけだ。
「お前らがしたことよりましや!」
男達は倒れ込む匠を蹴り上げる。
匠は抵抗せず、倒れ込んだままだ。
男達は去っていく。
旬が匠に近づく。
「ええ、根性しとんなおっさん。」
「空が、傷つかないならそれでいい。」
「空?」
旬が振り向くと空が立っている。
「出てきたらあかん言うたやろ?」
旬は、空に駆け寄り手を掴む。
「いやだ!いやだ!」
「動きな……な?」
 旬は、空の指を折る勢いで握って。
「い……た………」
「ほんまわ、空お前も殴る予定やってんで、でも顔みたらなくなった、それにこれからしあわせになるんや!他のやつのことは忘れろ、な?子供のこともあるし。」
 空の目から涙が溢れる。
「ホルモンのぐわいかな?昔はこんなんでは泣かんかったのに……」
 額にキスする
 そこに、浩太がやってくる。
浩太は土下座してアタッシュケースを渡す。
旬は中身を確認して、舎弟に頷く。
「返したるわ、オヤジ、二度と近づくなって言うときや、まぁそっちも会いたないやろうけど」
「旬さん……すいませんでした。」
匠は黙っている。
旬は匠の頭を蹴る。
匠の口から血が出る。
匠が口を開く。
「俺はもういい……」
旬が匠を睨む。
「オヤジ、まだ足りひんみたいやからもっと殴ったろか?」
「やめてくれ、旬……」
旬が匠の頭を掴み、引きずる。
空の前にくると、匠の頭を叩きつけた。
「二度とこの子に近づくな!」
「わかった……わかったから、旬……」
「じゃあ二度と近づかんといてな。あ、由美子さんのことな、とりあえず風俗で働いてもらうわ。」
「由美子……」
浩太は匠を担いで、出て行った。
空は匠を目で追っていた。
僕は…壊すはずのなかった家庭を壊し。大事なものを失った。
浮気をした代償だ。
「旬……」
旬は空を抱き締めた。
空は旬の胸に顔を押し付けて泣く。
「もう、浮気したらあかんよ……」
空は、何度も首を縦に振る。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
代償が重すぎる……。
罪悪感だけが残り、救いようのない話だ。

*************************

 空は刺されたのは幸い浅く。
すぐに退院することになり、旬が迎えに来た。
「お腹減ってないか?」
「うん」
病院を出て車に乗り込んだ2人。
車は発進した。
「なぁ空、俺のこと好き?」
「好きだよ」
「ほんまか?」
「本当だよ……」
空は旬を見つめる。
「嘘ついたら針千本飲まんといかんで……」
旬は運転しながら空を見る。
「俺と匠のどっちが好きなんや?はっきりさせてくれへんか?」
「え?」
旬の顔つきが変わる。空は、怖くなり旬から目をそらす。
「空、今度裏切ったら…」
「……」
「殺してもうた方がマシやな……」
旬は運転しながら呟く。
その言葉は本気だと思った。
旬に本気で殺される。
空の背中に冷や汗が流れる。
旬は空を見て笑った。
そして、空の手を握る。
「安心しろや、殺しはせーへん。ただな、俺は空を誰にも渡すつもりはないねん、たとえそれがオヤジでもな……」
空は怯えた目で旬を見た。
そして、旬の手を握り返した。
「旬……」
「なんや?」
「愛してる……」
旬は、笑顔になった。
その後、家に着いた空と旬は、抱き合い、キスをして愛し合った。
会えなかった期間の分を埋めるように……。
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