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子犬の王子
23・小さなあの子
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翌日からシリウスの修行は始まった。
日が出る前に剣技の鍛錬をして夜の遅くまで勉強をする。
その合間に国内の視察をして、ラフィリアの護衛の報告を受ける。
ラフィリアの館に人が居ないタイミングを見計らうと、予定と会わず会いに行きたいのに行けない時間が1か月ほど続いた。
幼かったシリウスの身長は少し大きくなり、少年らしさが増えた。
振るう剣にも力を帯び、小さな体に負けない剣技で並の大人にはもう負けないほどだ。
中庭に木剣の打ち合う音が響く。
「シリウス様、まだ続けますか?」
小さなシリウスの何倍もありそうな大きな熊の獣人グリザリアが、ビュンっと振るう重い木剣をシリウスは受け止めつつ、いなす訓練をしているところだ。
グリザリアは力を入れた様子もなく木剣を振るが、その重みと速さは相当なものだった。
「続ける!!」
もうとうに腕の筋肉は悲鳴を上げていたが、奥歯を食いしばり耐える。
僕は強くならなきゃいけないんだ。
あの子を守る!
シリウスの脳裏には出会ったその日の彼女の笑顔があった。
もう1か月も会えていない。
彼女は僕を覚えていてくれるだろうか?
出会った時シリウスよりも幼かったラフィリアが覚えていてくれるのか、その気持ちがシリウスを焦らせる。
「もう1本!お願いします!」
シリウスの木剣の音に片耳をそばだたせながら、王が執務室で書類を読んでいる。
「この報告は、看過出来ぬものがあるな・・・。」
書類にはシリウスに貸したラフィリアの護衛からの報告があった。
ラフィリアの現状は想像よりもひどいようだ。
「侯爵はこのことを知っているのか?それとも侯爵が我が子を殺そうとしているのか?」
にわかに信じがたい報告に王のしっぽの毛が逆立つ。
「後者かと思われます。侯爵自身が殺そうとしているのを、夫人が守ったと報告があります。」
猫獣人のセバスは感情を交えずに言葉にしたが、その口の端には口惜しさがにじむ。
王は深いため息をつく。
「私が、知らぬだけなのだろうか・・・。
人として生まれた我が子を殺すなど・・・。その様な事市井ではあることなのだろうか?」
セバスは首を振りつつも、言葉を選びながら答える。
「本来許されるはずも御座いません。
良くあることかと言われるとそうではないとは思います・・・。
・・・ただ、人として生まれた子が、すぐに死亡したり。
捨て子として放置されることは、・・・・よく聞くことかと思います。」
王は天を仰ぎ見る。
「そうか・・・・。
シリウス・・・これは、大変だな・・・。」
シリウスが鍛錬を終え自室に戻ると、机の上にシリウスだけに分かるよう施された暗号が残っていた。
「今日!・・・行けそうだな!」
シリウスは思わず満面の笑みになる自分の顔を抑えつつ、急いで準備に走った。
あの子に会える!
まだ、犬のままでしか会えないけど、会えるんだ!
あの子も、ラフィリアも大きくなったかな。
服を脱ぎ小さな子犬の姿に変化する。
犬の姿でないと抜けることのできない秘密の通路から抜け出す。
たたたたたっ。
小さな体で駆けながら、尻尾がフルフルと楽しそうに揺れるのを抑えられなかった。
最近覚えた気配を消す魔法で、侯爵邸に侵入する。
ラフィリアの館は離れの森の中に隠れすように建てられていて、警備も何もなかったので簡単に侵入できた。
シリウスは小さな子犬の姿だったので、窓を開ける時に人間にならなければいけないかと心配したが、大きな窓が控えめに開かれていて、そっと部屋に入ることができた。
ラフィリアを探して、小さな鼻をひくひくさせる。
いた!
ラフィリアは小さなベットで、すやすやとお昼寝をしていた。
窓から入る柔らかな日差しが、彼女の金色の髪を照らす。
当人たちにしか見えぬように隠蔽した紫の色が彼女の髪を神秘的に輝かせていた。
白く柔らかそうな頬っぺたは可愛らしいピンクに染まり、長いまつげが影を落としている。
可愛い・・・。
黒くふわふわのしっぽをぶんぶん振りながら、思わず彼女の寝顔に見入ってしまう。
起こしてしまうのはもったいない気がする。
でもせっかく彼女に会えたのに、起きてる彼女に会いたい。
小さなふわふわの子犬の姿で彼女の周りをうろうろとしていると、ふと、彼女が依然と同じように見えることに気が付いた。
あれ?子犬の姿でも僕は大きくなっているのに・・・彼女はあまり変わっていないような?
少し、大きくなったけど・・・。
あれ?
座り込んで首をかしげる。
彼女をスンスンと観察していると、彼女目が開きパチッと瞳があった。
大きな水色の瞳が輝く。
「ワンちゃん・・・?」
起き上がるよりも前に手を伸ばし、はぐをする。
ふいにギュッと抱き寄せられ、コロンと転がってしまう。
彼女の柔らかなほっぺと甘いにおいと暖かさに、幸せが体いっぱいに広がるのを感じる。
幸せで愛しくて彼女に顔をすりすりする。
すると彼女もスリッと返してくれた。
大好きだ!
会いたかった!
会いたかったよ~ワンちゃん
大好き~!
彼女の心の声と、僕の声が重なった。
暖かい幸せな空間が広がっていく。
こんな幸せなことがあるなんて。
でも、ラフィリアの成長は遅いような気がする・・・。
少し、調べないと・・・。
柔らかで暖かな日差しの中、彼女は僕に微笑む。
この上なく幸せな時間はこの空間にあるんだ。
日が出る前に剣技の鍛錬をして夜の遅くまで勉強をする。
その合間に国内の視察をして、ラフィリアの護衛の報告を受ける。
ラフィリアの館に人が居ないタイミングを見計らうと、予定と会わず会いに行きたいのに行けない時間が1か月ほど続いた。
幼かったシリウスの身長は少し大きくなり、少年らしさが増えた。
振るう剣にも力を帯び、小さな体に負けない剣技で並の大人にはもう負けないほどだ。
中庭に木剣の打ち合う音が響く。
「シリウス様、まだ続けますか?」
小さなシリウスの何倍もありそうな大きな熊の獣人グリザリアが、ビュンっと振るう重い木剣をシリウスは受け止めつつ、いなす訓練をしているところだ。
グリザリアは力を入れた様子もなく木剣を振るが、その重みと速さは相当なものだった。
「続ける!!」
もうとうに腕の筋肉は悲鳴を上げていたが、奥歯を食いしばり耐える。
僕は強くならなきゃいけないんだ。
あの子を守る!
シリウスの脳裏には出会ったその日の彼女の笑顔があった。
もう1か月も会えていない。
彼女は僕を覚えていてくれるだろうか?
出会った時シリウスよりも幼かったラフィリアが覚えていてくれるのか、その気持ちがシリウスを焦らせる。
「もう1本!お願いします!」
シリウスの木剣の音に片耳をそばだたせながら、王が執務室で書類を読んでいる。
「この報告は、看過出来ぬものがあるな・・・。」
書類にはシリウスに貸したラフィリアの護衛からの報告があった。
ラフィリアの現状は想像よりもひどいようだ。
「侯爵はこのことを知っているのか?それとも侯爵が我が子を殺そうとしているのか?」
にわかに信じがたい報告に王のしっぽの毛が逆立つ。
「後者かと思われます。侯爵自身が殺そうとしているのを、夫人が守ったと報告があります。」
猫獣人のセバスは感情を交えずに言葉にしたが、その口の端には口惜しさがにじむ。
王は深いため息をつく。
「私が、知らぬだけなのだろうか・・・。
人として生まれた我が子を殺すなど・・・。その様な事市井ではあることなのだろうか?」
セバスは首を振りつつも、言葉を選びながら答える。
「本来許されるはずも御座いません。
良くあることかと言われるとそうではないとは思います・・・。
・・・ただ、人として生まれた子が、すぐに死亡したり。
捨て子として放置されることは、・・・・よく聞くことかと思います。」
王は天を仰ぎ見る。
「そうか・・・・。
シリウス・・・これは、大変だな・・・。」
シリウスが鍛錬を終え自室に戻ると、机の上にシリウスだけに分かるよう施された暗号が残っていた。
「今日!・・・行けそうだな!」
シリウスは思わず満面の笑みになる自分の顔を抑えつつ、急いで準備に走った。
あの子に会える!
まだ、犬のままでしか会えないけど、会えるんだ!
あの子も、ラフィリアも大きくなったかな。
服を脱ぎ小さな子犬の姿に変化する。
犬の姿でないと抜けることのできない秘密の通路から抜け出す。
たたたたたっ。
小さな体で駆けながら、尻尾がフルフルと楽しそうに揺れるのを抑えられなかった。
最近覚えた気配を消す魔法で、侯爵邸に侵入する。
ラフィリアの館は離れの森の中に隠れすように建てられていて、警備も何もなかったので簡単に侵入できた。
シリウスは小さな子犬の姿だったので、窓を開ける時に人間にならなければいけないかと心配したが、大きな窓が控えめに開かれていて、そっと部屋に入ることができた。
ラフィリアを探して、小さな鼻をひくひくさせる。
いた!
ラフィリアは小さなベットで、すやすやとお昼寝をしていた。
窓から入る柔らかな日差しが、彼女の金色の髪を照らす。
当人たちにしか見えぬように隠蔽した紫の色が彼女の髪を神秘的に輝かせていた。
白く柔らかそうな頬っぺたは可愛らしいピンクに染まり、長いまつげが影を落としている。
可愛い・・・。
黒くふわふわのしっぽをぶんぶん振りながら、思わず彼女の寝顔に見入ってしまう。
起こしてしまうのはもったいない気がする。
でもせっかく彼女に会えたのに、起きてる彼女に会いたい。
小さなふわふわの子犬の姿で彼女の周りをうろうろとしていると、ふと、彼女が依然と同じように見えることに気が付いた。
あれ?子犬の姿でも僕は大きくなっているのに・・・彼女はあまり変わっていないような?
少し、大きくなったけど・・・。
あれ?
座り込んで首をかしげる。
彼女をスンスンと観察していると、彼女目が開きパチッと瞳があった。
大きな水色の瞳が輝く。
「ワンちゃん・・・?」
起き上がるよりも前に手を伸ばし、はぐをする。
ふいにギュッと抱き寄せられ、コロンと転がってしまう。
彼女の柔らかなほっぺと甘いにおいと暖かさに、幸せが体いっぱいに広がるのを感じる。
幸せで愛しくて彼女に顔をすりすりする。
すると彼女もスリッと返してくれた。
大好きだ!
会いたかった!
会いたかったよ~ワンちゃん
大好き~!
彼女の心の声と、僕の声が重なった。
暖かい幸せな空間が広がっていく。
こんな幸せなことがあるなんて。
でも、ラフィリアの成長は遅いような気がする・・・。
少し、調べないと・・・。
柔らかで暖かな日差しの中、彼女は僕に微笑む。
この上なく幸せな時間はこの空間にあるんだ。
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