シニカル ショート ストーリーズ

直木俊

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老後の過ごし方

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櫻井は、ロボットのような、何の面白みもない、典型的なサラリーマンだ。 

決まった時間に起き、身支度し、一時間電車に乗って会社へ行き、決まった時間に帰って寝る。 「子供も大きくなり、もう少しの辛抱で長いサラリーマン生活から開放される。」 開放。。。ふと疑問に思った。 

「私は、人生のことを、開放されるべき牢獄のようにやり過ごして、我慢するだけのものだと思っていたのか?」 

 人生を年表にしてみた。残り三分の一。少なさに愕然とする。この先、漫然と人生を浪費しながら死んでいくのか。。。 櫻井は、老後に彼の人生を掛けようと決心したが、何をやるか見当もつかない。

人によっては、陶芸や絵画、スポーツ、旅行といった趣味を見つけて、豊かな老後をエンジョイしながら過ごそうと計画するだろう。 しかし、寿命の前に、破産するかもしれないと諦めた。 

一歩、向上してボランティア活動に励むか? どうも、あの人たちは高潔すぎて櫻井には合いそうもない。ストレスで寿命が縮みそうだ。 

孫に“首ったけ”になっている老人も考え物だ。子供たちからすれば“金ずる“か”保母さん“くらいにしか思われていないからだ。その証拠に、彼自身も自分の親の事をそう思っていた。

しかし、最近、熟年離婚が増えているそうだ。そうなれば、話の展開が違ってくる。

妻は妻で、何か思い描いているだろう。ひょっとしてジャニーズの追っかけをするかもしれない。というか、その可能性は限りなく高い。その証拠に、話の途中でも、若くてかっこいい男がテレビに出てくる度、目にも留まらぬ速さで、リモコンを手にしたかと思うと、音声上げて画面にかじりついているのだ。

これは、まるで、新種の生物のようだ。今、あきらかに、ホモ・サピエンスの新しい亜種の誕生に立ち会っているのではないか、という感動さえ覚えるのだ。

何かが見えてきた気がした。老後に隠居するのではなく、ひとつでも多く、何か新しい発見が出来るはずだ。常に、感動する心を忘れなければ、道は開けると、櫻井は思った。
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