シニカル ショート ストーリーズ

直木俊

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国家機関の件

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この世が、本当の現実だと証明できる人はどれだけいるだろうか?

リングの小説版では、教授は貞子に呪い殺される前に、この世はプログラムされた世界だと気付き、リアルの世界に電話をかける、マトリックスはハッカーの主人公が、リアルの世界からのメッセージを読み解く。共に今の世界が仮想現実だったという話だ。

仮想現実も、ウイルスの脅威によって、非接触の世界が求められ、加速度的に進化するであろう。今でさえ、グーグルマップのストリートビューで、街を徘徊し、レストランのメニューや評判を見ていると、実際に旅行した気分を味わえる。

現実の世界なしに仮想現実は成り立たないと思われているが、もし完璧な仮想現実が出来ると、仮想の中で進化が始まり、現実を追い越してしまう。現実は時代遅れとなり、肉体を維持するためだけの世界となるだろう。

肉体は退化し、歩行も困難になり、脳だけが巨大化する。肉体の世話は、機械が自動で行う。脳機能の高さで異性を惹きつけ結婚し、体外受精で子供が作られる。肉体活動が極めて少ないので二酸化炭素の排出も微量で、環境破壊は改善する。

働く必要はない。機械の生産、改良、メンテナンスは脳の指示で機械が行う。戦争や災害、差別も無い、永続的なシステムが完成する。五十億年が経って地球の寿命が来た時、全人類が乗れる巨大宇宙船で、宇宙を漂うことになる。

五十億年後の仮想現実は、一体どのように進化した世界なのだろうか?


本当は国家秘密なのだが、誰も信じないと言う事で、話すことは許可されているので、ここに書くが、


「今の地球がその仮想現実なのだ。」


どんなに進化しても、戦争や災害、差別がないと人間は生きていけないらしい。


あなたが、もし本当の意味で目を覚ましたなら、巨大宇宙船に詰め込まれた大量の脳を目撃するだろう。
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