57 / 99
人生最後の夢
しおりを挟む
三谷浩二は、独身の40歳、高校卒業から無駄遣いせず、真面目に仕事を続けたかいあって、老後の資金が出来たので、少し早いがリタイヤする事にした。
すべての楽しみを諦めて、ひたすら働いてお金を貯めたのは、ずっと憧れていた、キャンピングカー日本一周旅行をする為だ。
最初は、観光気分で楽しかったのだが、すぐに飽きてきた。旅行は、日常から抜け出し、仕事の合間にするからこそ楽しいのだ。人生そのものが旅行になってしまっては、風天の寅さんのようで、旅が日常になってしまい、新鮮味がないので苦痛になる。
やはり、人生には目的や、やりがいが必要なのだ。いろいろ考えたが、何も浮かばない。現役時代はあんなに憧れた、老後の気ままな暮らしが、こうも味気ないものなのかと愕然とし、絶望した。
希望を失った三谷には、もはや生きる意味は無かった。人里離れた山道で、排ガスを室内にホースで繋ぎ、自殺を試みた。
意識が虚ろになっていく中で、突然ひらめいた。開き直って、風天の寅さんのようにテキ屋をしよう。何を売ろうかと考えた末、移動式カフェに決めた。豆を仕入れて、ローストする本格的な機材と、高級な家具も購入し、お洒落なカフェが完成した。BGMはジャズが流れている。
全国を周り、長くて一ヶ月位、一か所に滞在した。コーヒーを喜んで飲んでくれるお客様との会話は、三谷が感じたことのない充実感を与えてくれた。今まで、ひたすら無感動に仕事をしてきた事を後悔したが、結果良ければ全て良しだ。
そして、公にできる範囲の内容で、お客様とのふれあいをブログで発信するようになった。まったりとした内容が人気を呼び、購読者は50万人を超え、行く先々で声をかけられるようになった。
40歳まで続けた仕事は、会社と家の往復で、新しい出合いは全く無い虚しい人生だったが、今は、毎日が、新しい出会いの連続で、幸せいっぱいで最高の気分だ。もう、思い残すことは何もない。いつ死んでもいいとさえ思った。
明るい光の中で、至福の幸せに包まれながら我に返った。
あの人里離れた山道での、自殺の最中であった。
三谷の孤独で虚しい一生を補填するかの様に、人生最後の夢を見たのであった。
すべての楽しみを諦めて、ひたすら働いてお金を貯めたのは、ずっと憧れていた、キャンピングカー日本一周旅行をする為だ。
最初は、観光気分で楽しかったのだが、すぐに飽きてきた。旅行は、日常から抜け出し、仕事の合間にするからこそ楽しいのだ。人生そのものが旅行になってしまっては、風天の寅さんのようで、旅が日常になってしまい、新鮮味がないので苦痛になる。
やはり、人生には目的や、やりがいが必要なのだ。いろいろ考えたが、何も浮かばない。現役時代はあんなに憧れた、老後の気ままな暮らしが、こうも味気ないものなのかと愕然とし、絶望した。
希望を失った三谷には、もはや生きる意味は無かった。人里離れた山道で、排ガスを室内にホースで繋ぎ、自殺を試みた。
意識が虚ろになっていく中で、突然ひらめいた。開き直って、風天の寅さんのようにテキ屋をしよう。何を売ろうかと考えた末、移動式カフェに決めた。豆を仕入れて、ローストする本格的な機材と、高級な家具も購入し、お洒落なカフェが完成した。BGMはジャズが流れている。
全国を周り、長くて一ヶ月位、一か所に滞在した。コーヒーを喜んで飲んでくれるお客様との会話は、三谷が感じたことのない充実感を与えてくれた。今まで、ひたすら無感動に仕事をしてきた事を後悔したが、結果良ければ全て良しだ。
そして、公にできる範囲の内容で、お客様とのふれあいをブログで発信するようになった。まったりとした内容が人気を呼び、購読者は50万人を超え、行く先々で声をかけられるようになった。
40歳まで続けた仕事は、会社と家の往復で、新しい出合いは全く無い虚しい人生だったが、今は、毎日が、新しい出会いの連続で、幸せいっぱいで最高の気分だ。もう、思い残すことは何もない。いつ死んでもいいとさえ思った。
明るい光の中で、至福の幸せに包まれながら我に返った。
あの人里離れた山道での、自殺の最中であった。
三谷の孤独で虚しい一生を補填するかの様に、人生最後の夢を見たのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
女帝の遺志(第二部)-篠崎沙也加と女子プロレスラーたちの物語
kazu106
大衆娯楽
勢いを増す、ブレバリーズ女子部と、直美。
率いる沙也加は、自信の夢であった帝プロマット参戦を直美に託し、本格的に動き出す。
一方、不振にあえぐ男子部にあって唯一、気を吐こうとする修平。
己を見つめ直すために、女子部への入部を決意する。
が、そこでは現実を知らされ、苦難の道を歩むことになる。
志桜里らの励ましを受けつつ、ひたすら練習をつづける。
遂に直美の帝プロ参戦が、現実なものとなる。
その壮行試合、沙也加はなんと、直美の相手に修平を選んだのであった。
しかし同時に、ブレバリーズには暗い影もまた、歩み寄って来ていた。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百の話を語り終えたなら
コテット
ホラー
「百の怪談を語り終えると、なにが起こるか——ご存じですか?」
これは、ある町に住む“記録係”が集め続けた百の怪談をめぐる物語。
誰もが語りたがらない話。語った者が姿を消した話。語られていないはずの話。
日常の隙間に、確かに存在した恐怖が静かに記録されていく。
そして百話目の夜、最後の“語り手”の正体が暴かれるとき——
あなたは、もう後戻りできない。
■1話完結の百物語形式
■じわじわ滲む怪異と、ラストで背筋が凍るオチ
■後半から“語られていない怪談”が増えはじめる違和感
最後の一話を読んだとき、
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる