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元の世界に戻る方法
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秦陽国の朝陽城は国の東側の広大な丘陵地にあり、『日出ひいずる城郭』として民の間では信仰の対象になっているという。
その朝陽城の後宮はそれはそれは広く迷路のような通路が入り組んでいる。それは敵襲を阻み、城そのものが守りの要になるように設計されている。
「はあ~~・・・」
後宮内に大小いくつもある池の中、睡蓮の花が咲き誇る小ぶりな池のほとりで、秀鈴はため息をついてしゃがみ込む。
(どうしてこんなに同じような道なんだか・・・)
自分の中で得意なことや自慢できるは片手で数えるほどしかないけど、苦手なことは数えきれないほどあってその中に方向音痴という大きな欠点がある。
今、秀鈴はすっかり迷子になり途方にくれているところだ。
今朝、中宮(皇后がお住いの宮)から使いの者がやってきて、皇后が鄭妃への贈り物を用意されたから取りに来るようにと仰せつかった。
皇后にしてみれば鄭妃は年が離れていて、幼い妹とか下手すれば娘のように思って他の妃よりも可愛がっている。
それに鄭家は代々三公(大尉・司徒・司空)の一つ司徒を受け継ぐ家系で、祭祀や占いをするのに特化する能力を持っている。
鄭妃が後宮に入内したのも、生まれ持って彼女が占いする能力に長けていたという理由がある。
今回も、春節行事のために鄭妃が占いを行い、風水みたいな吉凶禍福の占いをしてもらったお礼だとか言って珍しいお菓子と装飾品を贈られた。
「行きはよいよい帰りは恐い・・・」
どうして行った道と帰る道は違って見えるのだろう? 自分の脳の空間認知能力を恨む。
睡蓮の池を柳の木の下に座ってしばらく眺めている内に、池に飛び込んだら元の世界に戻るっていう昔見たドラマを思い出した。
「まあ、どうせ一回は死んでいるんだし、飛び込んでみて試してみるのもいいかもね」
そんな物騒なことを独り言ちていると、
「この池は浅いから、ずぶ濡れになるだけだがやってみるか?」
秀鈴のつぶやきに対して返事が来る。
ふり返るとニヤニヤと笑う 杜光偉が立っていた。瞬時に秀鈴は嫌な顔してソッポを向く。
この杜 光偉、これでも大将軍の嫡男であり、太子少傅という皇太子の側近の1人だ。普通であれば10番目の側妃の侍女である秀鈴なんかが話をできるような人ではない。
見るからに武人相応な体躯をしているが身長は175cmくらいで細マッチョの部類だ。まあ、そのほうが機敏な動きができるのだろう。
(あのときも・・・)
2人が初めてあったのも城内。今と同じように迷子になり途方に暮れつつ回廊を歩いていると、護衛を付けた高貴な集団に出くわし仕方がなく道の端に寄って平伏して行き過ぎるのを待った。
すると目の前を行き過ぎようとする一歩手前で事件が起きた。
怒号が伏せた頭の上でしたと思ったら、騒然と争う男たち。思わず顔を上げてみると、それは時代劇の太刀みたく切り合いの戦闘が繰り広げられていた。黒ずくめの刺客?5人と相対する護衛陣は主人を囲んで3人と役に立ちそうにない宦官大勢が対峙する構図だった。
切り付けられる宦官達のなかで、フワリフワリと身軽に立ち回り刺客を始末していったのが武人 杜 光偉だった。
逃げるのも忘れて、アクション俳優顔負けだと見惚れていた秀鈴は、光偉の背後に回り込み太刀を打ち下ろす刺客を見つけて叫んでしまった。
『うしろ~~』
その朝陽城の後宮はそれはそれは広く迷路のような通路が入り組んでいる。それは敵襲を阻み、城そのものが守りの要になるように設計されている。
「はあ~~・・・」
後宮内に大小いくつもある池の中、睡蓮の花が咲き誇る小ぶりな池のほとりで、秀鈴はため息をついてしゃがみ込む。
(どうしてこんなに同じような道なんだか・・・)
自分の中で得意なことや自慢できるは片手で数えるほどしかないけど、苦手なことは数えきれないほどあってその中に方向音痴という大きな欠点がある。
今、秀鈴はすっかり迷子になり途方にくれているところだ。
今朝、中宮(皇后がお住いの宮)から使いの者がやってきて、皇后が鄭妃への贈り物を用意されたから取りに来るようにと仰せつかった。
皇后にしてみれば鄭妃は年が離れていて、幼い妹とか下手すれば娘のように思って他の妃よりも可愛がっている。
それに鄭家は代々三公(大尉・司徒・司空)の一つ司徒を受け継ぐ家系で、祭祀や占いをするのに特化する能力を持っている。
鄭妃が後宮に入内したのも、生まれ持って彼女が占いする能力に長けていたという理由がある。
今回も、春節行事のために鄭妃が占いを行い、風水みたいな吉凶禍福の占いをしてもらったお礼だとか言って珍しいお菓子と装飾品を贈られた。
「行きはよいよい帰りは恐い・・・」
どうして行った道と帰る道は違って見えるのだろう? 自分の脳の空間認知能力を恨む。
睡蓮の池を柳の木の下に座ってしばらく眺めている内に、池に飛び込んだら元の世界に戻るっていう昔見たドラマを思い出した。
「まあ、どうせ一回は死んでいるんだし、飛び込んでみて試してみるのもいいかもね」
そんな物騒なことを独り言ちていると、
「この池は浅いから、ずぶ濡れになるだけだがやってみるか?」
秀鈴のつぶやきに対して返事が来る。
ふり返るとニヤニヤと笑う 杜光偉が立っていた。瞬時に秀鈴は嫌な顔してソッポを向く。
この杜 光偉、これでも大将軍の嫡男であり、太子少傅という皇太子の側近の1人だ。普通であれば10番目の側妃の侍女である秀鈴なんかが話をできるような人ではない。
見るからに武人相応な体躯をしているが身長は175cmくらいで細マッチョの部類だ。まあ、そのほうが機敏な動きができるのだろう。
(あのときも・・・)
2人が初めてあったのも城内。今と同じように迷子になり途方に暮れつつ回廊を歩いていると、護衛を付けた高貴な集団に出くわし仕方がなく道の端に寄って平伏して行き過ぎるのを待った。
すると目の前を行き過ぎようとする一歩手前で事件が起きた。
怒号が伏せた頭の上でしたと思ったら、騒然と争う男たち。思わず顔を上げてみると、それは時代劇の太刀みたく切り合いの戦闘が繰り広げられていた。黒ずくめの刺客?5人と相対する護衛陣は主人を囲んで3人と役に立ちそうにない宦官大勢が対峙する構図だった。
切り付けられる宦官達のなかで、フワリフワリと身軽に立ち回り刺客を始末していったのが武人 杜 光偉だった。
逃げるのも忘れて、アクション俳優顔負けだと見惚れていた秀鈴は、光偉の背後に回り込み太刀を打ち下ろす刺客を見つけて叫んでしまった。
『うしろ~~』
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