転生した私はバイプレイヤーで満足です

柚木 倫太郎

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この関係…落ち着きます

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あの日から次の日も、また次の日も、結局10日間も治薬院に秀鈴は出勤していなかった。もともとお手伝いみたいな仕事で重要な任務をしているわけではないから行っても行かなくても支障がないと思ったからだ。



もともと、御上である照陽王の命令でお手伝いをしていたわけで、初めから宋先生は秀鈴を疎んでいたわけだから今更だけど出社拒否してもいいだろう。



始めは風邪を引いたからと言い、その後はいろいろと仮病の理由を連ねて水晶宮からは一歩も外には出ていない。外をウロウロ歩かなければ 杜 光偉に会うこともないし、その生活を地味にしていけば平和だった以前の状態が戻ってくるはずだ。



「 今日もいい天気だ 」



最近は雨季に入る前の乾季なのかよく晴れる。これは田植えをするちょっと前のプレゼント快晴とこの世界では言っている。心地よい気温で花草木が茂り、虫鳥動物もちろん人間も活動的になる。



「 洗濯日和だよ 」



秀鈴も敷地内で元気に動き回っている。大きく背伸びをして、主人の世話の合間に自分の部屋の掃除や洗濯をして過ごしていた。



「 秀鈴さん お客さんですけど 」



主人の鄭妃はお昼寝の時間。侍女の秀鈴も鄭妃の部屋隣りで控えながら縫物をしていると、下働きの門番が鄭妃付きの宦官を通して言ってくる。



「 だれ? 」



客と聞いて何故かすぐに光偉の顔が浮かんでしまう。この前も用事があったみたいだったし、気になっていた。



「 治薬院の 許亮キョリャン様がお越しですが 」

「 亮さん? 行く。すぐ行く 」



宋先生は苦手だけど亮のことは同僚として好きだ。ニコニコと穏やかにほほ笑んで、覚えの悪い秀鈴に辛抱強く教えてくれる亮の顔を思い出してみるが・・・、地味すぎてぼんやりとしか思い出せない状態のまま彼の待つ水晶宮の門前へ急いだ。



「 亮さん 」

「 あ、秀鈴さん お体はどうですか? 」



秀鈴と同じくらいの身長でほっそりとしたいかにも文系地味男子の亮は、いつも笑っているような細い目に小さい鼻薄い唇で秀鈴と同様な地味さだ。

お見舞いに来たという亮を案内して使用人が使用できる裏庭に案内した。湯呑にミントの葉を浮かべた冷たい井戸水を彼に差し出す。



「 ありがとう 最近は暑くなってきたからね、冷たくて美味しいよ 」



庭石に2人で腰かけ綺麗に咲き誇っている裏庭のツツジを眺める。彼は宋先生に言われて薬を届けに来たと言った。もともと出自は文官の家の亮は、宋先生の足元には及ばないが生まれ持った不思議な力がある。その才能を見込まれて治薬院の助手をしているのだと前に話して聞かせてくれた。



「 宋先生が・・・?本当に? 」

「 とても心配しておられましたよ 」



疑いのまなざしの秀鈴に対して、宋先生を尊敬している亮は真面目に言う。そして、小柴胡湯しょうさいことう・・・風邪薬・・・を手渡す。あの宋先生が秀鈴の仮病を見抜いていないはずはないと思ったが、疑うことを知らない亮には言うのをやめておいた。



せっかく来たのだからと秀鈴は亮とたわいのないおしゃべりを楽しんだ。亮は治薬院の最近の様子や世間話なんかを話す。男子というよりも女子に近い関係に、性別関係ない友情みたいなものを感じてしまう。



( ああ、この感じ・・・落ち着くわ~ )



亮は地味と言っても元々の身分は高く、次男じゃなければ今頃は国の重要な部署で働く文官になっているような人物だ。だから、国の情勢やこの世界の歴史についても詳しくて、治薬院の時からいろいろ教えてもらっていた。



「 どうもね、情勢が悪くなりつつあるみたい。だから宋先生もピリピリしていたんだ 」



秀鈴に冷たくする宋先生のことを亮は庇っていろいろ理由を考える。確かに皇太子である雲陽が城内で暗殺されかかるのだから、平穏な状況ではないのかもしれない。



「 暗殺の首謀犯はわかったの? 」

「 いや、それはまだみたい。でも、御上はお気づきになっていると思うよ 」



御上というのは照陽王のこと。彼には不思議な能力が代々受け継がれているから、世界の動きが予見できるとか言ってた。そんなことありえるのか?と秀鈴はあんまり信用していない。



「 噂話だと、海鷹王かいようおうの復活とか 巫覡ふげきの復讐とか言っているけどね 」

「 巫覡って 」

「 巫覡・・・は・・・・」



「 う、うう・・・・」



さっきまで普通に話をしていたのに、亮が急に胸を押さえて苦しみ出した。



「 どうしたの?? 」



前かがみになり俯く彼の背中をさすりながら焦る秀鈴。



「 ううううう・・・ 」



心配して覗き込む秀鈴に、彼は弾かれたように急に顔だけ上げる。その顔は今までの彼のものではなく、細い目を見開いている。その眼は白目のところまで真っ黒だった。



「 お・・・おまえは・・・だれだ・・・」



低く地響きのするような声は、亮のものではない。



( と・取り憑かれてる?? )



秀鈴はそう思うと同時に反射的に体が動いて、亮の額を思い切り張り倒していた。





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