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私はドクターじゃないのナースですから
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タイムトラベルものの医療ドラマ、海外のものを含めて録画をしたりして毎週楽しみにワクワクドキドキしながら見ていたものだ。
本職から見た医療ドラマはよくできているものからそうでないものまでいろいろあって、そこで行われている医療も『ああ~分かる』というものから分野外で『へぇ~これってこうなんだ~』て感心するものまである。
だが、そこの中の主人公はだいたい・・・
( 私は医者じゃないっていうの! )
所詮、看護師は療養上の世話や診療上の補助を行い、医療行為をするには『 医師の指示のもと・・・ 』という文言が初めにくっつく職業だ。
秀鈴は髪の毛を振り乱し必死で叫んでいた。
「 だれか、だれか 来てくださーい 」
地面に倒れている人の傍らにしゃがみ込み、彼、 許 亮の胸に両掌を乗せて胸骨を押し心肺蘇生術をしている。
「 救急車ーー じゃない。そ・宋・・・宋先生を 宋先生を呼んできてください 」
滴り落ちる汗、いつもであれば綺麗に結い上げられている髪は前も後ろも遅れ髪が落ちながら必死に胸骨圧迫を繰り返していた。
こんなことになったのは、ついさっき起こったホラーな出来事からだ。
『 ・・・おまえは・・・だれだ・・・』
取り憑かれた亮が掴みかからんばかりに迫ってきたので、おでこを平手で張り倒した。そしたら、彼はそのままなんの抵抗もなく後ろに崩れ落ちてしまった。
座っている態勢から地面に崩れ落ちただけだったのに、亮は意識を失っただけじゃなく息もしていなかった。秀鈴はすぐに、倒れている亮の両肩を叩きながら彼の名を呼ぶ。
名前を呼んでも答えず意識はないと分かると、応援要請しながら素早く頸動脈を確認する。本当なら拍動がドクドクしている場所は慌てて触るからじゃなくて触れない。脈拍が確認できない。
パニックになる頭とは反対に体は勝手に動く。息もしていないのを確認した後、首を後屈させ顎を押し上げて気道確保。そのあとは迷うことなく胸骨圧迫と人工呼吸を繰り返す。
( 胸骨圧迫は30回 強さは胸骨が5~6cm沈むくらい テンポは100回以上/分 だったはず・・・確か・・・ )
「 『もしもしカメよ』だった。そうそう 」
秀鈴は心の中で、いや口に出して『もしもしカメよカメさんよ、世界のうちでお前こそ』と歌いそのテンポで胸を押す。1番が終わると2回人工呼吸をして、2番の歌詞を知らないから1番の歌詞を繰り返し歌う。
ここで冒頭のところにもどる。秀鈴は必死に亮を救うために心臓マッサージを繰り返していた。ここには応援してくれる仲間は誰もいない。遠巻きにしてみんなが見ているがどうしていいのか分からず呆然と立ち尽くしているだけだ。
胸骨圧迫を歌いながらしているうちに涙が出てくる。汗なのか涙なのか鼻水なのか分からないものが、まったく動かない亮の胸に落ちるけどそんなことも構っていられない。
肩が滅茶苦茶痛い。胸骨を押す腕は震えているし掌はもう感覚がない。一旦心臓マッサージをする手を止めて息と脈拍を見たが、亮は血の気がなくぐったりとして脈も戻らない。
「 くっそー、心臓動けー 」
ここにはDC(除細動器)もAEDもない。動かない心臓に苛立ちが募る。ボロボロ涙を流しながらもう力の入らない手を握りしめその手を振り上げて彼の胸を叩く。もう一種の賭けみたいなもんだ。
「 秀鈴 」
いつもは冷静沈着な低い声がいつもになく切羽詰まって聞こえる。涙でぐちょぐちょになった顔で秀鈴は駆け付けた宋先生を振り返り見る。
「 う、ゴッ ゴホゴホ 」
それと同時に横たわったままだった亮が息を吹き返した。
「 亮さん。 亮さん。 先生、先生、亮さんが・・・亮さんが 」
風のように静かに傍らに座り込む宋先生は、泣きじゃくる秀鈴を労うように頭を2回ポンポンと叩いた後亮の容態を診察しあの不思議な力を駆使して治療を始めた。
放心して地面に座り込む秀鈴の前で、宋先生の治療で亮は青白い顔色がもとの血色に戻り呼吸も穏やかに戻っていった。そして、病状が落ち着いた亮は宋先生の指示で担架に乗せられて治薬院に運ばれていった。
野次馬のように集まっていた水晶宮の使用人達はそれぞれの持ち場に戻っていき、座り込んで動けない秀鈴と宋先生だけがその場に残された。
「 立てるか? 」
細身の宋先生に似合わない力強さで秀鈴は助け起こされたが、完全に腰を抜かしていて足に力が入らず彼に抱き着いている感じだった。
「 ずみません 」
涙と鼻水で汚れ切った顔を袖で拭いて謝り、彼から離れようとしたがその反対に引き上げてくれた反対の左腕が秀鈴の背中に回り引き寄せられている。
「 よく頑張ったな 」
「 こんなときにそんなこと言わないでくださいよ~ 泣けるじゃないですか 」
「 泣けばいい 」
そういうと背中を子供をあやすみたいに叩く。いつもにない宋先生のやさしさに止まりかけていた涙腺が崩壊して号泣するのだった。
本職から見た医療ドラマはよくできているものからそうでないものまでいろいろあって、そこで行われている医療も『ああ~分かる』というものから分野外で『へぇ~これってこうなんだ~』て感心するものまである。
だが、そこの中の主人公はだいたい・・・
( 私は医者じゃないっていうの! )
所詮、看護師は療養上の世話や診療上の補助を行い、医療行為をするには『 医師の指示のもと・・・ 』という文言が初めにくっつく職業だ。
秀鈴は髪の毛を振り乱し必死で叫んでいた。
「 だれか、だれか 来てくださーい 」
地面に倒れている人の傍らにしゃがみ込み、彼、 許 亮の胸に両掌を乗せて胸骨を押し心肺蘇生術をしている。
「 救急車ーー じゃない。そ・宋・・・宋先生を 宋先生を呼んできてください 」
滴り落ちる汗、いつもであれば綺麗に結い上げられている髪は前も後ろも遅れ髪が落ちながら必死に胸骨圧迫を繰り返していた。
こんなことになったのは、ついさっき起こったホラーな出来事からだ。
『 ・・・おまえは・・・だれだ・・・』
取り憑かれた亮が掴みかからんばかりに迫ってきたので、おでこを平手で張り倒した。そしたら、彼はそのままなんの抵抗もなく後ろに崩れ落ちてしまった。
座っている態勢から地面に崩れ落ちただけだったのに、亮は意識を失っただけじゃなく息もしていなかった。秀鈴はすぐに、倒れている亮の両肩を叩きながら彼の名を呼ぶ。
名前を呼んでも答えず意識はないと分かると、応援要請しながら素早く頸動脈を確認する。本当なら拍動がドクドクしている場所は慌てて触るからじゃなくて触れない。脈拍が確認できない。
パニックになる頭とは反対に体は勝手に動く。息もしていないのを確認した後、首を後屈させ顎を押し上げて気道確保。そのあとは迷うことなく胸骨圧迫と人工呼吸を繰り返す。
( 胸骨圧迫は30回 強さは胸骨が5~6cm沈むくらい テンポは100回以上/分 だったはず・・・確か・・・ )
「 『もしもしカメよ』だった。そうそう 」
秀鈴は心の中で、いや口に出して『もしもしカメよカメさんよ、世界のうちでお前こそ』と歌いそのテンポで胸を押す。1番が終わると2回人工呼吸をして、2番の歌詞を知らないから1番の歌詞を繰り返し歌う。
ここで冒頭のところにもどる。秀鈴は必死に亮を救うために心臓マッサージを繰り返していた。ここには応援してくれる仲間は誰もいない。遠巻きにしてみんなが見ているがどうしていいのか分からず呆然と立ち尽くしているだけだ。
胸骨圧迫を歌いながらしているうちに涙が出てくる。汗なのか涙なのか鼻水なのか分からないものが、まったく動かない亮の胸に落ちるけどそんなことも構っていられない。
肩が滅茶苦茶痛い。胸骨を押す腕は震えているし掌はもう感覚がない。一旦心臓マッサージをする手を止めて息と脈拍を見たが、亮は血の気がなくぐったりとして脈も戻らない。
「 くっそー、心臓動けー 」
ここにはDC(除細動器)もAEDもない。動かない心臓に苛立ちが募る。ボロボロ涙を流しながらもう力の入らない手を握りしめその手を振り上げて彼の胸を叩く。もう一種の賭けみたいなもんだ。
「 秀鈴 」
いつもは冷静沈着な低い声がいつもになく切羽詰まって聞こえる。涙でぐちょぐちょになった顔で秀鈴は駆け付けた宋先生を振り返り見る。
「 う、ゴッ ゴホゴホ 」
それと同時に横たわったままだった亮が息を吹き返した。
「 亮さん。 亮さん。 先生、先生、亮さんが・・・亮さんが 」
風のように静かに傍らに座り込む宋先生は、泣きじゃくる秀鈴を労うように頭を2回ポンポンと叩いた後亮の容態を診察しあの不思議な力を駆使して治療を始めた。
放心して地面に座り込む秀鈴の前で、宋先生の治療で亮は青白い顔色がもとの血色に戻り呼吸も穏やかに戻っていった。そして、病状が落ち着いた亮は宋先生の指示で担架に乗せられて治薬院に運ばれていった。
野次馬のように集まっていた水晶宮の使用人達はそれぞれの持ち場に戻っていき、座り込んで動けない秀鈴と宋先生だけがその場に残された。
「 立てるか? 」
細身の宋先生に似合わない力強さで秀鈴は助け起こされたが、完全に腰を抜かしていて足に力が入らず彼に抱き着いている感じだった。
「 ずみません 」
涙と鼻水で汚れ切った顔を袖で拭いて謝り、彼から離れようとしたがその反対に引き上げてくれた反対の左腕が秀鈴の背中に回り引き寄せられている。
「 よく頑張ったな 」
「 こんなときにそんなこと言わないでくださいよ~ 泣けるじゃないですか 」
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