転生した私はバイプレイヤーで満足です

柚木 倫太郎

文字の大きさ
19 / 25

捕らわれた秀鈴

しおりを挟む
「 何これ? ヤダ 」



自分の手の平の上で、禍々しいものが宙に浮かんでいるのを見た秀鈴は、汚いものを振り落とすように手を振るが元に戻すとそれは変わらず手の上に乗っていた。



『 秀鈴 ・・・ 』



禍々しい小人が秀鈴の名前を呼ぶ。そして、ゆるりと右手を上げると手招きをする。



『 こちらへ 来い ・・・ 』



ズルズルした黒い長い着物に真っ黒な長い髪。目は見えないが口は弧を描き笑みを浮かべていた。見たくもないのにそれに引き込まれていく。目が離せない。



「 秀鈴! 」



光偉が彼女の名前を叫びながら、素早い身のこなしで太刀を振り下ろしその『式神』を切り裂くのが見える。真っ二つに切り裂かれた『式神』は、ただの紙と化してヒラヒラと秀鈴の手の平から落ちて行った。



いつも人をからかい天邪鬼的な顔を見せる光偉が焦っていた。そして、彼が真面目顔で近づいてくるのを秀鈴は見つめていたが、視野がだんだんと狭まって暗闇に吸い込まれていくような感覚に囚われる。



( もしかしたら、私も取り憑かれているの )



亮と光偉の2人が目の前で取り憑かれるのを間近で見たことがあるから、自分もあんな風に侵されていっているのだと分かる。視覚だけでなく体の自由も奪われて身動きができない状態にもなってきていた。



「 おい しっかりしろ 」



光偉は固まったまま動かない秀鈴を強く抱き締める。表情をなくし目が黒色に侵され始める秀鈴の顔に触れ、何度も名前を呼ぶが何の反応も無くなっていった。



秀鈴の呼吸は浅くなり胸郭の動きも小さくなっていく。光偉は左腕だけで秀鈴の体を支え抱き合ったまま、彼女の首を後屈させて口付けをして大きく息を送り込んだ。



「 秀鈴 目を開けろ 死ぬな 」



彼は秀鈴に呼びかけながら必死で何度もマウスツーマウス・・・口付けを繰り返した。







「 秀鈴 」



雲一つない夕暮れの空を切り裂くような光と共にすさまじい音の雷が2人のすぐ近くに落ち、その勢いに2人は吹き飛ばされ倒れ込む。

雷が落ちて煙が上がった見張り台に2人の姿が現れる。それは、照陽王と宋先生だった。



「 へ・・・陛下 」



這いつくばったまま2人を仰ぎ見た光偉は素早く起き上がろうとしたが、上半身を起き上がらせただけで立ち上がれずにもがく。



「 そのままでよい 」

「 申し訳ありません 」



その間に宋先生が秀鈴の傍らに近づき片膝をついて彼女の上半身を抱き起こし、頭上に掌をかざして呪文を唱えた。



「 ・・・ん・・・ 」



うめき声を上げた後に秀鈴はゆっくりと目を開ける。その目は普段と変わりないものに戻っていた。



「 そう・・・先生? 」

「 もう大丈夫です 」



宋先生は病人の熱を見る時のように、秀鈴のおでこや頬を手の平で優しく触れながら言う。前に助けてくれたのもあるし、この手で触れられると落ち着く。



「 あれ? へいか? 陛下がいる 」



さっきまで会っていたのに、なぜここにいるのか?秀鈴は訳がわからず目を瞬かせて照陽王を見上げる。

そして急に思考が繋がって慌てた。弾けるように起き上がろうとしたが失敗して呻く。



「 慌てるな。そのままでよい 」



照陽王は秀鈴を手で制して彼女を見下ろしていたが、傍に落ちているものを見つけ切り裂かれた『式神』を拾い上げた。



「 巫覡ふげきか 」



つぶやくように言うと彼の力で、紙切れを宙に浮かばせた後発火消滅させた。エメラルドグリーンの瞳が恐ろしく光るのが見えた。

秀鈴は先ほどとは違う驚異を感じて震えあがる。これが青龍の力の一部なのだと思うのだった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最弱弓術士、全距離支配で最強へ

Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」 剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。 若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。 リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。 風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。 弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。 そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。 「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」 孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。 しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。 最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

処理中です...