離婚が決まった日に惚れ薬を飲んでしまった旦那様

しあ

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21、ヒューバート様と。





「な、な、な!何をなさっているの!」
「何度言葉で説明しても理解して下さらないようでしたので、実際に見ていただければ早いかと思いまして」


私に負けず劣らず顔を真っ赤にして憤慨した様子の王女様に対して、ヒューバート様は見た事もない爽やかな笑顔で言ってのける。
その言葉に王女様がさらに激高する。


「いくら私が寛大だからって、それはやり過ぎよ!貴方は私の夫になる運命なのよ!それなのに、私の前でその女にキスするなんて正気じゃないわ!」
「正気では無いのは王女様の方かと。私が愛して居るのはここにいるロザベリーナただ1人です。そして、彼女のお腹には私の子がいるというのに、貴女と再婚なんて出来るはずがありません」
「こ、子供…?そんな嘘が通じるわけが無いでしょ!」
「嘘ではありません」


喚く王女様とは対照的に、旦那様は冷静に対応する。


「今はまだお腹が目立っていませんが、そのうち誰が見てもお腹に子供がいることがわかると思いますよ」
「でも、それは本当にヒューバート様の子供という証拠はあるの?離婚しているのなら、どこかで別の人と子供を…」
「俺のロズを侮辱する気ですか?」


王女様の言葉を遮り、ヒューバート様は怒りを隠そうともせず、低い声を出しながら王女様を睨みつける。


「顔のいい男なら誰にでもしっぽを振る貴女と違って、ロズはそんな不義理なことをするはずがありません」
「で、でも、離婚して直ぐに子供が出来るなんておかしいですわ!」
「この子は、間違いなく俺の子です。なにも知らない部外者が勝手に憶測で話すのはやめていただけますか。非常に不愉快です」
「な、」


まさかヒューバート様がここまで言うとは思っていなかったのか、王女様はショックを受けたように固まってしまう。


「もうこの際ですからハッキリと申し上げます。俺の気持ちを考えず一方的に好意を押し付けるなんて、不愉快でしかありません。俺は一生貴女のことを愛することもありませんし、興味を持つこともありません。俺はここにいるロズに愛を注ぐことに忙しいので、今後こういった訪問や手紙を一切やめてください。時間の無駄ですから」


淡々と話すヒューバート様に、王女様は動揺で瞳を揺らす。


「む、むだ…。不愉快だなんて、酷いですわ…!あんなにも私に笑顔を向けて下さったのに、私に好意がないなんて嘘ですわ!」
「笑顔だったのは陛下から優しく接してやってくれと頼まれたからです。でなければ、媚びを売って面倒な絡みをしてくる貴女に笑顔なんて向けるはずがありません」


王女様が何とか言い返した言葉にも、ヒューバート様は顔色ひとつ変えずに言い放つ。


ここ最近は優しく接してくださるヒューバート様しか見ていなかったから、冷たくあしらう様に話す彼は久しぶりに見るわ。


「お父様に頼まれたから…?嘘ですわよね?」
「嘘を言って何になるのですか。私を疑うのでしたら、国王陛下に確認されればすぐに分かることです。確認のために、そろそろおかえり願えますか。もうすぐロズと散歩をする時間ですから」
「私の相手より、その女を優先させる気!」
「はい。もう貴女と話す事もありませんのでお帰りください」


扉の方に手を向けて王女様に帰るよう促す。
そんなヒューバート様に、王女様は肩を震わせて怒鳴り出す。


「私にこんな態度を取って許されると思っているの!?私の言葉1つでこんな家なんていつでも潰せるのよ!」
「そうですか。貴女が出て行かないというのなら、私達が出ていくことに致します。それでは、失礼致します」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」


私の肩を抱いてクルっと踵を返して歩き出すヒューバート様を王女様が引き止めるけど、ヒューバート様はそれを無視して私を連れてそのまま部屋の外へと出て行く。


「王女様がお帰りだ」


外に出て執事にそれだけを伝えると、ヒューバート様は私を連れてどこかへと歩き始める。


着いた場所はヒューバート様の執務室。
どうしてこんな所へ連れてこられたのだろうと疑問に思っていると、ソファに座るように促される。


 大人しくソファに腰かけると、ヒューバート様が引き出しから1枚の紙とペンを取り出して、それらを私の前へと置く。
置かれた紙に目を通してヒューバート様の顔を見る。


「あの、こちらは…」
「婚姻届だ」
「それは見れば分かります」


ヒューバート様との結婚式で1度書いたことがあるので見違えはずがない。
だけど、どうして今これを渡されているのかしら。


「先程王女と話した時に、君は俺を誰よりも愛していて、俺が君のことを愛していると言っていただろ」
「あ、それは…」


王女様に言った言葉をヒューバート様から言われて恥ずかしくなる。


自分勝手なことばかり言うあの方に怒っていたとはいえ、私ったら本人の前でなんてことを言ってしまったの…!


「あの言葉が本当なら、俺達は互いに同じ気持ちだということだろ?なら、もう一度夫婦に戻っても問題ないんじゃないか?」
「それはそうなのかもしれませんが…」
「しれませんが、なんだ?まだ俺と夫婦に戻ることに懸念があるのか?俺のどこに不満があるか言ってくれ」
「いえ、不満なんてありません」


あるわけがありません。




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