当て馬役推しの私は、彼の幸せを切に願っています……が、この状況はどういうことでしょうか!?

しあ

文字の大きさ
21 / 32

21

しおりを挟む



とりあえず、適当に誤魔化しておこう。


「でん、たく?私、そんなこと言いました?」
「うん、後、ヒョウケイサンソフト?も」


うわぁ、全く誤魔化せないやつだこれ。
初めて聞いた単語なのにちゃんと聞き取れて復唱出来るなんて流石天才キャラ。流石私の推し!ヘビロテ言えなかったけど!
だけど今は聞き流してほしかった…。


「で、それってなんなの?この書類見て言ってたみたいだけど、これとなにか関係があるの?」


書類見てたのまでバレていたのか…!
流石、ヒロインが落ち込んでいることを一目見て気付ける当て馬!洞察力がすごい!
洞察力がすごいって事は、下手に誤魔化してもバレる可能性が高いってことですよね…。


「電卓というのは、数字と計算記号を打ち込めば自動で計算してくれ道具のことです」


どうせ誤魔化しても追求されれば直ぐにゲロっちゃうだろうから潔く話した方が楽。人間あきらめが肝心。


「そんな道具があるんだ。ふーん」


私の頭に顎を置いて、なにかを考えるように書類を手放して私を両手で抱きしめてくる。


いやいや、待って!
考えるにしてもこの体制はおかしい!
書類のことが気になってこの体制のことを忘れていた私もおかしいけど!なにゆえ私を膝に乗せて抱き締めるのですか!?


「ねぇ、その見た目とかここに書ける?」
「た、多分…」


もう心臓が口から出そう!
電卓の絵を描けって、描いたら解放してくれるのかな。
ならすぐにでも描きますとも!
よく売ってる一般的な電卓を…。


「なるほどね。この数字達を打って横にある計算記号を打ち込むのか…。なら、例えばこの書類に書かれてる数字を計算するなら、こんな感じで打つの?」


エリオット様が電卓の絵の電卓に、書類に書かれた数字と計算記号を打つ仕草をする。
初めて電卓というものを知っただろうに、使い方が完璧だ。
流石天才!


だけど、数字を打つために少し前のめりになるのは分かるけど、そのせいで背中の密着度が上がった気がするんですが!
え?なに!?すごいい匂い!推しの匂いに包まれるなんて、魔術大会以来なのだけど!まさかこんな幸福をまた味わえるとは!もうこのまま眠りにつきたい…。


じゃなくて!
どうしてまだ私の事を抱き抱えているんですか。
電卓の絵を書いたんだから離してよ…もう心臓が持たないよ…。


「これであってる?
「は、はい!流石エリオット様、飲み込みが早いですね」
「エマの説明がわかり易かっただけ。で、これってどこで買えるんだ?これがあれば計算が早く終わりそうだから欲しいんだけど」
「えっと…」


多分、この世界には無いです…。
むしろ、そろばんさえも見た事が無いこの世界で見つけるのは恐らく不可能。
だけど、電卓について説明しちゃったし、この世にないなんてどうやって伝えればいいんだ。


うーん…なんて言えばいいんだろう…。
とりあえず、数字を押していたはずの指を私の髪に絡めたりするはやめて下さい。電卓のことについて集中出来ませんから!


「え、えっと………これについては……ゆ、夢で見ただけなので、どこに売っているかまでは分からないんです……」
「夢?」
「はい、夢です」


夢なんて苦しい言い訳だって分かってる。
だけど、どんな場所にでも買いに行けそうな人に売っている場所を偽れるわけもない。それに、髪をいじるエリオット様の指が頬を掠めたりするから、全然考えに集中出来ないんです!


「夢…って事は、デンタクはエマが考えたものって事?」
「え、え~っと…そういう事に、なるん、ですかね?」
「なるだろ。だけど、よくこんな便利なもの思い付いたね」


いや、思いついてないです、思い出しただけです。
なんて言えるわけもないので、曖昧に笑っていよう。


「あはは、でも、思い付いても作れないので意味ないですけどね」
「…………多分だけど、作れると思う」


マジですか!どんだけチートキャラ何ですか。
どうすれば作れるかを考えているのかな?また私の頭に顎を置いて両腕で私を抱き抱え始めちゃいましたよ…。


なんだろう…私の事を大きいぬいぐるみか何かだと思っているのかな。


机に向かっている時に大きいぬいぐるみを膝に置いて顎を乗せたりするのって楽な体制なのは分かる。それに、考え事をする時に何かを抱きしめたりするのって落ち着く。


つまり、私はエリオット様にとっては楽な体制をするためのぬいぐるみ的存在…?
それなのに私はエリオット様の膝の上でドキドキしちゃったりして…なんだか恥ずかしいな。


エリオット様からすれば私はぬいぐるみのような物。
それなら、余計なことは考えずにぬいぐるみの様になにも気にせずこの体制でいること努めよう。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮
恋愛
出会いは、ブライトン公爵邸で行われたガーデンパーティ。それまで婚約者候補の顔合わせのパーティに、一度も顔を出さなかったエレアーナが出席したのが始まりで。 彼女のあまりの美しさに、王太子レオンハルトと宰相の一人息子ケインバッハが声をかけるも、恋愛に興味がないエレアーナの対応はとてもあっさりしていて。 優しくて清廉潔白でちょっと意地悪なところもあるレオンハルトと、真面目で正義感に溢れるロマンチストのケインバッハは、彼女の心を射止めるべく、正々堂々と頑張っていくのだが・・・。 王太子妃の座を狙う政敵が、エレアーナを狙って罠を仕掛ける。 忍びよる魔の手から、エレアーナを無事、守ることは出来るのか? 彼女の心を射止めるのは、レオンハルトか、それともケインバッハか? お話は、のんびりゆったりペースで進みます。

【完結】触れた人の心の声が聞こえてしまう私は、王子様の恋人のフリをする事になったのですが甘々過ぎて困っています!

Rohdea
恋愛
──私は、何故か触れた人の心の声が聞こえる。 見た目だけは可愛い姉と比べられて来た伯爵家の次女、セシリナは、 幼い頃に自分が素手で触れた人の心の声が聞こえる事に気付く。 心の声を聞きたくなくて、常に手袋を装着し、最小限の人としか付き合ってこなかったセシリナは、 いつしか“薄気味悪い令嬢”と世間では呼ばれるようになっていた。 そんなある日、セシリナは渋々参加していたお茶会で、 この国の王子様……悪い噂が絶えない第二王子エリオスと偶然出会い、 つい彼の心の声を聞いてしまう。 偶然聞いてしまったエリオスの噂とは違う心の声に戸惑いつつも、 その場はどうにかやり過ごしたはずだったのに…… 「うん。だからね、君に僕の恋人のフリをして欲しいんだよ」 なぜか後日、セシリナを訪ねて来たエリオスは、そんなとんでもないお願い事をして来た! 何やら色々と目的があるらしい王子様とそうして始まった仮の恋人関係だったけれど、 あれ? 何かがおかしい……

公爵令嬢は嫁き遅れていらっしゃる

夏菜しの
恋愛
 十七歳の時、生涯初めての恋をした。  燃え上がるような想いに胸を焦がされ、彼だけを見つめて、彼だけを追った。  しかし意中の相手は、別の女を選びわたしに振り向く事は無かった。  あれから六回目の夜会シーズンが始まろうとしている。  気になる男性も居ないまま、気づけば、崖っぷち。  コンコン。  今日もお父様がお見合い写真を手にやってくる。  さてと、どうしようかしら? ※姉妹作品の『攻略対象ですがルートに入ってきませんでした』の別の話になります。

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

愛に死に、愛に生きる

玉響なつめ
恋愛
とある王国で、国王の側室が一人、下賜された。 その側室は嫁ぐ前から国王に恋い焦がれ、苛烈なまでの一途な愛を捧げていた。 下賜された男は、そんな彼女を国王の傍らで見てきた。 そんな夫婦の物語。 ※夫視点・妻視点となりますが温度差が激しいです。 ※小説家になろうとカクヨムにも掲載しています。

【完結】微笑みを絶やさない王太子殿下の意外な心の声

miniko
恋愛
王太子の婚約者であるアンジェリクは、ある日、彼の乳兄弟から怪しげな魔道具のペンダントを渡される。 若干の疑念を持ちつつも「婚約者との絆が深まる道具だ」と言われて興味が湧いてしまう。 それを持ったまま夜会に出席すると、いつも穏やかに微笑む王太子の意外な心の声が、頭の中に直接聞こえてきて・・・。 ※本作は『氷の仮面を付けた婚約者と王太子の話』の続編となります。 本作のみでもお楽しみ頂ける仕様となっておりますが、どちらも短いお話ですので、本編の方もお読み頂けると嬉しいです。 ※4話でサクッと完結します。

リアンの白い雪

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
その日の朝、リアンは婚約者のフィンリーと言い合いをした。 いつもの日常の、些細な出来事。 仲直りしていつもの二人に戻れるはずだった。 だがその後、二人の関係は一変してしまう。 辺境の地の砦に立ち魔物の棲む森を見張り、魔物から人を守る兵士リアン。 記憶を失くし一人でいたところをリアンに助けられたフィンリー。 二人の未来は? ※全15話 ※本作は私の頭のストレッチ第二弾のため感想欄は開けておりません。 (全話投稿完了後、開ける予定です) ※1/29 完結しました。 感想欄を開けさせていただきます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、 いただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきます。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

何年も相手にしてくれなかったのに…今更迫られても困ります

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のアンジュは、子供の頃から大好きだった幼馴染のデイビッドに5度目の婚約を申し込むものの、断られてしまう。さすがに5度目という事もあり、父親からも諦める様言われてしまった。 自分でも分かっている、もう潮時なのだと。そんな中父親から、留学の話を持ち掛けられた。環境を変えれば、気持ちも落ち着くのではないかと。 彼のいない場所に行けば、彼を忘れられるかもしれない。でも、王都から出た事のない自分が、誰も知らない異国でうまくやっていけるのか…そんな不安から、返事をする事が出来なかった。 そんな中、侯爵令嬢のラミネスから、自分とデイビッドは愛し合っている。彼が騎士団長になる事が決まった暁には、自分と婚約をする事が決まっていると聞かされたのだ。 大きなショックを受けたアンジュは、ついに留学をする事を決意。専属メイドのカリアを連れ、1人留学の先のミラージュ王国に向かったのだが…

処理中です...