賭けで付き合った2人の結末は…

しあ

文字の大きさ
1 / 22

1

しおりを挟む



私には彼氏がいる。
1つ年上の先輩で、少し、ではなく結構チャラくて軽い人間。
おそらく彼から告白されなければ一生話そうとも思わなかったし、関わろうともしなかった部類の人。多分それは彼も同じだと思う。


告白された場所はどこかの木の下だった。
次の授業の教室へ移動していた時に急に呼び止められた、かと思うと、その人が整った顔で優しく笑いながら私に告白してきたのだ。


「あのさ、アンタに告白して3ヶ月付き合えたら俺の勝ちって賭けを今しててさ、負けたくないから付き合ってくんない?」


正直、頭がおかしいとしか思わなかった。
賭けに負けたくないからって、面識もない後輩に突然付き合ってくれなんてどうかしてる。
見た目も喋り方もかなりチャラそうだし、きっとこんな事を何回もしてきたんだろうな。なんて思いながら無視して歩き出そうとした。


だけど、その私の行く先を阻むように彼が長い腕を伸ばしてきて、笑顔を崩さずに続けた。


「付き合ってくれたら、毎食のランチ奢るし、勉強も教えてあげる。俺こう見えて結構成績上位だし、悪い条件じゃないと思うけど、どう?」


なんて、断られるわけないと信じて疑わない笑顔で言ってきた。
そんな事までして賭けに勝ちたいのかと呆れたけど、よく考えなくても彼が提示した条件は悪くない。
この学校は全寮制で朝晩は寮が出してくれるけど、昼は各々で好きに摂ると言うスタイルなので、ランチを毎食奢ってもらえるのはとてもありがたい。


ランチ代が浮けば我慢していた本や服も買える。
それなら、3ヶ月くらいお付き合いをしたって別にいいかもしれない。
目の前にいる先輩はただ賭けに勝ちたいというだけで付き合うのだから、一般的な彼氏彼女のようなやり取りはないだろうし迷うことはないのでは?と、そこまで考えて私は見ず知らずの先輩の告白にYESと応えた。


そうして始まったお付き合いだったが、それは私が想像していたものよりもずっと楽なものだった。
先輩が提示していた通り、ランチは必ず奢ってもらえるし、あまり信用していなかった勉強面をしっかり教えてもらっている。おかげで定期テストの平均点が20点ほど上がって先生も私も驚いた。


彼氏彼女と言うよりは、良い先輩後輩のような位置付けの様な気もするけど、変に彼氏ぶられるよりはその方が全然いい。


付き合い始めはチャラそうで少し怖いとは思っていたけど、全然そんなことは無く、むしろ結構面倒見が良かったりした。
ランチをどちらにするか悩んでいたら両方頼んで分けてくれたり、魔法の実技で失敗して怪我した時は治癒魔法をかけてくれたり、勉強で分からないところはとことん付き合ってくれて、テストでいい点を取れば頭を撫でて嬉しそうに笑いながら褒めてくれる。


そんな先輩と一緒にいるのは本当に居心地が良かった。


だけど、先輩とのお付き合いで不満というか、懸念点があるとするなら、先輩との時間が心地よ過ぎて、自分が本当に先輩から愛されている錯覚を起こしそうになること。


私たちの関係は、ただの賭けで始まった色恋を絡まないものでしかない。それなのに、先輩と一緒にいればいるほど、抱いてはいけない気持ちが顔を出しそうになる。


先輩は私の事なんて何とも思っていない。
だからこんな気持ちを抱いてはいけない。
気付いてはいけない。


だってその証拠に、今日は街で遊ぶ約束をしていたのに、待ち合わせ時間を少し過ぎてからスマホが振動する。
画面を見れば、先輩からの連絡を知らせる通知が届いている。


連絡の内容を確認すれば、「寝坊した~すぐ用意して行く」とだけ書かれていた。


ほらやっぱり。先輩は私の事なんて何とも思っていない。
先輩と約束は、大体ドタキャンされる。多分、5回に3回…いや、4回はドタキャンされている。
ドタキャンの理由は眠いから、とか、行く気が無くなったから、とかそんな感じ。


最初の頃は、ドタキャンした後は罪滅ぼしのつもりなのか、ランチにデザートを付けてくれたりしたけど、今ではそんなものも無く雑にドタキャンされる。


今回遅れても来てくれようとしているのは、初めて私から先輩を誘ったからなのかな。
どちらにしても、先輩のドタキャンや遅刻のおかげで私は先輩から向けられる優しさを勘違いしなくて済む。だから、そこに関して文句を言うつもりは全然ない。


これが本当に好き同士で付き合っていたなら、怒っていたのかな…。


なんて、考えてもどうしようもないことを考えながら先輩を待つ。



しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。 優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。 優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。 そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。 絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。 そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。

平凡な伯爵令嬢は平凡な結婚がしたいだけ……それすら贅沢なのですか!?

Hibah
恋愛
姉のソフィアは幼い頃から優秀で、両親から溺愛されていた。 一方で私エミリーは健康が取り柄なくらいで、伯爵令嬢なのに贅沢知らず……。 優秀な姉みたいになりたいと思ったこともあったけど、ならなくて正解だった。 姉の本性を知っているのは私だけ……。ある日、姉は王子様に婚約破棄された。 平凡な私は平凡な結婚をしてつつましく暮らしますよ……それすら贅沢なのですか!?

離婚を望む悪女は、冷酷夫の執愛から逃げられない

柴田はつみ
恋愛
目が覚めた瞬間、そこは自分が読み終えたばかりの恋愛小説の世界だった——しかも転生したのは、後に夫カルロスに殺される悪女・アイリス。 バッドエンドを避けるため、アイリスは結婚早々に離婚を申し出る。だが、冷たく突き放すカルロスの真意は読めず、街では彼と寄り添う美貌の令嬢カミラの姿が頻繁に目撃され、噂は瞬く間に広まる。 カミラは男心を弄ぶ意地悪な女。わざと二人の関係を深い仲であるかのように吹聴し、アイリスの心をかき乱す。 そんな中、幼馴染クリスが現れ、アイリスを庇い続ける。だがその優しさは、カルロスの嫉妬と誤解を一層深めていき……。 愛しているのに素直になれない夫と、彼を信じられない妻。三角関係が燃え上がる中、アイリスは自分の運命を書き換えるため、最後の選択を迫られる。

拾った指輪で公爵様の妻になりました

奏多
恋愛
結婚の宣誓を行う直前、落ちていた指輪を拾ったエミリア。 とっさに取り替えたのは、家族ごと自分をも売り飛ばそうと計画している高利貸しとの結婚を回避できるからだ。 この指輪の本当の持ち主との結婚相手は怒るのではと思ったが、最悪殺されてもいいと思ったのに、予想外に受け入れてくれたけれど……? 「この試験を通過できれば、君との結婚を継続する。そうでなければ、死んだものとして他国へ行ってもらおうか」 公爵閣下の19回目の結婚相手になったエミリアのお話です。

離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています

腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。 「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」 そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった! 今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。 冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。 彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――

氷の王妃は跪かない ―褥(しとね)を拒んだ私への、それは復讐ですか?―

柴田はつみ
恋愛
亡国との同盟の証として、大国ターナルの若き王――ギルベルトに嫁いだエルフレイデ。 しかし、結婚初夜に彼女を待っていたのは、氷の刃のように冷たい拒絶だった。 「お前を抱くことはない。この国に、お前の居場所はないと思え」 屈辱に震えながらも、エルフレイデは亡き母の教え―― 「己の誇り(たましい)を決して売ってはならない」――を胸に刻み、静かに、しかし凛として言い返す。 「承知いたしました。ならば私も誓いましょう。生涯、あなたと褥を共にすることはございません」 愛なき結婚、冷遇される王妃。 それでも彼女は、逃げも嘆きもせず、王妃としての務めを完璧に果たすことで、己の価値を証明しようとする。 ――孤独な戦いが、今、始まろうとしていた。

夜這いから始まる初恋

恋愛
薬を盛られて結婚を迫られたロイドは、その場から逃げた。 お酒に酔ったマチルダがそこにやってきて、お互いに素面ではない状態で寝てしまった翌日、恋に落ちたことに気付いたのだった。 だけど、ロイドは女性の顔を覚えていないし、名前も知らない。 マチルダはロイドの華やかな浮名を知っているせいで、とても本気で相手にはされないと思う。 必死で探すロイドと、どう出たらいいか悩むマチルダ。 お互いの親友が、仲を取り持とうと頑張りますが... 粋な男達と、可愛い女達の、なぜかスマートに運ばない恋の物語です。 毒気の無い気持ちよく読める短編連載です。

処理中です...