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29、気を付けてね
しおりを挟む「ルビア様、父上も一緒に乗馬したいって言ったから、連れてきちゃったけど、いい?」
そう言ったリアム様の横には、乗馬の先生ではなく皇帝が立っていた。練習場に着いてから皇帝を連れてきて良いかと聞かれれば、良いとしか言えない…。
「すいません…リアムから先程話を聞いて、私も乗馬をしたかったので、来てしまいました…」
「来られたことには怒ってはいませんが、報連相はしっかりしてくださいと先日言いましたよね?」
「すいません…」
「ごめんなさい、ルビア様。僕も良いよって言っちゃったから…」
呆れながら言えば、皇帝もリアム様も素直に頭を下げる。
まぁ、今回はアイリに害がある訳でも無いし、皇帝も前と違って素直に謝ってるから良いとするか。でも、しっかりと釘は刺しておかないと。
「皇帝陛下もリアム様も、何か予定と違うことをするのであれば、事前に報告して下さい。事前に報告して頂ければ、私だって怒ったりしませんから」
「はい…ごめんなさい」
「すいませんでした…」
なんだか、子供が2人いるように見えてくる。
「もしこれが私ではなく、別の人や他国の人だった場合、取り返しのつかない事になる場合もあるんですよ?それと、逆に、あなた達が私の立場だったらどう思いますか?」
「…すごくびっくりすると思う」
「相手によっては不快な気持ちになります」
「ですよね?なので、誰が相手であろうと、予定と異なる場合は相手にしっかりと伝えてから了承を取ってください。いいですね?」
「はい」
「わかりました」
しゅんとしながら素直に頷く2人に満足する。会って早々お説教をしてしまったけど、今日は楽しむ為に来たので、空気を変えるために明るい声を出す。
「さぁ、お説教はこれでおしまいにして、乗馬する姿を見せてください。この日を楽しみにしてたんだから、頑張って乗ってきてね!」
「うん!いっぱい見ててね!」
「ほら、皇帝陛下も、せっかく来られたのならリアム様と行ってきてください」
「はい、わかりました」
しゅんとした姿から一転、リアム様は意気揚々と馬の方へと歩いていく。皇帝も、私の言葉にホッとしたようにリアム様の後を付いて行った。
「ルビア様!見ててね、今から乗るから!」
「しっかり見とくよ!だけど、気を付けてね」
「うん!」
元気に頷いて、リアム様がポニーにまだがる。ポニーと言っても、5歳児にはそれなりに大きくて不安になる。
リアム様が跨るのを、皇帝がいつでもフォローに入れるように見守っている。その姿は、少し父親の様に見えて、ほんの少しだけ見直す。
散歩してる時も、アイリに離乳食を食べさせている時も見ているだけで関わろうとしていなかったのに、ちゃんと子供を守ろうとしているんだ。
そういえば、私が最初に会った時も、方法はおかしかったけど、アイリを自分なりに守ろうとしていたし、案外子供想いな所もあるのかもしれない。本当は子供を大切にしたいけど、ただ単に子供との接し方が分からなくて見守るしかないのかな。
人との接し方もだけど、大分不器用な人なのかもしれない。人との接し方が分からないほど、あまり周りと関わりを持ってこなかったのかな。
そういえば皇帝って、幼い頃にお母さんを亡くして、私と婚約した年にお父さんを無くしたんだっけ…。死因は確か…えっと…思い出せそうで思い出せない…。
「ルビア様ー!アイリー!乗れたよー!」
皇帝の事で少し考え込んでしまったけど、リアム様の声に思考を止める。今日はリアム様の乗馬姿を見に来たんだから、余計なことを考えるのは止めよう。
「本当だ!すごくかっこいいよ!ね、アイリ。見て、お兄ちゃんがお馬さんに乗ってるよ」
「あー!あー!」
アイリを前向きに抱っこして見せてあげる。馬を見たのが初めてだからか、少し興奮気味だ。可愛い。
ポニーに乗って笑顔で手を振るリアム様だったが、走らせる時は真剣そのものだ。乗っている姿はかなりさまになっていて格好良い。
ポニーに乗るリアム様の後ろを、馬に乗った皇帝が見守る様に追いかけ、練習場を何周かして、最後に皇帝がリアム様を自分の前に乗せて走っていた。
あまり2人で話している所をそこまで見たことがないし、話し方もどこか他人行儀だけど、ああ見るとちゃんと親子に見える。リアム様も、心做しか嬉しそうだ。
「ルビア様ー!アイリー!すごく高いよー!」
「ホントだねー!でも気を付けてねー!」
「しっかり掴まっていろよ、リアム」
「はい!」
やっぱりリアム様にしてみれば、皇帝は父親で、その父親に遊んでもらえると嬉しいものなのかもしれない。良かったね、リアム様。
「お兄ちゃん達楽しそうだねぇ…。あれ?アイリ寝ちゃったみたいだ。マーガレット、悪いけど、少しアイリを抱いててもらえる?アイリの寝る場所を用意するから」
「かしこまりました。本当によく寝てらっしゃいますね」
天使の寝顔だ。そんなアイリを、持ってきたベビーバスケットにタオルを敷いて寝かせる。
「ふふふ、お馬さんを見てちょっと疲れちゃったのかなぁ」
「そのようですね」
マーガレットと笑いあっていると、リアム様達が戻ってきたようで、少しと離れた所から声が聞こえる。
「ルビア様ー!アイリー!」
「リアム様も皇帝陛下もおかえりなさ、…あぁぁあ!」
「ヒヒヒーン!」
「うわぁ!」
「っ、」
私が言い終わる前に、突然馬が暴れだした。前脚を蹴りあげて、大きく後ろに仰け反るような体勢になった。そのせいで、リアム様と皇帝が後ろに投げ出されてしまった。
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